HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート
vol.105

マルケス6勝目。シーズン終盤に向け、ランキング首位の座を固める

第14戦アラゴンGPは、今季3度目のスペイン開催。Repsol Honda Teamのダニ・ペドロサとマルク・マルケスの両選手にとってホームGPとなる重要なレースです。ペドロサ、マルケス両選手は金曜のフリープラクティスから快調な走りを披露。決勝レースに向けて着々とセットアップを積み重ね、準備を整えていきました。土曜の予選では、マルケスがポールポジション。ペドロサも僅差の3番手タイムで、ともにフロントローを獲得しました。
 9月29日(日)午後2時に始まった決勝レースでは、両選手は序盤からトップグループを形成し、優勝を目指して力強いライディングを続けました。ところが6周目、ペドロサのマシン後部とマルケスのマシンがごくわずかに接触した際に、ペドロサのマシンに運悪くメカニカルトラブルが発生してしまい、ペドロサは転倒を喫しました。一方のマルケスは13周目にトップに立つと、以後は後続の選手を振りきってトップでチェッカー。チェコGP以来4戦ぶりとなる今季6勝目を達成しました。だれも予想しなかった出来事で明暗が分かれる結果になった今回のレースについて、チーム代表のリビオ・スッポが解説します。

−アラゴンGPではマルケス選手が勝利を収め、チャンピオンシップポイントは2位に39点の差を広げました。一方、ペドロサ選手は6周目の接触により、リタイアとなってしまいました。今回のレース結果について、まずはどのような印象をお持ちですか?

「今回の第14戦は、明暗の分かれるレースになりました。ダニの結果については、これは本当に残念に思います。すばらしい走りで、勝てる可能性も十分にあったレース運びでした。ところが6周目に、ダニの背後に接近しすぎていると判断したマルクが、接触を回避しようと最善を尽くし、自らレーシングラインを外し、回避ルートを取ったのですが、それでもごくわずかに接触が発生してしまいました。おそらくはマルクのクラッチレバーとダニのスイングアームが接触したと思われるのですが、その際に後輪の速度センサーのケーブルが切断され、トラクションコントロールが効かなくなってしまいました。実は、別系統からトラクションコントロールを操作するバックアップシステムがあるのですが、たまたま今回に限っては、切断事象の発生から次のスロットル操作までの間隔があまりに短く、バックアップシステムへの切り換えが上手く作動しませんでした。起こりうる可能性としては非常にまれというしかないアクシデントで、過去には一度として発生したことはなかったのです。とはいえ、今後はこのようなことが二度と起こらないよう、我々はすでに対策の検討を開始しています」

−今回の出来事により、最終戦バレンシアGPでRepsol Honda Teamの両選手がチャンピオンを巡って雌雄を決するという、HRCにとって夢のようなレースが実現する可能性は、遠のいてしまいました。

「いいえ、2013年のレースはまだ4戦も残っています。ダニはそのすべてに勝つ可能性もあるのです。シーズンは、まだ終わっていませんよ」

−速度センサーのケーブルがあのような場所に露出していたことが問題だったのではないか、という意見もあるようです。今後は、ケーブルの取り回しを変更するのでしょうか?

「後輪の速度センサーケーブルは、20年以上前からずっとあの位置に取り付けていますが、これまでに問題が発生したことは一度もありませんでした。しかし、今回の出来事により、現状のままではいけないということが判明したわけです。なにより最優先すべきは、ライダーの安全なのですから。従って、この問題を解決するために全力を尽くして迅速な対応をとっているところです」

−シーズンは残り4戦で、次からマレーシア、オーストラリア、日本の3連戦を迎えます。意気込みをお聞かせください。

「先ほどもお話した通り、まだまだシーズンは終わっていません。(ホルヘ)ロレンソ選手(ヤマハ)が手強いことは我々も十分に認識しています。残り4戦は、ダニとマルクを全力で支えていきます」

−アラゴンGPでは、(アルバロ)バウティスタ選手(GO & FUN Honda Gresini)と(ステファン)ブラドル選手(LCR Honda MotoGP)もすばらしいレース内容で、(バレンティーノ)ロッシ選手(ヤマハ)を相手に最後まで激しい表彰台争いを繰り広げました。彼らのパフォーマンスはどんなふうにご覧になりましたか?

「両選手とも、とてもよくがんばってくれたと思います。彼らの活躍により、ファクトリーチーム以外のRC213Vも非常に高い性能を備えていることが示されたのではないでしょうか。ロッシ選手を打ち負かすのは、もちろん容易なことではありません。それでもアルバロとステファンは最後まで表彰台を争うすばらしい走りを披露してくれましたし、我々はそれをとても誇らしく思っています。シーズン残りの4戦も、Honda勢全員は一丸となって勝利を目指し、戦い抜きます。皆さまの応援が我々にとって最大の励みです。今後も熱い声援を、よろしくお願いいたします」