IDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦

中上貴晶 ラタパーク・ウィライロー カイルール・イダム・パウィ

復帰戦で得た好感触を後半戦へ

尾野弘樹

第9戦ドイツGP  会場:ザクセンリンク
予選:9番手  決勝:リタイア

2016年シーズンの折り返し地点、第9戦ドイツGPは、IDEMITSU Honda Team Asiaライダー尾野弘樹の復帰戦でした。第7戦カタルニアGPの決勝レースで転倒し、左手人差し指を骨折した尾野は、帰国後に大阪市内の病院で負傷部位にピンを2本挿入する手術を実施しました。そのため、第8戦を欠場して治療と回復に専念し、今回から戦いの場へ戻ってきました。

手術を行ったあとは、一刻も早い回復を目指してリハビリを続け、ドイツGPに向かう前に2本のピンのうち1本を除去。激しい運動によるケガの悪化を避けるため、医師の配慮で1本のピンを念のために残した状態で、尾野はドイツGPに臨みました。

初日のFP1とFP2を終えて尾野は、

「クラッチ操作も問題なくできるし、普通にマシンに乗ることができています。人差し指を使えないことに対する影響は、あまりないと思います」

と、良好な感触で走行できた様子ですが、唯一の懸念は27周という長丁場の決勝レースだ、とも話しました

「ただし、約1カ月間バイクに乗っていないので、握力が少し低下しています。短い周回なら問題ないのですが、長く連続して走ると少し影響が出てしまうかもしれません」

しかし、指の状態を懸念せずに走れたことは初日の大きな収穫と言えるでしょう。また、その状態で、もともと苦手意識のあったザクセンリンクを安定して走れていることも、好材料になりそうです。

「順位(初日総合19番手)を見るとまだまだなのですが、少しずつ自分の思うようにライディングできているので、当初に抱えていた不安は、今日実際に走ってみてだいぶ少なくなりました」

尾野弘樹

土曜日の走行ではさらに調子を上げ、好天に恵まれたドライコンディションの中、上位陣の選手たちと全く遜色ないタイムで走行を続けました。午前のFP3は8番手、午後の予選ではポールポジションから0.690秒差の9番グリッドを獲得しました。

「昨日からマシンはなにも変えていなくて、自分の走りだけで朝も予選もアジャストしていって調子よく走れたので、今日一日の結果としてはよかったと思います。コンディションがよくなってグリップも向上しているので、そのぶんスロットルを開けやすくなってタイムを上げていくことができました」

決勝レースの目標はポイント獲得、と話しました。

「最低でも、15位以内でフィニッシュしたいですね。欲を言えばシングルで終えたいですが、まずは最後まで走りきることを目標にしたいと思います」

尾野弘樹

その決勝が行われる日曜日は、土曜日の晴天から一転してウエットコンディションになりました。

朝のウォームアップ走行から路面はすでにフルウエット状態でしたが、尾野はこの20分間のセッションで10番手タイムを記録。良好な手応えで本番の戦いを迎えることができそうな雰囲気です。

午前11時にスタートしたレースでは、スタートを成功させてオープニングラップからトップ集団につけました。4周目には2番手に浮上し、チームメートのカイルール・イダム・パウィと1-2態勢で後続を一気に引き離しにかかりました。

8周目には自己ベストタイムをマーク。このままIDEMITSU Honda Team Asiaの2台が独走状態を維持するかと見えた矢先の4コーナーで、雨に濡れた路面にマシンが挙動を乱し、あわや転倒という瞬間がありました。グラベルへコースアウトしながらもコントロールを取り戻し、コースへ復帰した際には、尾野の順位は5番手でした。

そこから再び追走を開始。やがて3番手グループを眼前に捉え、表彰台を射程圏に捉えましたが、12周目の8コーナーでオーバーランしてクラッシュパッドに当たり、転倒。残念ながら、そこでリタイアとなってしまいました。

「ウエットコンディションの中、悪くないペースで走れて、パウィと1-2フィニッシュも可能なレースだったと思うので、転倒してしまったのが残念です。難しいコンディションで、雨が強くなったり弱くなったりしていたのですが、いいフィーリングで走れていたので、自分のミスで転倒してしまったことが今回の反省点です。 シーズン後半戦にしっかりと結果を残すレースをするためにも、これからのサマーブレイクを有効に活用して指を完治させ、トレーニングを積み重ねて万全な状態で備えたいと思います」