IDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦

中上貴晶 ラタパーク・ウィライロー カイルール・イダム・パウィ

充実のレースウイークを送るものの、アクシデントに泣いたカタルニア

第7戦カタルニアGPが行われるカタルニア・サーキットは、スペイン第2の都市であるバルセロナの郊外に位置しています。MotoGPの人気がもともと高いお国柄に加え、車や電車などの交通アクセスが良好なこともあって、毎年多くのファンが観戦に訪れます。今年のカタルニアGPも、Moto3クラスで多くのスペイン勢が活躍しました。そんな地元勢の迫力に負けじと、Honda Team Asiaの尾野弘樹はレースウイーク初日から健闘し、好調な走りを披露しました。

尾野弘樹

第7戦カタルニアGP  会場:カタルニア・サーキット
予選:11番手  決勝:リタイア

金曜日午前に実施されたFP1ではHonda勢が好調で、上位陣をNSF250RWが占めていました。この午前の走行で、尾野は総合11番手タイムでしたが、午後のFP2では安定感を高めて、セッション中は常にタイムシートの上位につけていました。この日は、40分間のセッションを終えて、トップタイムから0.406秒という僅差で総合4番手タイム。「前戦のムジェロで、マシンのフィーリングが抜群によくなりました。今回はその好感触を朝から維持して、順調にタイムを詰められています」。一日の走行を終えたピットボックスで、尾野は額にうっすらと汗のにじむ顔をほころばせました。

「午後は路面温度が上がったことで、タイヤが動いて少し厳しい状況になりましたが、乗り方でアジャストしてうまく対応できました。明日の予選も今日のような状況になると思いますが、その確認ができたのでよかったです」

尾野弘樹

金曜日の午後、Moto3クラスのセッション後に行われたMoto2クラスのFP2で、大きなアクシデントが発生したことにより、土曜日の走行から、コース後半区間のレイアウトに変更が加えられました。高速区間だったセクター4にシケインの切り返しを導入して低速化されたこの部分の攻略に、土曜日の尾野は少々の苦労を強いられた様子でした。

予選の順位は11番手。ポールポジションからは0.702秒遅れのタイムとなった尾野は、セッション後「正直、最初は少し苦労しました。でも、ライディングを少しずつ変えていくことで、うまく走れるようになってきました」と語りました。日曜日の決勝レースは、4列目中央からのスタートとなりました。

「順位はともかく、明日に向けていい走り方を見つけられたのでよかったです。午後になって気温と路面温度が上昇すると、ソフトタイヤだとなかなか(スロットルを)開けづらい症状が出てしまうのですが、明日の決勝はハード側のタイヤで臨むので、心配はしていません。上位陣のタイムはかなり接近しているので、明日はムジェロのように混戦のレースになると思いますが、今季ベストリザルトを目指してがんばります」

尾野弘樹

Moto3クラスの決勝は全22周で争われました。午前11時に始まったレースのオープニングラップで、尾野はうまくスタートを決めてポジションをアップ。トップグループにつけました。1周目は8番手でコントロールラインを通過。長いレースに備えて集団内での位置取りを考えながら、一つひとつのコーナーを駆け抜けていきました。2周目もトップグループの8番手で通過し、レースは3周目に差しかかりました。

そんな中、長いストレートエンドの1コーナーで前が詰まり、衝突を回避した尾野はややオーバーラン気味になりましたが、2コーナーで復帰。しかし、そこでハイサイドを喫して転倒してしまいました。この転倒で、尾野は左手人差し指を負傷。メディカルセンターの初期診断で、骨折と診断されました。「スタートからいい出だしで、トップグループについていけました。ムジェロのようなレース展開に持っていけるかな、というフィーリングでしたが」。左手を添え木で固定された尾野は、帰国後に改めて病院で診察を受けること、そして手術が必要となるであろうことを吐露しました。

帰国後、大阪市内の病院で診察を受けた結果、尾野は左手人差し指の基節骨骨折と診断されました。金曜日に負傷部位をピンで固定する手術をし、土曜日に退院。次戦のオランダGPに出場できるかは、手術から1週間後の6月17日(金)に改めて医師と相談して決定することになりました。

「医師に次のアッセンで走りたい意向を伝えていますが、少し難しいかもしれません。アッセンへの参戦が難しいとしても、その次のザクセンリンクではきっと復帰できると思います」

今はまず、負傷部位の完ぺきな回復を望みたいところです。ケガから復帰した尾野は、必ずやこれまで以上の力強い走りを披露してくれることでしょう。