IDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦

カイルール・イダム・パウィ

中上貴晶 ラタパーク・ウィライロー 尾野弘樹

マシンフィーリングに苦しみ厳しい結果に

第10戦オーストリアGP  会場:レッドブル・リンク
予選:28番手  決勝:27位

Moto3クラスを戦う18歳のカイルール・イダム・パウィは、シーズン前半戦を優勝で締めくくり、いい雰囲気で後半戦を迎えました。しかし、世界最高の選手権は、ルーキーに対してそう甘い顔ばかりを見せてくれるわけではありません。2016年後半戦の口火を切るオーストリアGPは、マレーシア出身のヤングライダーに厳しい試練を与える週末になりました。しかし、この経験が、彼をさらにたくましくしたこともまた、事実です。

ルーキーライダーにとって、シーズンを戦うほとんどの会場は初めて経験するコース。オーストリアGPは19年ぶりの開催で、他のライダーにとっても経験のほとんどないサーキットでしたが、パウィにとって今回のレッドブル・リンクは、いつものような初走行地の一つにすぎません。金曜日のセッションは、午前午後ともコースの慣熟に費やしました。

「今日は、一日かけてコースに慣れることに集中しました。このサーキットは右コーナーが多くて左が極端に少ない構成。特に左の1つ目はタイヤが冷えているので、気をつけたいと思います」

このコースは登りの前半区間がストップ&ゴー、後半は下りながら回り込むコーナーが続くレイアウトです。そこに求められる旋回性で、初日は苦労を強いられた、とパウィは明かしました。

「リアのフィーリングがあまりよくなくて、スロットルをなかなか開けにくいんです。特に低速コーナーが厳しいですね。でも、明日はコースにもっと慣れると思うので、そうすればラップタイムもよくなると思います」

パウィのフィードバックを受け、チームは車長を少し短くして旋回性を高めるセットアップに振る方向で土曜のセッションに臨む計画を立てました。

カイルール・イダム・パウィ

このセットアップ変更は着実に功を奏した様子で、土曜日の走行を終えたパウィはマシンフィーリングがだいぶ向上した、と述べました。

「今日は、リアのフィーリングがよくなりました。昨日と比べて天気がよくなり、路面コンディションが改善したことも、その助けになっていると思います。僕の走りについては、旋回も立ち上がりもいい方向に進んでいます。ブレーキングポイントも、すごくよくなりました」

セットアップとマシンフィーリングでは前進を果たしたものの、午後の予選は順位が28番手となかなかに厳しい内容になりました。

「ラップタイムを更新しようとがんばったのですが、厳しい予選でした。最後のアタックではスリップストリームを利用できる相手が見つからず、単独で走りましたが、このコースではスリップを互いに利用し合った方がタイムが伸びるので、結果的に厳しい順位になりました。でも、チームのおかげでマシンは確実によくなっているので、明日はがんばりたいと思います」

カイルール・イダム・パウィ

日曜の決勝レースは午前11時にスタートし、全23周で争われました。

27番手スタートのパウィはポジションアップに苦労し、序盤から最後まで集団から離れた位置での走行を余儀なくされました。それでも最後まで集中力を保って完走を果たし、27位でチェッカーフラッグを受けました。

「決勝レースではフロントの安定感が乏しく、あまりいいフィーリングではなかったので序盤から前方グループについていくことができなくなりました。結果的に、彼らから大きく離された場所で走り続けることになったので、とにかく完走を目指して最後までがんばって走り抜きました。

今週は厳しいウイークになってしまいましたが、次のレースは連戦開催で1週間後なので、気持ちを切り替えて今まで同様の力強い走りをできるようにがんばります。ブルノ・サーキットでは7月にテストを実施しています。コースも分かっているし、走行データも取れているので、他の会場のように未知の場所ではありません。その意味でも心強いので、チェコGPはチームと力を合わせて全力で戦います!」