IDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦

中上貴晶 ラタパーク・ウィライロー カイルール・イダム・パウィ

今後に向けた課題がはっきりと見えた

2016年、尾野弘樹はHonda Team AsiaでMoto3クラスにおける2年目のシーズンを迎えることになりました。新たに結成されたこのチームで、尾野はプレシーズンのプライベートテストからチームと積極的にコミュニケーションをとり、開幕に備えた準備を少しずつ積み重ねてきました。

3月第1週はスペイン・ヘレスで3日間の公式IRTAテストが行われ、翌週には舞台を開幕戦が行われるカタールに移して、さらに3日間のテストが実施。これらのテストで、尾野とチームはNSF250RWのセットアップを進め、ライディングの向上にも取り組んできました。計6日間のテストでは、やや手探り状態が続いた感もありましたが、レースウイークに入ると光明が見えはじめ、ようやく本来の走りができそうな状態に近づいてきました。

尾野弘樹

開幕戦カタールGP  会場:ロサイル・インターナショナル・サーキット
予選:29番手  決勝:18位

レースウイーク初日には、2回のフリー走行が行われましたが、そのFP2でマシンに搭載するウエイトの位置を上方へ変更したところ、取り回し性能が向上し、思い通りに操れる感覚に近づいてきました。

「やっと、攻められるフィーリングになってきましたね」と、尾野は明るい表情で笑顔を見せました。

そして「セッティングが同じでも、ぐっと走りやすくなって、自分のフィーリングとも合ってきました。でも今のラップタイムは昨年の自分の自己ベストタイムまで、まだ1秒ほど開きがあります。昨年のタイムを出せればトップ6にも入れると思うので、明日はそれを目標にしたいと思います」とコメントを残しました。

2日目のFP3ではさらに旋回性が向上しました。レースウイーク3日目の予選では、決勝に向けて上位グリッドの獲得を目指し、挑みました。セッション終盤のタイムアタックに臨んだ尾野は、セクター1、セクター2と自己ベストタイムを更新。このままいけばトップ10は確実と思われた矢先、9コーナーで転倒を喫してしまい、残念ながらタイムアップはなりませんでした。その結果、尾野は29番グリッドからのスタートという不本意な位置から決勝レースを迎えることになってしまいました。

尾野弘樹

日曜のレースは、日没直後の午後6時にスタート。尾野は10列目29番グリッドという位置からのスタートとなりましたが、集中力を高めて決勝のグリッドにつきました。シグナルが消え、全18周の戦いが開幕。尾野はグリッド位置から順位を上げて23番手。大きく長い集団は、やがて少しずつ小さなグループに分かれていき、コース上の至るところで激しいオーバーテイクが繰り広げられました。

尾野は自分の前後にいるライダーたちと激しいバトルを続けながら、どんどんタイムを上げていきます。5周目には、公式テストとレースウイークを通じて自己ベストタイムを更新する2分06秒828をマーク。その後も、尾野は一貫して攻めのライディングを続けます。レース後半には7台のグループでし烈な戦いになり、最後はそのグループの前方で18位のチェッカーを受けました。ポイント獲得こそはなりませんでしたが、ウイークを通じて自己ベストとなるタイムを記録したことや、レースの最後まで攻めのライディングを維持し続けたことは、次戦に向けてポジティブな材料と言えます。

尾野弘樹

レース後の尾野弘樹のコメント
「本当はもう1つ前の集団でレースをしたかったのですが、序盤に順位を上げられずに1つ後ろのグループになってしまいました。非常に厳しいレースウイークで、ポイントも獲得できない悔しい結果ですが、今後に向けた課題もはっきりと見えました。今回の反省点を自分でもしっかりと考え、次のアルゼンチンではまず予選でいいグリッドポジションを獲得することを目指したいと思います」

尾野の2016年シーズン開幕戦は残念な結果に終わってしまいました。しかし、この悔しさは、第2戦からの本格的な飛躍にむけて、大いなる糧となるに違いありません。