難コンディションを制してシーズン2勝目
ウエットコンディションの戦いになった第9戦ドイツGPで、Honda Team Asiaの18歳ルーキー、カイルール・イダム・パウィが独走優勝。第2戦アルゼンチンGPに次ぐシーズン2勝目を達成しました。
第9戦ドイツGP 会場:ザクセンリンク
予選:20番手 決勝:1位
「今日は20番グリッドからのスタートだったので、厳しいレースになることは覚悟していました」
レースを終えて笑顔でそう語る18歳の若者は、午前11時にスタートしたレースのレッドシグナルが消灯すると同時に、後方のグリッド位置をばん回するロケットスタートを決め、1周目で10番手に浮上しました。
パウィの雨に対する強さは、第2戦のアルゼンチンGPでも証明済みです。世界選手権フル参戦2戦目だったあのときも、パウィは午前のウォームアップ走行でダントツの速さを披露し、そのスピードを決勝レースでも維持して後続を引き離し続ける圧勝劇を披露しました。
今回も、まさに同じ展開。ウエットコンディションになった午前のウォームアップでトップタイムを記録した走りは、アルゼンチンの再現を大いに予感させました。決勝レースのグリッドでは、テレビインタビューに対して「雨は得意です。でも、スタート位置が低いので、がんばって順位をばん回し、最後まで集中して走りきりたいと思います」と答えました。
目の覚めるようなスタートを決めて10番手に浮上したパウイは、あっという間に前を追い上げて、4周目にはトップに浮上。その後も、後続選手とは次元の違うラップタイムを刻み続けて、どんどん差を広げていきます。12周目には10秒差、さらに11秒、12秒、14秒と、ギャップはどんどん拡大。まさに水を得た魚のような快走で、パウィは周回を重ねました。
ザクセンリンクは、前半区間に細かいコーナーが続きながらアップダウンが連続し、後半には急激な下りと一気に急坂を駆け上がる連続高速コーナーが配置された、難易度の高いコースです。また、左コーナー10に対して右コーナー3という極端な差も、攻略をさらに困難にします。このコースを初めて走行するパウィもやはり順応に手こずり、金曜の土曜の2日間で少しずつ習熟を重ねていきました。それでも予選を終えて20番手。7列目から日曜の決勝レースを迎えることになりました。
「だから、表彰台のことなどは全く考えていませんでした。今日のレースは完走することが第一目標でした」
レースを終えたあと、そう言って全27周の戦いを振り返りましたが、雨のサーキットで思いきりよく生き生きと走り続ける姿からは、優勝をほぼ掌中に収めている様子がはっきりとうかがえました。パウィは不安定な路面状態を気にする様子もなく、コース幅をいっぱいにゼブラゾーンまで使って旋回していきます。が、伸び伸びと走り続けるあまり、勢い余ってオーバーランしたり、わずかにマシンが挙動を乱すシーンも何度かありました。チームはサインボードで「OK」の指示を出してペースをコントロールするように合図を送り、パウィ自身も「『OK、そろそろ落ち着こう』と自分に言い聞かせて走りました」と、少し苦笑しながらこの瞬間を振り返りました。
「この3戦はずっと転倒リタイアしているので、今日は完走することが最優先でした。でも、天候も味方してくれて勝つことができました。チームと家族、いつも僕を支えてくれる人たちのおかげです。皆に心から感謝をしています」
最高の形でルーキーイヤーの前半戦を終えたマレーシア出身のゴールデンボーイは、いよいよ8月からシーズン後半戦に向かいます。なかには、パウィのホームGP、マレーシアも待っています。学習の一年で着実に結果を残している若者のさらなる成長に、世界中から多くの注目と期待が集まっています。