予選で転倒を喫し、決勝出場を見合わせる悔しい結果に
第17戦マレーシアGP 会場:セパン・サーキット
予選:25番手 決勝:キャンセル
第17戦マレーシアGPは、Honda Team Asiaの尾野弘樹にとって試練のウイークになりました。新舗装の路面と南国特有の厳しい暑さ、そして予測のつかない天候変化とさまざまな要素が何重にも尾野を取り囲みます。そんな中で、グランプリウイーク初日の金曜日は12番手タイムとまずまずの走り出しになりました。
「雨量が多くなるとタイヤのグリップを感じられなくて、思ったようにタイムを上げることができませんでした。最後は路面が乾いてきたのでタイヤの接地感も出てきて、タイムを上げることができました。前回のオーストラリアGPでもそうだったのですが、雨量が多いと厳しくて、少なくなるとタイムを上げていける状況です。雨量が多い場合のセッティングを考えるために、今日はこれからチームとしっかりミーティングをしたいと思います」
翌日の予選では、決勝で優勝争いができる位置を狙う意気込みです。
「完全なドライコンディションで走れているわけではなく、ウエットの路面では自分の調子がよくないので少し不安はありますが、決勝でトップ争いをするためにはセカンドローくらいには並ぶ必要があります。だから、明日の予選ではそこを目指したいと思います」
土曜日も明け方まで雨が降り、朝から気温が上昇する暑い一日となりました。午前中に行われたMoto3クラスのFP3は、走行開始時間にウエットパッチが残っていて理想的とはいえないコンディションでしたが、前日と比較すれば多少よい状況です。このセッションで、尾野はトップと0.8秒差の14番手でした。ドライコンディションでは、戦闘力の高さを発揮できていると言えそうです。
しかし、午後になって状況が一変しました。予選開始時に降り始めた小雨は、時間の経過とともに雨脚が強くなっていきました。そのような状況で尾野は、9コーナーにおいてハイサイド転倒を喫してしまいます。予選は雨が強くなってきたために赤旗中断となりました。
頭から着地した尾野は軽い脳震とうを起こしましたが、セッション再開まで休憩して再びコースインしました。しかし、万全とは言えない体調では十分に攻めきることができず、25番手で予選を終えました。
「25番手スタートになってしまったのは残念ですが、ドライではいいフィーリングを得ているので、決勝ではしっかりと追い上げたいと思います。ウエットの場合は、明日朝のウォームアップでもう一度セットアップを見直して決勝に臨みます」
土曜日午前のウォームアップ走行は、ドライコンディションになりました。前日までドライでは力強い走りができていたはずの尾野ですが、このセッションでは31番手タイム。ピットボックスに戻ってヘルメットを脱いだ尾野の顔色は冴えず、前日の脳震とうの影響はまだかなり残っている様子でした。
「走っていても視点が定まらなくて、怖いですね。集中力も維持しにくいです……」
その後、尾野はチームと相談し決勝レースの走行を控えることにしました。決勝レースは大勢の選手が転倒する荒れた展開になり、尾野はその様子をピットボックスから見ていました。
「ドライコンディションなら追い上げる自信があったので悔しい気持ちはあるし、レースに出ていれば自分にも可能性があったかなとも思うのですが、あれだけクラッシュが多かったので、逆に出なくて正解だったのかな、というのが正直なところです。帰国後、日本の病院で念のために精密検査を受ける予定です」
月曜日に大阪の病院で精密検査を受けたところ、結果は異常なし。最終戦のバレンシアGPに向けて体調を整えて、今シーズン最高の結果を目指します。