HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート
vol.109

マルケスが史上最年少チャンピオン獲得、Hondaは三冠を達成!

波瀾万丈のレースが続いた2013シーズンも、ついに最終戦。第18戦バレンシアGPで雌雄を決するときを迎えました。近年にないほどの大観衆が詰めかけたバレンシア・サーキットは、レースウイークのセッションを重ねていくたびに緊張度が増し、興奮も高まっていきました。そして11月10日の日曜日の午後2時、盛り上がりはピークを迎えました。30周にわたる激しい攻防の末、Repsol Honda Teamのマルク・マルケスは3位でフィニッシュ。フレディ・スペンサーの記録を上回る、史上最年少のライダーズタイトルを獲得しました。チームメートのダニ・ペドロサは激しい優勝争いを繰り広げ、2位でチェッカー。両選手の活躍により、Hondaはコンストラクターズタイトルも獲得しました。
 長く苦しい一年間の戦いを、ライダーとスタッフが全力を尽くして戦い抜き、最高の結果を手にした最終戦と2013年シーズンを、チーム代表のリビオ・スッポが振り返ります。

−最終戦バレンシアGPは、Repsol Honda TeamとHRCにとって最高の形で締めくくられました。マルケス選手は年間総合優勝を達成し、Hondaはコンストラクターズタイトルを獲得。日本GPですでに獲得したチームタイトルを加え、これで三冠を制覇したことになります。今の気持ちをお聞かせください。

「今回の第18戦は、本当に忘れられないレースウイークになりました。シーズンすべての目標を達成し、2011年以来の三冠獲得を達成できました。この成果をもって最終戦を締めくくることができたのは、本当に感無量です。HRCとRepsol Honda Teamがシーズンを通じて努力してきた結果が、ようやく報われました。HRCの全スタッフと我々を支えてくださった世界中のファンの皆さまやスポンサー様、そしてライダー全員に、心から感謝をしています」

−マルケス選手はレース人生で最も重要な今回のレースで、とてもリラックスしているように見えました。この精神的な強さが、チャンピオン獲得の重要な要素になったのでしょうか?

「マルクは、なかなかの役者っぷりですよ。内心ではとてもナーバスになっていたとしても、まあそうなるのも当然ですが、表面上は普段と変わらない明るい笑顔を決して絶やさないのですから。この一戦ですべてが決する、という状況は、精神的にとても過酷なものです。しかし、マルクはそのプレッシャーを立派にはねのけてくれました」

−この一年を振り返って、マルケス選手がルーキーイヤーでチャンピオンを獲得できそうだと実感したのは、いつごろなのでしょうか?

「(ホルヘ)ロレンソ選手(ヤマハ)とダニが負傷したあとも、マルクは大きなケガを負うことなく戦い続け、ザクセンリンク(第8戦ドイツGP)からブルノ(第11戦チェコGP)まで4連勝を飾ったころに、ひょっとしたら実現可能かもしれない、と思い始めました。しかし、いつも申し上げるように、レースは最後までなにがあるか分かりません。我々も、そう考えながらずっと戦ってきました」

−今シーズン、Repsol Honda Teamにとって最高の思い出を挙げるとすれば?

「いい思い出がとてもたくさんあるので、どれか一つに絞るのはとても難しいのですが、Repsol Honda Teamの両選手が5度も1-2フィニッシュを飾ってくれたことは、とても印象深いです。今後、繰り返そうと思っても、なかなか容易に達成できることではないかもしれません」

−全18戦を終えてランキング上位3選手の獲得ポイントは、マルケス選手334点、ロレンソ選手330点、ペドロサ選手300点、と、いずれも300点を上回りました。この数字にも、今年のハイレベルな戦いがよく表れているように思えます。

「今シーズンのマルク、ダニ、そしてロレンソ選手は、まるで別次元にいるようでしたね。この3選手はいずれもすばらしい速さで、安定感も高く、優勝を目指して繰り広げる彼らのバトルはとてもエキサイティングでした。数々のすばらしいレースを我々に見せてくれた彼ら3選手に、心から感謝をしたいと思います」

−今シーズンのマルケス選手は数々の記録を塗り替えてきました。全18戦中で6度の優勝を含む16表彰台、そして334ポイントという総獲得点数は最高峰クラスのルーキーとしては史上最多です。次はなにを更新してくれるのでしょうか?

「これ以上は望めないくらいの結果ですよ。ルーキーらしからぬ実に見事な成績、というほかありません。マルクになにか改善すべき点があるとすれば、スタートでしょうか。これは彼の今季唯一の弱点でしたからね」

−ところで、最終戦翌日から現地では事後テストが行われました。どのようなメニューに取り組まれたのでしょうか?

「マルクとダニはともに2014年型RC213Vのテストを行い、技術者たちにさまざまな情報をフィードバックしました。RC213Vは現状でも非常に戦闘力が高く、さらに改善を重ねていくのは重箱の隅をつつくような作業なのですが、それでもやはりよくしていかなければならない個所というのは常に存在するのです。Hondaの技術力でそれを実現するべく、技術者たちは全力を傾注しています。また、2014年のルールから、マニエッティ・マレリ社のECUを使用することが必須となり、燃料の容量も20Lへとさらに厳しくなります。高いハードルでも、全員が力を結集すれば必ず実現できると我々は信じています。この一年間、皆さまの力強い応援は本当にありがたく、我々が三冠を達成するなによりの後押しになりました。来るべき2014年シーズンも、我々は今年以上の成果を目指して全力で戦い続けます。この一年の皆さまの声援に御礼を申し上げるとともに、今後ともさらなる応援を何卒よろしくお願い申し上げます」