転倒による苦境をばん回し、ポイントを獲得
第10戦オーストリアGP 会場:レッドブル・リンク
予選:26番手 決勝:15位
予選のタイムアタックに失敗し、低いグリッド位置からのスタートを強いられたことが、尾野弘樹の決勝レースを厳しい戦いにしてしまいました。ある意味では自らが招いてしまった苦境とはいえ、しかし、そのような状況でも最後まで最善を尽くしてしっかりとチャンピオンシップポイントを獲得したという点では、内容の濃いレースウイークだったともいえるでしょう。そんな尾野の、2016年第10戦オーストラリアGPを振り返ってみましょう。
オーストリアGPは、今年が1997年以来19年ぶりの開催。会場のレッドブル・リンクは首都ウィーンから200kmほど離れた山間部に位置しています。F1世界選手権も開催されているため、モータースポーツファンにはなじみのサーキットといえるでしょう。
ただし、MotoGPの3クラスがここにやってくるのは19年ぶりで、ほとんどの選手にとって初めてのコースになります。木曜日にスクーターでコースを数周走行した尾野は、好きなレイアウトという印象、と話していましたが、金曜午前と午後のフリープラクティスを終えた際も、その好印象は変わりませんでした。FP1では6番手につけ、午後のFP2では事前テストで当地を経験済みの選手たちからややタイムで離されたものの、それでも1.350秒差の18番手につけて初日を締めくくりました。
「マシンは、サマーブレイク前にブルノでテストを実施した際のセッティングから走り始めて、いいフィーリングです。今はコースに慣れることが最優先だと思うので、今日はセッティングをなにも変えずに自分の走りで工夫しながら周回を重ねました。ここは左コーナーの少ないコースで、特に左の1つ目はタイヤが冷えている状態で旋回するので、そういったことにも気をつけながら、明日はさらにいい走りをしたいと思います。今日の順位は最後に18位まで落としてしまいましたが、タイムは接近しているので、あまり不安は感じていないですね」
金曜日はどんよりとした曇り空で日本の真冬のような寒さでしたが、土曜は終日好天に恵まれた一日になりました。尾野は午前のFP3から昨日のタイムを一気に更新。上位タイムで終えた勢いをそのままに、午後の予選に臨みました。
40分間のセッション中盤、いよいよこれからタイムアタックに臨もうと態勢を整えて勢いよくコース後半区間に差しかかったとき、最終コーナーで勢い余ってフロントを切れ込ませ、転倒を喫してしまいました。マシンを起こしてピットに戻り、メカニックたちが大急ぎでマシンの修復を図ったものの、完ぺきな状態にまでは戻せず、再度コースインした尾野は26番手という厳しい予選順位になりました。翌日の決勝レースは9列目スタート。難しい戦いを強いられそうです。
「転倒して戻ってきてから、チームがすごくがんばってくれて再び走り出すことができたのですが、リアブレーキが使えない状態で、その後はアタックできませんでした。
それまではフィーリングよく走れていたし、単独で走っても悪くないペースで、だれかのスリップストリームにつくとさらに伸ばせていたので、転倒で予選のチャンスを失ってしまったのが本当に残念です。
このサーキットはパッシングポイントが少ないので、低いグリッドからのスタートだと厳しいレースになると思いますが、自分のペースそのものは悪くないので、明日はしっかりと隙を伺って、少しでも前に出られるように狙っていきます」
アベレージのペースそのものは悪くない、と土曜の予選を終えて話していた通り、日曜午前のウォームアップ走行で、尾野は4番手タイムを記録しました。マシンとライダーの仕上がりはよさそうですが、23周の決勝レースは低いグリッド位置からのスタートを強いられているため、この悪条件をどれだけ克服できるかが、レースの出来を左右することになりそうです。
19年ぶりのオーストリアGP決勝レースは午前11時にスタートしました。オープニングラップで尾野はうまくポジションを上げ、17番手に食い込みました。その集団内で安定したラップタイムを保ってライバル選手とし烈な争いを続けながら、周回が推移していきました。
ポイント圏を狙うバトルは最終ラップまで続き、尾野は15位でチェッカー。第6戦イタリアGP以来のポイント獲得となりました。
「ポイントを取れたことは、ポジティブな要素だったと思います。レース中のラップタイムを見返してみると、シングルを狙えるタイムで走れていたので、今回は結果的に予選順位の悪さが最後まで響いてしまいました。
午前のウォームアップでは、フロントを強くして走ってみたらブレーキフィーリングが改善しました。決勝でも集団の中で勝負をできたし、昨日から今日にかけてトライしたセッティングがうまく決まって決勝で結果を出せたので、その意味ではよかったと思います。15位は両手を挙げて喜べるような結果ではもちろんないのですが、転倒して厳しい局面もありながらも内容の濃い取り組みができたので、今後に向けてポジティブな要素の多かったレースだと思います。100点満点でいえば、今回の出来は65点くらいでしょうか。
次戦のブルノ・サーキットは、昨年のレースでもらい事故で転倒して痛い思いをしたサーキットなので、このリズムでさらに調子を上げ、きっちりと昨年のリベンジを果たしたいと思います!」