Honda Riders Close Up 〜ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー〜

Moto3 ヤコブ・コーンフェール Drive M7 SIC Racing Team

Moto3 ヤコブ・コーンフェール Drive M7 SIC Racing Team
Profile
生年月日
1993/04/08
出身地
チェコ
身長・体重
169cm・62kg
チーム(マシン)
Drive M7 SIC Racing Team(NSF250RW)
2015年の成績
Moto3 総合12位
Vol.2

2016年シーズンも大詰めとなった第17戦マレーシアGPは、会場のセパン・サーキットをチームのメインスポンサーとするDrive M7 SIC Racing Teamにとって、正真正銘のホームグランプリです。

 

この重要なレースで、同チームのヤコブ・コーンフェールは2位表彰台を獲得しました。2位となるのは、2015年の第12戦イギリスGP以来、今回が2回目。ホームコースでの表彰式を終えたコーンフェールは、喜びを噛みしめながら、上気した表情で気持ちを語りました。

「最高の結果になりました。本当に格別な気分です。まだ十分に実感がなく、まるで夢のようです。タイヤのグリップ感がなく、とても厳しいレースでした。路面状況が刻々と変化するので、マシンをしっかりと操りながら、ウエットパッチを踏まないように注意し、路面の状態を把握することに集中しました。チームとセパン・サーキット、スポンサーや家族など、僕を支えてくれたすべての方々に感謝しています。彼らの力がなければ、このリザルトは獲得できなかったでしょう。この2位表彰台を、彼ら全員にささげたいと思います。僕自身、とても大きな意義のあるリザルトになりました。シーズン初の表彰台は、いつだって特別な気分になります。しかも今回はチームのホームグランプリだから、本当に感無量です。20ポイントを獲得できて、すごくうれしいです」

 

今回のマレーシアGPは、新しく施された舗装に、熱帯地方につきもののにわか雨が加わって、乾きにくい路面状態という不確定要素を生んでいました。Moto3クラスの選手たちは、路面状況や気象条件に翻ろうされながらも、精一杯の対応でセッションを進めていました。コーンフェールたちが属するDRIVE M7 SIC Racing Teamにとって、ホームコースとはいえ、気象の変化や温度条件は誰に対してもイコールコンディションでした。

 

今回のレースウイークに先立ち、コーンフェールはマレーシアGPへの抱負を語ってくれていました。「今回のセパンのレースでは、最高のがんばりを見せるつもりです。チームのホームグランプリだから、いいリザルトを残すことは本当に重要なんです。日本とオーストラリアでは苦戦を強いられてしまいましたが、3連戦目となる今回は、いいレースをする自信があります。セパンでは何度もテストをしているので、コースを熟知しています。レイアウトが大好きだし、僕のライディングスタイルにも合っています。NSF250RWは、きっとこのコースで全力を発揮してくれるでしょう。チームのホームグランプリなので忙しい週末になると思いますが、自分のなすべきことに集中して、最高のウイークにするつもりです」

レースウイーク初日、午前の走行はドライコンディションで走り出すことができましたが、午後はセッション開始と同時に雨となりました。この走行では、トップから3.335秒差の24番手でしたが、総合タイムでは午前のラップタイムで順位が並び、コーンフェールは11番手で初日を終えました。走行を終えたコーンフェールの言葉からは、充実した内容のセッションであったことがうかがえました。「レースウイーク初日は、コンディションの面で厳しい一日になりました。午前のFP1ではスリックタイヤで走り出したのですが、コース中のあちこちにウエットパッチが残っていて、通常よりも10秒から15秒ほど遅いラップタイムでした。路面が少しずつ乾いていく中で、僕はずっと5番手につけることができました。セッション終盤にラップタイムを更新しなかったのは、ミディアムコンパウンドのタイヤを温存しておきたかったからです。同じタイヤでずっと周回し続けて、いいタイムを刻めたと思います。雨のFP2では、このコンディションでのリズムをつかむため、走りに集中しました。マシンに問題があってピットボックスに戻ってきたとき、セッション中の短い残り時間ではメカニックたちも問題を解決しきれなかったのですが、そのあと1周だけタイムアタックに出て、その前の周回よりも1秒更新することができたのでよかったと思います。さらにもう1周アタックをできていれば、上位13番手くらいには食い込めていたと思うので、それが少し残念です。それでも自分たちの方向性は見いだせているし、ウエットコンディションでも高い水準で走れていました」。 予選は、天候が主役を演じる難しいセッションでした。40分のセッション時間中に雨脚が強くなり、途中で赤旗が提示されて中断することになりました。セッションはほどなく再開しましたが、この難しい予選でコーンフェールのグリッドは5列目15番手。決して理想的とは言えない位置取りでした。 「今日は天候に悩まされました。予選ではスリックタイヤで出ていったのですが、1コーナー手前で雨が激しく降り始めました。なんとか1周を走りきりましたが、濡れている場所もあれば乾いている場所もあって、難しい走行でした。すぐにピットに戻ってウエットタイヤに交換したのですが、セットアップがうまく噛み合わずに下位に沈んでしまいました。そのあと、チームがウエット用のセットアップに仕上げてくれて、(赤旗中断後に)20分弱のセッションを走りきることができました。コースイン直後の2周ほどは路面に水が残っていて走りにくかったのですが、少しずつうまく走れるようになってきました。15番グリッドになってしまいましたが、ウエット用のセットアップは上々なので、明日に向けた準備は整っています。今朝のドライコンディションでは2番手タイムで走れているので、明日がどんなコンディションになっても、準備は十分にできていますよ」。その言葉通り、不利なポジションから一気に追い上げて激しいバトルを制し、表彰台を獲得したのは、決勝までのセッションでしっかりとセットアップを積み上げ、自信を深めてきた成果です。予選を終えた際の「明日がどんなコンディションになっても、準備は十分にできていますよ」という言葉通り、コーンフェールは見事に有言実行を果たしたのです。

 

最高のかたちで終えたチームのホームグランプリの次は、いよいよシーズン最終戦となるバレンシアGPです。このサーキットで、昨年コーンフェールは3位表彰台を獲得しています。DRIVE M7 SIC Racing Teamとコーンフェールは来シーズンからそれぞれ別の道を歩むことが発表されていることもあり、コーンフェールの胸中は、今まで以上に特別なものがあります。「バレンシアのレースがとても楽しみです。コース特性は難しく、複合コーナーもあって、しかもストップ&ゴータイプなので、どちらかというと僕の好みのタイプではないのですが、去年のレースで表彰台を獲得してから、ここで走るのがとても楽しくなりました。セパンではうまくマシンを走らせてあげることもできたので、最終戦で自分の力をすべて出しきるつもりです。金曜の走り出しから、全力でいきますよ。バレンシアでの目標は、シンプルです。できるだけたくさんのポイントをかせぐこと。年間ランキングでさらに上位を目指せる位置にいるので、この最終戦で一気に巻き返してみせます。このチームと一緒に戦う最後のレースになるので、最高のかたちでシーズンを締めくくってみせます!」