HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート
vol.106

ペドロサの圧勝、マルケス2位表彰台で今季9度目のダブル表彰台

アジア環太平洋をまわる3週連続開催レースの1つ目、第15戦マレーシアGPがセパン・サーキットで開催されました。MotoGPの人気が年々高まるマレーシアは、今年、過去最高となる12万6917人(3日間合計)もの観客を動員しました。大勢のファンがかたずをのんで見守る日曜日の決勝レースでは、Repsol Honda Teamのダニ・ペドロサが持ち前の力強いライディングを存分に発揮し、20周の戦いを圧倒的にコントロール。精神的な強さを見せつける走りで、フランスGP以来の今季3勝目を達成しました。チームメートのマルク・マルケスも、現実味を増してきた最年少チャンピオン獲得を見すえる走りで2位表彰台を獲得。Repsol Honda Teamは、シーズン5度目の1-2フィニッシュで9度目となるダブル表彰台を達成しました。しゃく熱の厳しい温度条件や肉迫する強力なライバル勢など、一瞬たりとも気の抜けない戦いをチームと選手が一丸になって乗りきり、目指す成果を手にした第15戦のレースウイークについて、HRCチーム代表のリビオ・スッポが語ります。

−今回のマレーシアGPは、前戦アラゴンGPの不運を吹き飛ばす1-2フィニッシュでした。緊張感の絶えないレースウイークだったのではないでしょうか?

「アラゴンGPの残念な結果をぬぐい去るべく臨んだ今大会は、すばらしいレースウイークになりました。今シーズン5度目となる1-2フィニッシュを達成してくれたダニとマルク、そしてチーム全員の努力に心から感謝をしています。ダニは完ぺきなレース運びで、セパン2年連続優勝。マルクは破竹のルーキー新記録で連続表彰台。両選手ともに、申し分のない格別な内容でした」

−今回のレースでは、マルケス選手が(ホルヘ)ロレンソ選手(ヤマハ)を相手に激しいバトルを繰り広げ、決勝レースを大いに盛り上げました。マルケス選手はプレッシャーを意識せず、のびのびと戦っているように見えます。

「マルクはまだ20歳という若さですが、すでに125ccとMoto2と2つの世界選手権のタイトルを獲得しており、精神的な重圧をはねのけるすべも心得ています。それに彼は、骨の髄までライダー魂が染みこんでいる選手で、ライバルたちとのバトルが大好きなのです。マルクが多くのファンの方々から愛されるのは、そういうところにも大きな理由があるのでしょうね」

−現状のHondaは、ライバル陣営に対してアドバンテージがあるように見えます。リビオさん自身はこの状況をどう考えていますか?

「日本で開発を進めるHRC、そしてレース現場にいるRepsol Honda Teamの技術者やスタッフたちが、たゆまぬ努力を続けてきた結果、現在のRC213Vは非常に高い戦闘力を備えるマシンに仕上がっています。ストレートで速く、ブレーキングで強く、そしてコーナー立ち上がりで素早く加速していく性能は、着実な進化を続けています。しかし、ライバル陣営はいずれも手強く、気を抜くことは一瞬たりとも許されません。さらに来年は燃料の容量が20リットルに縮小され、ECUもマネッティ・マレリ社の統一ハードウエアになるので、今後もしっかりと気を引き締めてマシン開発を進めていきます」

−次戦オーストラリアGPの舞台、フィリップアイランド・サーキットは、ケーシー・ストーナー氏が昨年まで6年連続優勝を達成していたコースです。また、マルケス選手にとっては、結果次第でチャンピオン獲得の可能性があります。レースに向けた抱負をお聞かせください。

「フィリップアイランドはすばらしいサーキットです。ケーシーはRepsol Honda Team時代に2勝を挙げ、2011年にはここでチャンピオンを獲得してくれた思い出深いサーキットなんです。実を言うとダニは、フィリップアイランドをあまり得意としていませんが、今の彼なら力強い走りをしてくれると思いますし、一方、マルクは、彼のライディングスタイルによく合っているサーキットだと思います。マルクにとっては、タイトル獲得の可能性という初の“マッチポイント”を迎えるわけですが、いつもと同じようにレースを楽しみながら全力を尽くして走りきることが、最大にして最高の戦略だと考えています。あとは、天候がよくなることを祈るのみです。一方、ダニにもまだチャンピオン獲得の可能性は残されており、ランキング2位は目の前に迫っているので、全力で戦ってほしいと思います」

−マレーシアGPの土曜日に転倒して右足首を負傷したLCR Honda MotoGPのステファン・ブラドル選手はマレーシアで手術を行いました。オーストラリアGPに参戦することは可能そうでしょうか?

「医師の皆さまのご尽力で、ステファンはオーストラリアへ行くことができそうです。とはいえ、実際に走ることができるのかどうかを判断するのはまだ時期尚早です。チーム監督のルーチョ(チェッキネロ氏)と相談して、最善の判断をしてほしいですね」

−ブラドル選手が走れない場合、ケーシー・ストーナー氏が代役参戦をする可能性はあるのでしょうか。

「我々としては、それは検討していません。まずはステファン自身に全力を尽くしてもらうつもりですが、走行が不可能になったとしても、ケーシーに代役で走ってもらおうとは考えていません。そもそも引退以来、彼がMotoGPマシンで走ったのは、ツインリンクもてぎでの2回のテストだけなのですから。引退後もケーシーの人気はいまだに非常に高く、地元のフィリップアイランド・サーキットを走ってほしいという声があるのも承知をしています。しかし、MotoGPは十分な準備をしていない状態で簡単に参加できるようなものではありません。レースウイークには、ケーシーはもちろんサーキットへやってきますし、史上最年少での殿堂入り“MotoGPレジェンド”の贈呈式も予定されています。また、ワイン・ガードナー氏、ミック・ドゥーハン氏といった伝説のチャンピオンたちとともに、パレードラップでファンの皆さまの前に姿を現すことになっています。従って、ケーシーがステファンのマシンに乗ることはありません。連戦となる今週末も、我々は最高の結果を目指して全員が力を合わせ、全力で戦います。引き続き、皆さまも応援をよろしくお願いいたします」