Honda Riders Close Up 〜ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー〜

Moto3 尾野弘樹 Honda Team Asia

Moto3 尾野弘樹 Honda Team Asia
Profile
生年月日
1992/07/15
出身地
日本(奈良県)
身長・体重
163cm・52kg
チーム(マシン)
Honda Team Asia(NSF250RW)
2015年の成績
Moto3 総合21位

2016年シーズン、Honda Team Asiaで戦う尾野弘樹選手は、第13戦サンマリノGPを9位で終え、その段階で年間ランキングは23位。ここまでのレースを振り返り、予想していたよりも苦戦を強いられていると話します。

 

「特にシーズン前半は転倒が半分、完走したレースが半分。本来なら、もっとたくさんシングルフィニッシュし、表彰台も獲得するという内容をシーズン前に想像してましたが、思っていた結果を得られず苦しいシーズン前半になりました」

 

この苦戦は、開幕直後の数戦でマシンをいい状態に仕上げられなかったことが遠因になったと尾野選手は考えています。

 

「特に開幕戦から3戦目辺りまでの序盤はマシンが仕上がっていなくて、いい勝負をできる状態にまとめきることができず、それが結果を出せない最大の原因になったと思います。今はすでに勝負をできるマシンに仕上がっているので、自分のライディングやメンタルを仕上げ、毎戦きっちりと出しきって戦うことが目標です」

 

このシーズン序盤の3戦は、Hondaのマシンを操る選手が活躍していただけに、尾野選手は内心、自分が彼らから取り残されていくのではないかと思ったと、正直に話します。

 

「今年は結果を出さなければならないシーズンだということは最初から分かっていたので、自分の想定とずれていくことに対して、正直なところ焦りはありました。今はだいぶ状況が落ち着いて、マシンも自分も戦えるレベルに仕上がっていると思います。だから、落ち着いてしっかりと結果を出していくことにプライオリティーを置き、戦っています」

2016年仕様のHonda NSF250RWについて、尾野選手はほかのHondaライダーと同様に旋回性の高さが持ち味だと話します。

 

「マシンは旋回性がいいので、コーナリングスピードがほかのライダーより速くて、立ち上がりに合わせていけるのが最近の強みです。しかし、自分の性格は抑えが効かないというか(笑)。どうしても負けたくないという気持ちが強いので、それがよくも悪くもレース内容に表れてしまうというか…」

 

尾野選手は、普段の穏やかな物腰からも分かる通り、人当たりのいい温厚な性格の持ち主ですが、レースになると非常に強い闘争心を発揮します。普段の立ち居振る舞いと、この熱さのギャップが尾野選手の特徴と言えるでしょう。

 

「それはよく言われますね。どうしてだか分からないのですが、マシンに乗ると引けない自分がいますね。それが悪い方に出て転倒してしまうことが何度もあったので、今は意識的に抑えるように努力しています。昨年と比べるとセーブできるようになっていますが、焦りが出たレースではまだその悪い癖が出てしまうことがあります。ただ、それがうまくかみ合えば自分の強みになると思うので、レース展開に応じて気持ちの調整をできるようにしていきたいですね」

 

いつも全力で戦うことを心がける尾野選手は、その闘争精神とレースに対する姿勢を構築する上で最も大きな影響を受けたのは、3年前に逝去した父だと話します。

 

「3年前に亡くなるまで、ずっと一緒にレース活動をしてきました。技術面で特になにかを教わったというわけではないのですが、むしろ精神面で多くのことを父から教えられました。よく『どのような状況やマシンであっても、勝つことだけを考えなさい。環境や周囲の物事を言い訳にせず、すべて自分で対応して乗りきりなさい』と言われてきました。今もそれを自分に言い聞かせながら、毎戦レースを戦っています。自分が今こうやってここにいることができるのは、父と一緒にやってきた時代があったからこそだと思っています」

 

シーズンは後半戦に入っています。一刻も早く本来の力を存分に発揮したいところですが、そういうときこそ落ち着いて戦わなければならないと、尾野選手は笑みを浮かべます。

 

「早く表彰台に上がりたいといつも思っています。でも、そう思っているときこそ悪い癖が出てミスをしてしまいがちなので、レースウイークには金曜日と土曜日に積み上げてきたことを飛び越えすぎず、日曜日のレースでは持っているポテンシャルを最大限に発揮することが今の僕の目標です」

 

久々のシングルフィニッシュになった第13戦のリザルトは、後半戦のジャンプアップに向けていい材料となることは間違いないでしょう。