vol.89 | 最終戦は2選手ともに表彰台。2012年は2年連続で2タイトルを獲得! |
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vol.89 | 最終戦は2選手ともに表彰台。2012年は2年連続で2タイトルを獲得! |
2012年の最終戦となった第18戦バレンシアGPは、今季5度目のポールポジション(PP)から決勝に挑んだダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)が、シーズン最多勝利となる7勝目を挙げました。今大会は、3日間ともに不安定な天候で、フリー走行は3セッションともにウエットコンディション。予選はドライコンディションとなりましたが、決勝は再び雨。ウエットからドライへと変化する難しいレースとなり、ピットスタートから猛烈に追い上げたペドロサが独走で優勝しました。
今大会で現役を引退するケーシー・ストーナー(Repsol Honda Team)は、右足首のケガがまだ完治していないため、不安定な天候の中で慎重な走りとなりました。そのため予選は3番手、決勝もレインタイヤでスタートし、そのあとマシンチェンジを行い、一時的に16番手まで順位を落としますが、猛烈に追い上げて3位でフィニッシュ。引退レースを表彰台で締めくくりました。
以下、4位にアルバロ・バウティスタ(Team San Carlo Honda Gresini)。5位にはHondaエンジン搭載のCRTマシンで出場のミケーレ・ピロ(Team San Carlo Honda Gresini)で、上位5位までにHonda勢が4台というすばらしいリザルトで、シーズン最後のレースを締めくくりました。
Repsol Honda Teamとしては、両選手が表彰台に立つのはシーズン8度目。この結果、Hondaは最高峰クラスで2年連続、通算19度目、全クラスを通じて通算61度目のコンストラクターズタイトルを獲得し、Repsol Honda Teamのチームタイトルに続き2冠を制してシーズンを終了しました。
全18戦を終了したHonda勢は、11月13日から2日間、バレンシアで行われる合同テストに参加し、2013年のスタートを切ります。最終戦を終えた中本修平HRCチーム代表に、最終戦バレンシアGPを振り返ってもらいながら、来季の抱負を語ってもらいました。
「今年は天候に恵まれない大会が多く、今大会も不安定な天候となりました。しかし、ここまで不安定なコンディションになるとは思ってもいませんでしたし、タイヤの選択が本当に難しいレースでした。そういうレースで優勝して、コンストラクターズタイトルも獲得することができました。個人タイトルは獲得できませんでしたが、チームタイトルと合わせて2冠を達成したことはうれしいです。ダニがシーズン最多勝利の7勝、ケーシーが5勝して、Hondaとしては、通算12勝を挙げることができました。今年は、シーズン開幕前に、レギュレーションの変更があり、タイヤの変更もあって、マシンを一から作り直さなくてはなりませんでした。そのため、シーズン前半は、我々もライダーも苦労しましたが、後半戦は、ライバルに対してアドバンテージを築くことができました。今大会は、来年に向けて最初のレースでもありましたし、不安定なコンディションの中でダニが勝ってくれました。とにかく、こういう難しいレースをものにすると、チームのモチベーションがすごく上がります。今回は、ダニの判断がよくて、ピットスタートにはなりましたが、そこからすばらしい追い上げをみせてくれました。見ていて、とても気持ちのいいレースでしたし、来年の3冠制覇に向けて、希望が持てるレースになりました」
「タイヤの選択はライダーの判断です。我々は、ダニとケーシーに、グリッド上で『スリックでもいけるよ』という情報を与えました。しかし、サイティングラップの状態では、まだスリックは早いと判断したんでしょうね。ダニは、グリッドで前後ハードのレインにチェンジ。ケーシーは、フロントにハード、リアにソフトのレインをチョイスしました。ダニは、スリックではグリップしない路面状況でしたので、まず、レインでいこうと決めました。しかし、ウオームアップラップで、この状況ならスリックでいけると判断してピットに戻ってきました。ダニだけではなく、アルバロ、ニッキー・ヘイデン(ドゥカティ)、カル・クラッチロー(ヤマハ)も、マシンチェンジしてピットスタートとしました。本当に難しいコンディションでしたね。一方のケーシーは、右足の状態がよくなかったことと、これが最後のレースだということで、慎重でしたね。レインタイヤを選択してスタートしました。そして、路面がどんどん乾いていった5周目にマシンをチェンジしました。最終的な結果は、スリックでスタートしたダニが優勝、レインタイヤでスタートしたグループでは、ケーシーの3位が最高位。スタートした時点では再び雨が降る可能性がありましたが、我々のインフォメーションは間違っていなかったのです。まぁ、最後はライダーの判断になりますが、2人ともスリックでグリッドに並んでいたら、どんなレースになっていたんだろうと思いますね」
「ケーシーの言う通りですね。これが引退レースではなかったら、こういう天候こそ、思いきりのいいケーシーの速さが際立ったはず。最後のレースで、右足の状態も完全ではなかったですし、ケガをして終わりたくないという気持ちが強かったんじゃないかなと思います。ですから、中途半端なコンディションになったフリー走行は、本当に確認程度の走行だけでした。そのため、ちゃんとしたデータが取れず、ドライコンディションになった予選では、『あそこが悪い、ここが悪い』と文句ばっかり言うことになりました(笑)。フリー走行は、スリックで走れるチャンスもありましたし、そういうときにしっかり走っていればこういうことにならなかったはずです。でも、そういうところも、ケーシーらしいなぁと思うエピソードでした。決勝では、マシンをチェンジして、しばらくはそれほどペースが上げられなかったですが、路面が乾いてからの後半はすばらしいペースでした。アルバロが見えてきてからは、一気にタイムが上がって表彰台に立ちました。優勝して引退というのが一番格好よかったと思いますが、表彰台に立って引退することができてよかったんじゃないかなと思いますね。まだまだやってほしかった。まだまだたくさん勝ってチャンピオンを獲得してほしかったですが、これもケーシーが決めたことですからね。彼の生き方を尊重してあげたいです。レースを終えたあと、彼に『お疲れさま』と声を掛けたら、『ああ、これでやっと明日から時間に縛られずに生きていける』って言っていました(笑)」
「今年のダニは、ケガもなく一年を戦えましたし、これまでシーズン4勝だった優勝記録も7勝に伸ばせました。ウエットコンディションでも初めて優勝しています。そして今回はピットスタートからの追い上げで優勝しました。昨年は、なにをどうやってもケーシーにかなわないという気持ちがどこかにあったと思うのですが、今年は、ケーシーにもホルヘ(ロレンソ、ヤマハ)にも負けないという自信をつけましたね。それだけに、最低重量の変更やタイヤの変更のために、前半戦でつまずいたのが本当に悔しいです。そのために個人タイトルは獲得できませんでしたが、後半戦の走りができれば、来年は絶対にチャンピオンは獲得できると確信しています。これから来年に向けてのテストが始まりますが、ダニには、これまで以上に、ウインターテストをしっかりやってもらいますし、我々も、今年の悔しさをぶつけたいですね」
「あの追い上げは、なんなんだろうって感じでしたね(笑)。ほかの選手にはない”何か”を持っている選手なのかもしれません。本当に楽しみです。今年はステファン(ブラドル、LCR Honda MotoGP)も成長しましたし、アルバロもやっとうちのマシンのパフォーマンスを引き出せるようになってきました。来年が本当に楽しみですね。11月13日から行われる2日間のテストは、来年に向けてとても重要なテストになりますので、来年の3冠制覇に向けてしっかりとメニューを消化していきたいです。とにかく、最終戦を優勝で終えられて、気持ちよく来年に向けたスタートを切ることができました。来年の今ごろは、3冠達成を祝福していたいですね」
「2012年のチャンピオンシップは終わりましたが、来年に向けて、テストが始まります。これがとても重要になるので、しっかりデータを収集して来年のマシン作りにつなげていきたいです。休めるのはまだまだ当分先のことです。Hondaファンの方々には、今年一年、応援していただき、本当にありがとうございました。これからも全力を尽くしますので、引き続き、応援お願いいたします」