モータースポーツ > ロードレース世界選手権 > Honda MotoGP 2013シーズン分析 > vol.1
宮城:転ぶというと、話は変わりますが、セパンテストでマルケスはたくさん転んでいましたが、全く影響しないですよね。トライしてチャレンジした末の転倒だからすべて分かっていますよね。訳がわからず転倒すると恐怖心が根づくこともありますが、そういう転倒ではない。
中本:転ぶ限界は少しずつ理解してきていますね。今のところフロントを巻き込んでの転倒で、リアを滑らせてとかハイサイドでというような転倒じゃないですから。
宮城:セパンのテストをコースサイドで見ていると、ヘアピンのあとの右・右の高速コーナーで、マルケスはだれよりも深いバンク角をしていた。一瞬回転が上がるんですよ、ミニバイクのように。そんなことをやっているのは彼だけでした。
中本:ええ。アクセルを開けているね、彼は。開けていてエンジン音は上がるけど、決して速くなるわけじゃないんです。それに、あんなに深いバンクだと滑るでしょ。でもよくコントロールしています。ケーシーはあそこであんなにバンク角深くなかった。だから車速が高い。
宮城:コントロールしている感じはあるんでしょうね、やってるぞと。
中本:そうですね。派手だしね。マシンを振り回して乗っている状態で、まだまだといえるけど、その状態で速いのでこれからが楽しみな選手ですね。
宮城:僕らからしては予想以上に速いという印象ですけどね。
中本:皆そういうけど、まだまだというのが僕の見方ですね。
宮城:決勝のスタート直後はやはり慎重になっているなと感じましたね。でもMotoGP初戦ですから。それに自由なラインが取れるテストと、他車がいて制約の大きいレースでは違います。
中本:それに、ペドロサを抜いたあと、56秒台後半までタイムが落ちていますからね。そこでタイムアップできるようだったら3位にはならなかったでしょう。まだそのレベルなんです。まあ、デビューレースで3位に入れたのはそこそこではありますけどね。
宮城:すごい結果です。
中本:ただ、チャンピオン争いに絡むには、ライバルが好調のときでもバトルして追い抜いていかなければならないですから。まだまだ経験が必要だと思います。タイヤがグリップダウンしてからどう走るか。レースが終わったときに一番前にいることはとても難しいことです。
宮城:確かにそうですね。
中本:でも、マルケスはなにかを持っていると思うし、日々学習しているから期待はありますね。
宮城:カタールで、ロッシに抜かれてチャージしてましたから、闘争心は高いですよね。
中本:それはレーサーだから当たり前のこと。課題は残り5周でタイヤが劣化したときからどれだけプッシュし続けられるかですね。ロッシに抜かれてタイムが上がった。だったら、その前からそのタイムで走れと言いたい。だからまだまだ走れていないってことですよ。
宮城:僕はペドロサの後ろに長く着きすぎたと思いますね。
中本:そうかもしれない。
宮城:要するに、自分のペースでなく、リアタイヤが滑って走れないペドロサのペースに合ってしまったのかなと。人のペースに慣れてしまい、一人になったとき「あれっ」となる。ルーキーにはよくあることですが。
中本:そうだね。さっさと前に出なきゃね。
宮城:ストーナーだったら、相手のコンディションを「これはまずい」と見抜いて、パッと追い越して状況を打開しますよね。
中本:そうですね。でもまあ、初レースだから。
宮城:僕らが期待しすぎなんですよ。でも、MotoGPのマシンに乗って5回目のオースティンのテストでトップタイムですから。これはすごい、と期待は高まります。
中本:いろいろ言ってきましたが、今シーズン中には勝ちますよ、マルケスは。そう思いますよ。でも転ぶだろうね。彼を支えるスタッフももっとしっかりさせなければ。
開幕戦でグリップが十分でなかったHonda。それを今後どのように修正するのだろうか。シャシーの問題なのか。私は立ち上がりでアクセルを開けたときのフィーリングも影響しているのかもしれないと感じていたので、中本氏にそれをぶつけてみた。
宮城:日曜日のレースで滑りやすかったのは、コーナーの立ち上がりでアクセルを開けにくいということも影響しているのでしょうか。
中本:それはないですね。Hondaのライダーからアクセルが開けにくいという話はありません。エンジン特性が関わるのは縦方向のスピニングで、カタールで出ていたのは横方向のスライドです。バンクした状態でのスライドはTC(トラクションコントロール)ではコントロールできませんからね。
宮城:なるほど。ヤマハはトップスピードは速くはないですが、コーナリングのボトムスピードを徹底して上げてきてますよね。セパンのテストで1コーナーの脇で見ていたら、ロレンソだけ2コーナーにかけてアクセルをちょっとしか足さないんです。それに対しHonda勢は、1コーナーでしっかりと減速するので、2コーナーにかけてわずか数10mですがアクセルをかなり開けていました。これはロレンソが、マシンの性能を引き出す走り方をしているともいえますが。
中本:そうですね。ロレンソは、コーナリングの速度を落とさずに走れれば速くなり、そうできなければライバルに引けを取るということを分かってるからだと思います。逆にヤマハ勢はストップ&ゴーのサーキットが比較的苦手。冒頭に言ったように、得手不得手があるということですね。得手を伸ばして勝つ。不得手も克服していきます。
宮城:カタールGPで、ステファン・ブラドル(LCR Honda MotoGP)は残念でした。フロントを巻き込んでの転倒。マルケスの前にMoto2でチャンピオンになり、先にMotoGPで走りはじめたのに、あとから来たマルケスがいきなりワークスチームに入ったわけですから。いいところを見せたいと燃えていたんでしょうけど。
中本:残念だったね。奮起を期待しますね。
宮城:アルバロ・バウティスタ(GO & FUN Honda Gresini)は、ブレーキがNISSINでサスペンションがSHOWA。ほかのマシンと違うわけで、使用されるマシンが少ないので情報も少ないと思いますが。
中本:それはないですね。NISSINのブレーキはペドロサもテストしていますし、いい状態ですよ。ネガはないし、ブレーキレバーの安定性はむしろいいです。サスペンションはキャラクターの違いがあるけどそれは好みもあり、ライダーがどういう風につくり込んでいくかですね。こだわりはないです。
もしかしたら、初開催のアメリカズGPでマルケスの勝利が見られるかもしれない。彼が、開幕戦で学んだものは大きい。ロッシを一度抜き、抜き返された。ペドロサの後ろに付いて長く走りもした。そのあとのペースアップがしにくいことも学んだ。スタートの緊張感も経験済みだ。Hondaの2013年シーズンを勢いづけるにも、早い段階での勝利は欲しいところ。いずれにしても、今シーズンは厳しいバトルが予想される。Honda勢がいかに戦うか、注目していきたい。
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