Honda Riders Close Up 〜ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー〜

Moto3 アーロン・カネット Estrella Galicia 0,0

Moto3 アーロン・カネット Estrella Galicia 0,0
Profile
生年月日
1999/09/30
出身地
スペイン
身長・体重
169cm・62kg
チーム(マシン)
Estrella Galicia 0,0(NSF250RW)
2015年の成績
CEV Moto3 総合3位
Vol.2

Estrella Galicia 0,0でMoto3クラスのルーキーイヤーを戦っているアーロン・カネットは、シーズン初頭からその高い資質を発揮してきました。開幕戦のカタールGPでは、ルーキーながら5番グリッドを獲得。決勝レースでも、15位でフィニッシュして1ポイントを獲得しました。その後、第5戦のフランスGPでフロントロー3番グリッドを獲得して4位フィニッシュ。第7戦カタルニアGPでは6位と、新人らしからぬ走りで好リザルトを次々と残す一方、バトルの最中に転倒を喫し、ノーポイントで終えるレースも少なくありませんでした。

 

しかし、シーズン後半に差しかかると、高い安定感を発揮。連続してシングルポジションでチェッカーを受けることも珍しくなくなりました。第12戦イギリスGPでは8位、第13戦サンマリノGPでは7位。そして、ホームグランプリの第14戦アラゴンGPでは、予選を終えて今季3度目となるフロントローを獲得しました。

 

「今日は、単独で走ってレースペースを上げることを目標にしていました」。予選後に、カネットは40分のセッションで組み立てた戦略を説明しました。「予選の最初からコースへ出て、がんばって速いラップタイムを刻めました。2回目にコースインしたとき、僕たちはすでに上位につけていました。そのため、後ろにつきたがっているライダーがいて、タイムアップは果たせませんでした。ピットに戻って最後にコースインしたときには、路面温度が上がっていて少し厳しかったのですが、さらにタイムを詰めて5番手タイムを記録できました。予選を終えて、僕の上にペナルティーを受けたが2人いたので、繰り上がって僕が3番グリッドになりました。ホームグランプリでフロントロースタートなので、明日はがんばります。アベレージタイムがいいので、いいレースをしてみせますよ」

 

決勝結果は7位。当初に狙っていた表彰台争いこそかないませんでしたが、ルーキーライダーとしてさらに多くの経験を重ねるレースになりました。「今日は序盤からトップグループにつけて力強く走れていたので、表彰台争いもできると思っていたのですが、途中から後続集団が追い上げてきて、11台による大混戦になりました。トップを走っている選手たちはストレートで逃げてしまったため、スリップストリームで捕まえるのが難しく、厳しいレースになりました。少しずつ前との差が開いていったのですが、あきらめずにがんばって追いかけ、なんとか彼らに迫れました。今日はトップグループの選手たちと一緒に走れて、たくさんのことを学べました。いいレースになったと思います」

そして、いよいよシーズン終盤戦。カネットにとっては初体験の、アジア環太平洋3連戦が始まりました。その端緒となった第15戦日本GPでは、残念ながら転倒リタイア。気持ちを切り替え、第16戦オーストラリアGPに向かいました。

 

同国南部に位置するフィリップアイランド・サーキットは、風光明媚なハイスピードコースとしてライダーたちからの人気が高い反面、変化の激しい天候と低い温度条件に悩まされるコースでもあります。今年も多くの選手がこのコンディションに翻ろうされ、カネットは予選20番手からのスタートになりました。

 

「今日は天候がコロコロと変わりましたが、自分にとってはいい一日になったと思います。ドライでもウエットでも走ることができ、いい経験になりました。どちらのセットアップでも気持ちよく走れています。午前は5番手タイム、午後の予選は非常に難しいコンディションになりましたが、集中して走りきりました。赤旗が提示される前に、僕は7番手につけていたのですが、ピットに戻ってセッションが再スタートしたあとは1コーナーでフロントから転倒してしまいました。そのためにラップタイムを更新できず、20番手スタートに甘んじる結果になってしまいました。スタート位置は低くなってしまいましたが、力強い走りができているので、決勝レースではできる限りたくさんの選手をオーバーテイクして、いいレースにしたいと思います」

 

決勝は大荒れの展開となり、転倒車が続出して6周目に赤旗中断。そして10周に短縮されて再開したレースで、カネットはついに表彰台を獲得しました。「チェッカーフラッグを受けた瞬間、涙があふれてきました。本当に感無量です。グランプリの世界で初めて、表彰台を獲得できました」。レースを終えたカネットは、喜びをじっくりと噛みしめました。

 

「今日は大荒れのレースで、レース1ではクラッシュしてしまいましたが、幸いにも赤旗後のレース2でも走ることができました。レース2では、第2集団の中で激しいバトルになりました。最終ラップで意を決して、グループの前に出て引き離そうとがんばりました。ダリン・ビンダー(マヒンドラ)と激しいバトルになって、最終一つ手前のコーナーでオーバーテイクされたのですが、彼のスリップストリームを利用して最後の直線で抜き返しました。スクリーンを見て僕が3位だと分かったとき、涙を止められませんでした。この一年間、チームと一緒にがんばってきた成果を、表彰台という結果で残せました。本当にうれしいです」

 

第16戦オーストラリアGPの翌週に行われた第17戦マレーシアGPは、またもや荒れたレースとなり、転倒に巻き込まれたカネットはリタイアを余儀なくされました。その際の負傷で左手と手首を骨折していることが判明し、帰国後の11月上旬に手術を実施しました。最終戦バレンシアGPは負傷を抱えた状態での参戦になりますが、バレンシア出身のカネットにとって、文字通りホームグランプリ。いい走りを披露するためにも、カネットは全力でレースに挑む覚悟です。