裕紀・貴晶・謙汰 頂点を目指せ!

Vol.14 中上貴晶・ヨーロッパでの暮らし

2012年のMotoGPシーズンはヨーロッパラウンドが一段落し、次戦はいよいよ日本GP。そしてそのあとは、マレーシア、オーストラリアと環太平洋を巡るレースが続きます。ヨーロッパを起点にレース活動を続けてきた日本人選手たちも、ようやく住み慣れた環境でレースができることになります。

ヨーロッパ生活が長い高橋裕紀(NGM Mobile Forward Racing)のイタリアでの暮らしは、シーズン初めに紹介済みなので、今回は中上貴晶(Italtrans Racing Team)に焦点を当て、彼のヨーロッパにおける日々の生活について少し話してもらいましょう。

中上が所属するItaltrans Racing Teamは、イタリア北部のベルガモに本拠を置いています。ベルガモはミラノの北東に位置し、スイス国境からも遠くない静かなたたずまいの街です。ここでチームオーナーの弟の家に一部屋を与えられ、中上はその家族とともに日々を過ごしています。

レースのない週は、「パーソナルトレーナーの所有するジムで、トレーニングを行っています」と中上は話します。

「天気のいい日は、マウンテンバイクで外へ走りに行くので、週5〜6日くらいはみっちりとトレーニングをしていますね。ウエイトトレーニングでは、ゴムチューブなどを積極的に利用して、インナーマッスルを鍛えることに主眼を置いています。見た目はあまり派手なトレーニングではないのですが、地味に疲れます(笑)。どれほど苦しくてもあきらめずに限界ギリギリまでがんばる、という意味では、メンタル面も鍛えられます。ランニングマシンを使うときでも、心拍数を測定しながら時間や速度をキッチリと決めるなど、トレーナーさんは科学的な方法でメニューを組んでくれているのだと思います」

トレーニング後は、ステイ先の家族と過ごしたり、彼らの友人と食事に出かけたりしていると、あっという間に一日が終わってしまいます。MotoGPアカデミーに在籍していた10代半ばから外国暮らしを始めた中上は、英語のコミュニケーションに不自由することはありませんが、ここイタリアでの生活では、当然ながらイタリア語が中心になるだけに、やや不便に感じることもあるようです。

「ベルガモでは、当然家族同士では、イタリア語で話しているので、少しずつ自然とイタリア語も理解できるようになってきました。でも、まだまだ話すことはできないので、僕がみんなと話すときは英語がメインですね。他人とのコミュニケーション以外にも、テレビで音楽番組や映画を見たり、毎週発売されるバイク雑誌を読んだりして、日々イタリア語に接することで、少しずつ理解できる幅が広がってきました。シーズン最初のころと比べれば、この数カ月でだいぶん理解できるようになってきた感触がありますね。でも、質問されてもまだ単語を並べて答える程度なので、シーズンが終わるころにはもっと上達していたいと思います」

親切な家族や友人たちに囲まれて充実した日々を送っている中上ですが、イタリアでの滞在は、趣味の面でも思わぬ効果があったようです。

「今は時間がなく本格的にプレイする機会がないですが、サッカーが好きで、小・中学校でサッカー部に所属していたので、ボールは今でも持っています。ステイ先の家族がみんなサッカー好きなので、セリエAの試合もよく見ますよ。こっちの選手のプレイは見ているだけで楽しいですし、観客の盛り上がりもすごいので、中継しているときはずっと釘付けですね。土地的にミラノに近いこともあって、家族全員がACミランのファンなので、自分も一緒になって応援しています。でも、僕はスペインにいた期間が長いので、本当はバルサ(FCバルセロナ)が一番好きなんですけどね(笑)」

10月12日(金)から、いよいよ日本GPが始まります。「日本からの3連戦は、とても楽しみですね」と、中上もホームGPの走行が今から待ちきれない様子です。

「3週連続の3連戦は初めての経験で、こんなに続けて走るのはなかなか得られない機会ですからね。日本はそろそろ本格的な秋ですが、翌週のセパンはとても暑いですし、フィリップアイランドはきっとすごく寒いので、体調管理にも十分に気をつけながら、ここからの3連戦を思いきり走りたいと思います!」

久しぶりに日本のファンの前に姿を現す中上貴晶と高橋裕紀、藤井謙汰(Technomag-CIP-TSR)、そして小山知良(Technomag-CIP)は、走り慣れたツインリンクもてぎを舞台に、己の能力を最大限に発揮しながら、きっと大活躍をしてくれることでしょう。

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