裕紀・貴晶・謙汰 頂点を目指せ!

Vol.15 中上貴晶・さらなる高みへ

「本当に、非常に長い23周でした」

10月14日のMotoGP第15戦日本GPのMoto2クラス決勝を終えた中上貴晶の第一声です。悔しさとほっとした気持ちが入り混じるような表情で、中上は7位で終えたレースを振り返りました。

この日の午後0時20分に始まった決勝レースで、中上は4列目11番グリッドからスタートしました。金曜日のフリー走行では、午前と午後のセッションを終えて総合8番手という滑り出しでしたが、土曜日はセットアップが思い通りの方向に進まず、当初狙っていたよりも低い位置から日曜日を迎えることになってしまいました。

土曜日の予選を終えて、チームと問題の解決策を相談し、日曜日朝のウオームアップ走行で試した方向性の感触はよく、前日の厳しい状態から抜け出せそうな手応えがありました。前向きな雰囲気でグリッドについた中上は、23周のレース開始を告げるレッドシグナル消灯と同時にクラッチミート。上々のスタートを切ります。

「一瞬、『フライングしたかな?』と思ってしまうくらい完ぺきなスタートで、周囲のだれよりも最初に動き出すことができました。でも、少し前にいた(マルク)マルケス選手のマシンが止まっていたので、ちょっとびっくりして十分に加速できませんでした。まずまずの位置で1コーナーへ飛び込んでいけて、2コーナーから3コーナーで内側に行って、ここで無理をするべきかどうしようか少し迷ったんですが、もてぎは特に序盤の数周が重要なので、進入で3台を抜き、しっかり順位を上げてオープニングラップから2周目に入っていくことができました」

8番手までポジションを上げた中上でしたが、2周目以降は思うようにラップタイムを上げていくことができず、歯がゆい走りが続きます。トップグループを構成する選手たちは、1分51秒台中盤から後半のタイムで周回していきましたが、中上は1分52秒台前半。ごくわずかずつとはいえ、トップ集団を目の前に捉えながら、じりじりと離れていく悔しい展開になります。

「トップ集団を追って必死に走っていたんですが、懸命に走り方を工夫してもなにをやっても、52秒台前半からタイムを上げられず、0.1〜0.2秒ずつ前から離されていったので、そういう意味では精神的に苦しく、非常に長いレースでした」

先頭集団からは離れてしまいましたが、終盤になっても中上は高い水準を保ったまま、一貫して1分52秒台前半をキープ。直前を走る選手とファイナルラップまで激闘を続け、7位でチェッカーを受けました。

「途中、90度コーナーなどで何度かフロントが切れ込んで転倒しそうになったのですが、なんとか免れて、最終的には7位。6位も十分に狙えた展開で、(シモーネ)コルシ選手を目の前に捉えながら、小さなミスの積み重ねで抜くことができず、7位で終わってしまったのは心残りですし、納得できない面もあります。でも、予選で抱えていた問題を解消して、自信を持ってレースに臨むことができました。予選直後の状態から考えるとワンステップもツーステップも進んだ状態で、昨日(土曜日)の最悪な状況からはい上がることができたのは、チームと自分にとって大きな手応えになりました。7位というリザルトは決して喜べませんが、今はこの結果をしっかりと受け止めて、今後の発奮材料にしたいと思います」

レースウイークの流れを振り返ったあと、「今回の出来は……、70%ですね」と苦笑を浮かべました。

「でも、今回は日本の皆さんの前で走ることができてうれしかったですし、この力を借りて残りの3戦、マレーシア、オーストラリア、そしてバレンシアの最終戦を戦い抜きたいと思います。今は非常に充実した気分ですが、今日の7位という結果には当然納得は全然できていませんので、この勢いでさらに上を目指し、自分のためにもチームの皆のためにも、残り3戦で絶対に表彰台を獲得したい。その気持ちが今は非常に高まっています」

「今回は70%の出来だった」と語る中上。日本からの連戦となる次の2戦、そして最終戦へと続く終盤3戦を、80%、90%、そして100%の状態までレベルアップさせるべく、その気持ちと視線は、すでに灼熱のマレーシアへと向かっています。

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