Gresini Racing Moto3チームのルーキー、ディッジャことファビオ・ディ・ジャンアントニオが、世界選手権へのデビュー初年度ながら、目覚ましい活躍をみせています。シーズン序盤の数戦こそ、若干の苦戦を強いられましたが、素早い適応力で、めきめきと実力を伸ばしています。自分自身では「ディーゼル」(イタリア語の表現で、スロースターターの意)だと謙遜しますが、高い学習能力を発揮して、ホームグランプリの第6戦イタリアGPで初の表彰台を獲得しました。
Moto3クラスでは、毎回息詰まる熱戦が繰り広げられますが、このときのレースも例外ではなく、ディッジャがゴールラインを通過したのは優勝した選手のわずか0.038秒後でした。レースを終えた彼は「今だに信じられません」と、初めて表彰台を獲得した喜びを爆発させました。「世界選手権で走ることが、ずっと僕の夢でした。だから、ホームグランプリのムジェロで初の表彰台を獲得できるなんて、本当に格別です!」
レース終盤の攻防については、以下のように話しました。
「最終ラップでは、少しワイドにはらんでしまったのですが、なんとか持ちこたえることができました。最終コーナーでは全力で4番手のポジションをキープして、最後のストレート勝負にかけました。それがうまくいって、2位表彰台を獲得できました」
このレース以降、ディッジャは常にトップ10以内でフィニッシュしています。新人選手としては実にすばらしいリザルトと言えるでしょう。さらに、初表彰台から2戦後のシーズン第8戦、“ロードレースの大聖堂”と称されるTTサーキット・アッセンでも、再び表彰台を獲得。このときは、レースウイナーから0.039秒という僅差でチェッカーを受けました。
「レース終盤はとにかく集中して、自分のペースを維持していました。トップグループが見えてきたときは『表彰台も可能かもしれない』と思い始めました。最終ラップは攻めに攻めて2台をパスし、最後の高速コーナーでアウト側につけて最終シケインのブレーキングでインを狙いました。それがうまくいって(ロマノ)フェナティ(KTM)をパスし、3番目にチェッカーフラッグを受けました。最終的には(アンドレア)ミニョのペナルティーにより、僕は2位に繰り上がりました。厳しいレースでしたが、いい走りができたと思います」



ウエットコンディションでも、ディッジャはすばらしいパフォーマンスを発揮しています。第9戦ドイツGPの決勝は、上位を走行する選手たちが次々と転倒する難しい戦いになりましたが、そんな中でもディッジャは22番グリッドという後方のスタート位置から着々とトップグループを追い上げ、最後は5位でゴールしたのです。
「周回ごとに順位を上げ、5番手に浮上しました。その段階で、もしかしたら表彰台も可能かもしれないと思いましたが、リスクが高かったので落ち着いて走ることにしました。終盤には前を走っていたチームメートのエネア(バスティアニーニ)がプッシュし始めたのですが、僕は順位のキープに徹しました。最終ラップは(ジョン)マクフィー選手(プジョー)にパスされましたが、僕は5番手のポジションを守りきりたかったので、最終手前のブレーキングで彼をうまく差し返すことができました」
サマーブレイク後にも好調さを維持し続けるディッジャは、第11戦のチェコGPでも3位と、表彰台を獲得しました。第12戦のイギリスGPは6位。2週連続の開催となった第13戦サンマリノGPは、シーズン2度目のホームグランプリでしたが、このレースは10位で終えました。
「レース中盤からタイヤが厳しくなり、特にリアの挙動が激しくなってきました。ラスト数周は攻めるのも難しい状況だったので、10位で終えるのがやっと、という状態でした」
ムジェロ以来、常にシングルポジションで終えていたこともあり、このリザルトには明らかに不満足な様子です。しかし、2016年シーズンはこのあとにまだ続きます。ディッジャが本領を発揮するのは、いよいよこれからです。

