HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート
vol.94

ホームGPで1-2フィニッシュの快挙を達成!

 第3戦スペインGPの舞台はスペイン南部のアンダルシア地方に位置するヘレス・サーキット。Repsol Honda Teamのダニ・ペドロサとマルク・マルケスの両選手がそろって迎えたホームGPです。ペドロサは、ここヘレスでは2008年の優勝をはじめ、毎年必ず表彰台を獲得してきました。また、MotoGPルーキーのマルケスも、前戦の優勝で勢いに乗っており、両選手ともに意気揚々とレースウイークに臨みました。
 11万人を超す大観衆が詰めかけた日曜日の決勝レースでは、ペドロサが持ち前の強さを存分に発揮して独走態勢に持ち込み、今季初優勝。マルケスは最終ラップの激戦を制して2位表彰台を獲得しました。チーム、そして両選手のホームGPで1-2フィニッシュを達成するという劇的なレースになりました。チーム全員と選手が一丸となって挑戦し、最高のリザルトを獲得した今回のレースウイークを、HRCチーム代表のリビオ・スッポが振り返ります。

−第3戦のレースは前回のアメリカズGPに続き、2戦連続の1−2フィニッシュというすばらしい結果に終わりました。今回のペドロサ選手の優勝は、チャンピオン獲得に向けて非常にいい勢いがついたのではないでしょうか。

「ヘレスでのレースウイークは実にすばらしい内容でした。オースティン(アメリカズGP)のあとにダニは、昨年後半戦に連戦連勝をしていたころの、マシンのいいフィーリングが戻ってきた、と話していましたが、今回のレースでは、まさにその言葉を結果として実証してくれました」

−マルケス選手が表彰台を獲得することは予想していましたか?

「もちろん、その可能性はあると信じていました。しかし、ヘレス・サーキットでは、ダニ以外にもロレンソ選手とロッシ選手が非常に強いので、表彰台獲得は簡単ではないだろうなと感じていたのも事実です。さらに、フリープラクティスではクラッチロー選手も速さを発揮していましたからね。マルクとチームスタッフたちが一丸となって取り組んでくれたおかげで、決勝日のウォームアップ走行後には、表彰台を狙えるところまで仕上がってきました。本当にすばらしい仕事をしてくれたと思います」

−最終ラップの最終コーナーで、ロレンソ選手をオーバーテイクしたマルケス選手については、どう思いますか?

「ロレンソ選手本人がレース後に語っていたように、彼はマルクがそこまで直後に接近しているとは考えていなかったようですね。だからイン側を開けてしまい、そこを狙ってマルクが飛び込んでいったのです。ヘレス・サーキット最終コーナーでのこのような攻防は、今回が初めてではありませんし、今後もおそらく、このようなバトルはあり得るでしょう」

−2戦連続となるRepsol Honda Teamの1-2フィニッシュは、1990年代のドゥーハン、クリビーレ時代をほうふつとさせます。

「現在のRepsol Honda Teamは非常に強力といえるでしょう。しかし、ほかの時代と比較するのは、さまざまな条件が異なるので難しいですね」

−現時点で、マルケス選手は、史上最年少でランキング首位の座に就いています。また、3戦連続の表彰台獲得も史上最年少記録です。そのわりに、本人はあまりプレッシャーがあるようには見えませんが……。

「マルクはすばらしい才能を存分に発揮してくれているので、我々も本当に喜んでいます。とはいえ、今年はまだMotoGP一年目なので、過剰な期待はかけていません。それに、今はまだ学習の段階なので、それがプレッシャーを感じずに済む大きな要因にもなっているのでしょう。性格的なものもあるでしょうね。昨年はMoto2のチャンピオン候補最右翼でしたが、シーズン前には視力障害の治療で苦労もしていました。それでも開幕すると、優位にシーズンを進めていきましたからね」

−2002年に最高峰クラスがMotoGPになって以来、ヘレス・サーキットではHondaが6勝、ヤマハは5勝を挙げています。しかしレース前の予想では、このコースではヤマハが有利、という声が多かったようです。

「そのサーキットが特定のマシンに合っているのか、あるいはほかのマシンが有利かということは、非常に難しい問題です。ロードレースは、ライダーに依存する部分が非常に大きいのも事実ですからね。それはともかく、今年3月のプレシーズンテストでは、ヤマハ陣営の選手たちが非常にいい走りを披露していました。それが、「ヘレスはヤマハ向きのコースだ」と人々が言うようになった要因の一つなのではないでしょうか。しかし、そのテストのときと今回のレースウイークでは、温度や気象などさまざまな条件が異なっています。それを考えると、ダニとマルク、そしてチームスタッフが非常にすばらしい仕事を成し遂げてくれたことは間違いないでしょう」

−レースを終えた月曜日には事後テストを実施しましたが、新しい部品などは投入したのでしょうか?

「特に目新しいものはありません。レースとは違うセットアップを試し、今後に向けてさらにいい方向性を探究することに終始しました」

−次戦のフランスGPは、5月17日から19日にかけて、ル・マン・サーキットで開催されます。マルケス選手とペドロサ選手はそれぞれランキング首位と2位で第4戦を迎えます。意気込みをお聞かせください。

「ル・マン・サーキットも、ヤマハ向きのコース、と言われていますね。その評判を覆せるよう、我々はもちろん全力で挑みます。皆さまも、ご声援と応援をよろしくお願いいたします」