2016年シーズン、HondaファクトリーマシンNSF250RWを駆る11名の選手たちの中で、チャンピオン争いの一角を占める逸材と期待されているライダーのひとりが、ホルヘ・ナバロです。グランプリ初参戦は2012年のアラゴンGP。ワイルドカード参戦でしたが、このときは残念ながらリタイア。その後も何度かワイルドカード参戦を続け、2014年後半から本格参戦を開始します。2015年には現在のチームEstrella Galicia 0,0に移籍し、シーズン半ば以降にめきめきと頭角を現して注目を集めることになりました。
1996年2月3日生まれで20歳の誕生日を迎えたばかりのこの若者は、2015年シーズンで転機になったのは第14戦アラゴンGPだったと振り返ります。
「1つ前のレース、ミザノでケガをした状態で迎えたレースウイークでした。ミザノではFP1で転倒し、頭を強打し首も痛めてしまい、その後のセッションを走れませんでした。レース後も自宅で安静にしていなければならなくて、トレーニングもなにもしていない状態でアラゴンのレースウイークを迎えたので、どこまで走れるか自分でもよくわからなかったけど、レースでは2位表彰台を獲得できました。母国スペインのホームGPで、しかも初表彰台だから、本当に格別な気分でした」
その後はコンスタントに表彰台を獲得し、年間ランキングを7位で終えました。このシーズンから学んだことは、戦いの最中でも常に冷静さを保つことだと言います。


「僕は、ときどき熱くなりすぎてしまいます。でもMoto3はいつも激戦になるから、常に自分をコントロールして、レース中の位置取りを冷静に考えていなければならない。勝てそうな状況のときは特に。最終ラップでトップに立つために、レース中盤ではタイヤの温存などを考えて少し引いた位置にいたほうがいいときもあります。それが昨年学んだ最も重要なことのひとつだと思います」
この沈着冷静な戦い方は、同じスペイン人のテニスプレイヤーであるラファエル・ナダルから学ぶところも多かったと20歳のナバロは話します。
「彼は本当に強いよ。子どもの頃から、いろんなスポーツを見るのもやるのも好きだったので、テレビでよく彼の試合を見ていました。状況がよくないときでも、ナダルはいつだってうまく対応して流れを引き寄せる。実は僕も、3年前くらい前までテニスをしていました。あまり上手くなかったけど」
将来的に自分が目指すライダー像は?との問いかけには、少し考えてからゆっくりと口を開きました。
「どうでしょう、バレンティーノ(ロッシ)を好きな人は多いですね。バイクレースの歴史では、彼は間違いなく最高の選手です。近年は、(ホルヘ)ロレンソや(マルク)マルケスも強いですね。僕は、彼ら3人の長所を合わせ持ったライダーになりたいです。バレンティーノの最高の戦績、ロレンソの正確さ、そしてマルケスの常に全力で臨む不屈の精神。この3人の強さをすべて取り込めれば、きっと完ぺきなライダーになれると思います」


