HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート
vol.104

マルケスがランキング首位を維持。ペドロサは34点差で追う

第13戦サンマリノGPの舞台は、ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリ。Hondaの、そして二輪ロードレース界の将来を担う逸材と期待されながら、2011年にレース中のアクシデントで早世した故マルコ・シモンチェリ選手をたたえ、12年からサーキット名称にその名前が追贈されています。今年のレースには8万4000人を超す多くのレースファンが来場し、選手たちの熱い戦いを見守りました。

 日曜の決勝レースでは、いつものようにRepsol Honda Teamのマルク・マルケスとダニ・ペドロサがトップグループを快走し、多くのファンを喜ばせました。両選手はレース終盤まで息詰まるバトルを展開。最後はマルケス2位、ペドロサ3位でチェッカーフラッグを受けました。シーズン終盤戦に向けて緊張感が高まる中、高い水準のチームワークで戦い抜いたこの第13戦の戦い、そしていよいよ迫りくる終盤5戦について、チーム代表のリビオ・スッポが語ります。

−今回のレースではホルヘ・ロレンソ選手(ヤマハ)が優勝する一方、マルケス選手は2位、ペドロサ選手が3位と、今季8度目のダブル表彰台を達成しました。そして、チャンピオンシップポイントは首位のマルケス選手が、同ポイントで並ぶペドロサ選手とロレンソ選手を34ポイントリードする状況になっています。このような結果となった今回のレースウイークを振り返って、まずはいかがですか?

「決勝レースではロレンソ選手が圧倒的な速さを発揮しましたが、とはいえ、総じて非常に充実したレースウイークだったと思います。マルクとダニは互いに一歩も引かず、手に汗を握る2位争いを繰り広げてくれました。次のレースで再び優勝を勝ち取るため、さらにもう一押し、がんばりたいと思います」

−ここまでの13戦を振り返れば、マルケス選手、ペドロサ選手、そしてロレンソ選手の3人が表彰台を占めたのは7戦。しかも、インディアナポリスGP以降の後半戦は、この3選手以外のライダーは表彰台を獲得できていません。この推移を見ると、マルケス選手が今年の年間総合優勝に手を伸ばせる距離に迫っている一方で、ペドロサ選手とロレンソ選手は34ポイントを詰めるのが難しそうにも見えます。ここから先の5戦はどのような展開になりそうでしょうか?

「シーズンはまだ5戦もあります。チャンピオンシップの行方はまだまだ分からないと思いますよ。マルク、ダニ、そしてロレンソ選手はクラス全体の中でも抜きん出た走りをしていますので、今後のレースもこの3人のだれが勝ってもおかしくないと言えます。最終戦まで、彼ら3選手は激しい攻防を繰り広げると思います。ファンの皆さまにとっても、息つく暇のないレースが今後も続く、すばらしいシーズンといえるでしょうね」

−今回のレースで、マルケス選手はチャンピオン獲得を意識し始めていると発言する一方、今の全力で戦うスタイルを崩すつもりもなさそうです。スッポ代表の目から見て、どのような戦略を採ることが最善だと思いますか?

「今回の第13戦でも、マルクは十分に賢明な状況判断でレースを戦いきったと思います。金曜から土曜までのフリープラクティスでは終始トップタイムで、土曜午後の予選でも過去の最速記録を更新する走りでポールポジションを獲得してくれました。しかし、決勝レースでロレンソ選手が思った以上に速いことが分かると、無理に勝ちを狙いにいくリスクを冒さずに、しっかりと2位を獲得するという走りに切り替えてくれました」

−今後の5戦を見ると、ペドロサ選手は昨年、アラゴンGP、マレーシアGP、日本GP、バレンシアGPと、4大会で優勝を飾っています。逆転チャンピオンを狙える可能性は大いにありそうにも見えます。

「もちろんダニは最終戦まで、チャンピオンを狙って激しく追い上げてくるに違いありません。第8戦のザクセンリンクで肩を負傷してしまったことが彼の走りに影を落としていましたが、今では体調もよくなり、本来の走りが復活しています。これからは彼の得意とするサーキットが続くので、豊富な経験を生かし、きっとすばらしいレースをしてくれると信じています」

−ところで、第13戦のレースウイークは、ヤマハ陣営がシームレス・ギアボックスを投入したことが大いに話題になりました。この動向は、Hondaにとって脅威になりそうでしょうか?

「レースの世界は、技術開発の戦いの場でもあります。開発という名の競争でも、我々は真正面から戦い抜きます。ライバル陣営の強さは、自分たち自身の強さの証明でもある、と我々は考えていますから、いつでも戦いを受けて立ちますよ」

−今回の第13戦は決勝レース翌日にシーズン最後のマシンテストが行われました。どのようなメニューに取り組んだのでしょうか?

「マルクとダニは来年型のプロトタイプを試し、今年のマシン用の新たなスイングアームをテストしました。新しい部品については、2人からは好評で、技術者たちもいい手応えをつかんでいます。シーズン終盤の厳しい戦いに向けて、非常に有意義なテストとなりました。我々は総力を結集し、残る5戦を全力で戦っていきます。皆さまも、一層の熱い応援を何卒よろしくお願いいたします」