手応えをつかむも、手痛い転倒リタイア
第8戦オランダGPが行われるTTサーキット・アッセンは、“ダッチウェザー”と呼ばれ、めまぐるしく変わる気象でも有名な場所です。世界選手権参戦初年度で、ここでの走行を初めて経験するHonda Team Asiaのカイルール・イダム・パウィは、最初のセッションからこの難しいコンディションの洗礼を受ける格好でレースウイークがスタートしました。
6月下旬は、日本で言う夏至の季節ですが、ここオランダでは朝の早い時間は10℃を少し上回る程度の気温で、かなり冷えたコンディションになります。しかも、金曜のFP1は粒の細かいミストのような霧雨が降り、中途半端で微妙なコンディションになりました。
第8戦オランダGP 会場:TTサーキット・アッセン
予選:24番手 決勝:リタイア
パウィはコースを覚えるために勢力的な周回を続け、このセッションは21番手。午後のFP2が事実上のドライコンディション初走行になりました。引き続きコースへの習熟を続けて、この日の順位はトップから1.404秒差の21番手でした。
「FP2ではコンディションがよくなったので、セッティングをあまり変えずに走り込みに集中しました。思ったようなライン取りをできていないので、まだうまく走ることができていません。特にコース序盤の小さいコーナーが続く区間は走りにくいのですが、後半の最終シケインなどはいいリズムで走れそうです」
パウィのようなルーキーライダーにとって、コース攻略とコンディションへの対応を要求されるアッセンはかなりの難易度と言えそうですが、着実に一歩ずつ前進することで、道は拓けてくるものです。
土曜日の午前の走行ではドライコンディションを維持しました。パウィはさらにコース攻略を進めるために、40分間のセッションでチームと一丸となって取り組みを続けました。慣れないサーキットでひたむきに走り続けましたが、コース上でのスロー走行がペナルティーの対象となってしまい、4グリッド降格処分を受けることになりました。また、午後の予選ではセッション中に雨が降ってタイムアタックのタイミングを逸してしまい、24番手。その結果、10列目28番グリッドから日曜の決勝レースを迎えることになりました。
「厳しい一日になってしまいました。ペナルティーを受けてしまったのは残念ですが、明日は少しでも順位をばん回するために、序盤から全力で走るつもりです。セットアップに関しては、リアが滑るので、そこを改善したいと思います。予選では、この問題を解決しようと取り組んでいる間に雨が降ってきたので、タイムアタックのタイミングを逃してしまい、24番手から順位を上げることができませんでした。決勝レースはポイント獲得を目指してがんばります」
金曜日と土曜日は天候に翻弄されたMoto3クラスでしたが、決勝レースが行われる日曜はドライコンディションを維持しました。パウィは午前のウォームアップ走行で12番手。トップタイムとの差は0.921秒で、昨日までの問題を解決する糸口をつかみつつある様子がうかがえました。
午前11時にスタートするレースは全22周で争われます。28番手からスタートしたパウィは、攻めの走りでセクターごとに順位を上げ、一気に8台を抜いて20番手で一周目のコントロールラインを通過しました。しかし、さらなるポジションアップを狙った矢先、1コーナーで転倒。ポイント圏内のトップ15を目指す走りは、そこで終了を余儀なくされてしまいました。
「フロントが切れ込んで、転倒してしまいました」ピットへ戻ってきたパウィは、がっかりした表情を隠すことができませんでした。
「28番手からスタートを決めて一気に順位を上げることができました。昨日はセットアップで苦しんでいたのですが、今朝のウォームアップでは問題を解決し、チームが乗りやすいマシンに仕上げてくれました。トップ争いをしたカタルニアGPのような手応えになっていただけに、レース序盤の転倒で終わったのが残念です。次のザクセンリンクでは、気持ちを切り替えていいレースウイークにしたいと思います」