HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート
vol.93

マルケスの最年少優勝記録更新とチームの1-2フィニッシュ

 第2戦アメリカズGPで、MotoGPルーキー、マルク・マルケス(Repsol Honda Team)が快挙を達成しました。土曜日の予選ではポールポジション(PP)を獲得して、Hondaの大先輩フレディ・スペンサーが保持していた最年少PP記録(1982年、スペインGP、ハラマサーキット)を31年ぶりに更新。日曜日の決勝レースではダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)と2人で緊迫感あふれるトップ争いを繰り広げ、最後はトップでチェッカー。同じくスペンサーが所持する最高峰クラスの最年少優勝記録(1982年、ベルギーGP、スパ・フランコルシャン)を更新し、MotoGP2戦目にして初優勝を達成しました。
 ペドロサも2位でフィニッシュ。レースウイークを通じて強さを発揮してきたRepsol Honda Teamは1-2フィニッシュで、初開催地サーキット・オブ・ジ・アメリカズのレースを最良の結果で終えました。選手とチームが一丸になって戦い抜いた今回のレースを、HRCチーム代表のリビオ・スッポが振り返ります。

−今回のアメリカズGPで、マルケス選手はポールポジション、ファステストラップ、そしてMotoGP初勝利で最年少優勝記録更新、とすばらしい記録を達成しました。先月のプライベートテストでも十分に速さを披露していたとはいえ、大きなプレッシャーの中でここまでの結果を出せると思っていましたか?

「マルクにとっては完ぺきなレースウイークになりましたね。昨年、Moto2の最有力候補といわれてチャンピオンを獲得したときもそうでしたが、今回もプレッシャーを見事にはねのけ、自分の走りに集中してくれました」

−一方、ペドロサ選手は中盤までレースをリードし、2位でチェッカー。Repsol Honda Teamにとって貴重な1-2フィニッシュになりました。

「全くその通りですね。ダニにとって、このサーキットは特に第1セクションが苦しかったのですが、それでもすばらしいライディングをみせてくれました。レース終盤のちょっとしたミスさえなければ、最終ラップの最終コーナーまで激しいバトルが続いていたでしょうね。2010年のインディアナポリスGP以来、アメリカのレースでHondaが6戦連続の優勝を達成できたことも、とても誇らしく思っています」

−レースでは、マルケス選手はリアタイヤに硬い方のコンパウンド、ペドロサ選手は柔らかい方のコンパウンドを選択しました。これがレース結果にもある程度の影響を及ぼしたのでしょうか?

「ダニとマルクはライディングスタイルも異なりますからね。この選択でそれぞれ正解だったので、チームスタッフたちは適切な判断をしたと思います」

−マルケス選手は決勝レースの戦略も見事でしたが、土曜日の予選では一番最後にピットアウトし、15分のセッション中、一度もタイヤを交換しませんでした。シーズン序盤にしてすでに自信たっぷりとも見えます。

「本当にすばらしい才能の持ち主ですよ。さらに彼のチームスタッフは、MotoGPの経験が豊富な人材ばかりなので、チーム力は極めて高い、といっていいでしょう」

−今回の結果もさることながら、マルケス選手はMoto2の初年度よりもミスなく走っています。これはすごいことなのではないでしょうか。

「ここまでの序盤2戦は、上々の出来です。あの若さの中に、すでに成熟したものを持っているのでしょう。とはいえ、まだMotoGP初年度です。これから学ぶべきことは、山のようにあります」

−マルケス選手のライディングスタイルは、昨年引退したケーシ・ストーナー選手と比較されることも多いようです。今後、マルケス選手がMotoGPで初走行する各サーキットでは、マシンセットアップ用に、ストーナー選手のデータを利用していくのですか?

「選手によって、癖やライディングスタイルは千差万別です。マルクのライディングは非常にアグレッシブで、ときにケーシーの走りをほうふつとさせますが、でも、実はそれは似て非なるものなのです。もちろん過去のデータ蓄積は、ライダーの特性にかかわらず非常に重要なので、ベースセットアップには非常に有用で参考になります」

−今回のアメリカズGPまでの過去30戦では、優勝したのはストーナー選手かペドロサ選手、あるいはホルヘ・ロレンソ選手(ヤマハ)の3人だけでした。今回のマルケス選手の優勝は、チャンピオンシップにとってもいい結果、といえそうですね。

「昨年はダニとケーシー、そしてロレンソ選手がシーズンをリードし、スリリングなレースを繰り広げていました。ケーシーと入れ替わりに早速新たな優勝候補が登場したのは、おもしろいですね。Hondaにとってはもちろんですが、ファンの皆さまにとっても、これはすばらしいことだと思います」

−今回の会場、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)はHondaと相性がいい、という意見に対しては、どう思われますか?

「概して、ストップ・アンド・ゴータイプのサーキットでは、RC213Vはいい結果を残せます。COTAのコースも、そういった特徴がありますからね」

−次の第3戦スペインGPに向けた意気込みを聞かせてください。

「ヘレス・サーキットでは3月に事前テストを行いましたが、天候があまり芳しくなく、ややフラストレーションのたまる3日間になりました。ヘレス・サーキットは、ダニをはじめ、ロレンソ選手や(バレンティーノ)ロッシ選手(ヤマハ)も得意とするコースです。マルクは苦戦を強いられるかもしれませんが、それもルーキーが乗り越えるべき試練の一つです。ダニとマルクのホームGPなので、我々も最高の結果を得られるように全力で戦います。皆さまの温かい応援は、選手と我々にとってなによりの励みです。ご声援をよろしくお願いします!」