初経験のサーキットに順応していく若き才能
第12戦イギリスGP 会場:シルバーストーン・サーキット
予選:16番手 決勝:22位
Moto3クラスルーキーであるHonda Team Asiaライダーのカイルール・イダム・パウィにとって、今シーズンのほとんどレースが初体験のサーキット。第12戦の舞台、シルバーストーン・サーキットもその一つです。高速コースで路面のバンプ(凹凸)も多いこのサーキットは、ルーキーにとって順応が難しいコースと言えるでしょう。
レースウイーク初日、金曜午前に行われたフリープラクティス(FP)1では29番手と厳しいスタートを強いられましたが、午後のFP2では少しずつコースに慣れはじめ、23番手に順位を上げました。この日はセットアップをあまり変えずに、コースへの順応に徹したとパウィは話しました。
「初めて走るコースなので、FP1で少しセットアップを変えてから、FP2はその内容を維持する方向でコースの攻略に集中しました。午前から午後にかけてだいぶタイムを詰めることができたので、悪くなかったと思います。今は旋回中に外側へはらんでしまう傾向があるので、ラインの維持が少し難しくなっています。自分のライディングとセットアップでその改善を目指し、明日はもっとよくしていきたいです」
翌土曜日のFP3で、パウィは金曜の自己ベストから0.9秒のタイムアップを果たしました。午後の予選は雨。ルーキーながらすでに優勝を2度経験しているパウィは、ウエットコンディションでのずば抜けた速さに定評があります。濡れた路面で、まさに水を得た魚のように生き生きと走るパウィは少しずつタイムを上げていき、セッション終了間際にタイムアタックを狙いましたが、その矢先の1コーナーで転倒してしまい、それ以上のポジションアップは果たせませんでした。
「午前のFP3では昨日からさらにフィーリングがよくなってコース攻略も進み、大きく前進できたので、予選でもドライコンディションがよかったのですが、雨になってしまいました。予選の最後にストレートでサインボードを見たら16番手だったので、もう少しプッシュしようと思ったら、1コーナーで転倒してしまいました。それが本当に残念で、悔しいです。このコースは難易度が高く、経験をもっと積み重ねたいので、明日はドライでレースをしたいですね」
その期待どおり、日曜はドライコンディションになりました。ただし、午前のウォームアップ走行は昨夜までの雨の影響で路面がまだ濡れていたため、どの陣営もセットアップの最終確認作業などを十分に行うことはできませんでした。
12時30分にスタートしたレースで、16番グリッドのパウィはスタート直後から集団に飲み込まれ、その中でバトルを繰り広げることになりました。ほかの選手たちと激しい争いを最後まで続けながら、17周のレースを終えて23位でチェッカー。ピットボックスに戻ってきたパウィは、悔しそうな表情でしばらくじっとたたずんでいました。
「16番手スタートで23位のチェッカーなので、それが悔しいです。昨日からフロントに課題を抱えていて、今日もそれが原因であまり攻めることができませんでした。それでも、今回のレースを完走したことで経験をさらに積むことができたので、これを次回のレースに生かしたいと思います」
レース終了後、上位の選手が重量規定違反で失格処分となったため、パウィのリザルトは1つ繰り上がって22位になりました。次のレースは2週連続開催のイタリア・サンマリノGP。ここもまた、パウィにとって初経験のコースになります。次回もさまざまなことがらを次々と吸収し、大きな成長を遂げることでしょう。