HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート
vol.102

マルケス5勝目。11戦中10表彰台の快進撃

 MotoGPシーズン後半戦は、戦いの場を再びヨーロッパに戻し、第11戦はチェコ共和国のオートモトドラム・ブルノ・サーキットで行われました。現地時間8月25日(日)午後1時から22周で争われたレースは、Repsol Honda Teamのマルク・マルケスとダニ・ペドロサが、レース序盤からハイレベルの走りで緊張感のあふれる戦いを繰り広げ、14万人を超える観客を魅了しました。終盤周にライバル選手をオーバーテイクしてトップに立ったマルケスは、ラスト4周でスパートをかけ、トップでゴール。第8戦から続く4連勝をあげました。一方、ペドロサも、鎖骨負傷のケガが完治していない状態にもかかわらず、マルケスの独走を阻止するべく最終ラップまで肉迫し続けましたが、0.313秒の僅差で2位チェッカー。この結果、Repsol Honda Teamはシーズン4度目の1-2フィニッシュというリザルトを得ました。ライバル勢優位とも言われた中、チームとライダーが一丸となって戦い抜いたこの週末の展開を、HRCチーム代表のリビオ・スッポが語ります。

−今回のチェコGP前には、Honda陣営は苦戦するのではないか、と語られていました。その理由は、オートモトドラム・ブルノ・サーキットはヤマハの得意コースで、しかも、ホルヘ・ロレンソ選手(ヤマハ)とバレンティーノ・ロッシ選手(ヤマハ)はサマーブレイク中の8月上旬にテストを実施していたから、というものでした。しかし、マルケス選手が優勝し、ペドロサ選手が2位フィニッシュという結果になりました。これだけのすばらしい結果を予測できていましたか?

「私は正直なところ、ブルノは必ずしもヤマハの得意コースというわけでもない、と考えています。一昨年と昨年は、Repsol Honda Teamの選手が勝利を挙げていますから。そして今年、マルクが優勝してくれたことで、我々は3年連続優勝を遂げたわけです。確かにロレンソ選手とロッシ選手は8月上旬に当地でテストをしていましたが、マルクとダニは彼らを打倒すべく、全力でRC213Vを乗りこなしてくれました。また、現場の技術者やメカニックたちを含め、全員が一丸となって戦い、我々はすばらしいシーズンを過ごしていると思います」

−今回のレースで、シーズン5勝目を挙げたマルケス選手は、ルーキーイヤーの最高勝利数更新という新記録をまたもや樹立しました。また、今シーズン10回となる表彰台獲得数は、ロッシ選手がHondaで最高峰クラスデビューを飾った年(2000年)の年間表彰台獲得数に並びました。マルケス選手がこれほど高い水準の走りを披露できるのは、どこに理由があるのでしょうか?

「彼がそれだけの才能の持ち主だから、ということが大きな理由ですが、さらに、プレッシャーを跳ね飛ばすマルクの性格も、非常に大きく寄与しているのだと思います。シーズン開幕当初から、『今年はルーキーで守るべきものなどなにもないのだから、あらゆる物事を謙虚に受け入れ、無心で学び取っていこう』という姿勢が今の好結果につながっているのだと思います」

−一方、ペドロサ選手は最後までマルケス選手にしぶとく食い下がり、約0.3秒差で2位に入りました。肩のケガは、どの程度回復しているのでしょうか?

「まだ完調ではありませんが、それでも以前よりはよくなってきています。マルクに注目が集まりがちですが、ダニの活躍と健闘も、もっと大いに評価されていいと思います。ザクセンリンク(第8戦)で負傷をしましたが、第9戦の復帰以来、“ネバーギブアップ”の精神で、本当にすばらしい走りを披露しています。昨年の後半戦のダニは無敵と言っていい状態でしたから、本当の勝負は、これからです」

−シルバーストーン・サーキットで開催される今週末のイギリスGPは、3週連続開催の3戦目です。意気込みをお聞かせください。

「昨年のレースは、ダニとケーシーがロレンソ選手の後じんを拝する結果でした。確かに昨年のイギリスGPのロレンソ選手は、勝つにふさわしい走りでしたが、今年は我々も負けません。ブルノに劣らないレースを披露できるよう、選手とチームの総力を結集して今週末の戦いに立ち向かいます。皆さまも、応援を是非ともよろしくお願い申し上げます」