HRCチーム代表 中本修平 現場レポート
vol.83

ペドロサが接戦を制し2連勝。今季3勝目を獲得!

 インディアナポリスGPからの連戦となった第12戦チェコGPは、予選3番手から決勝に挑んだダニ・ペドロサ(Repsol Honda team)が優勝、インディアナポリスGPからの2連勝と今季3勝目を達成しました。レースは、ポールポジションスタートのホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)選手との一騎打ち。前半はロレンソ選手、後半はペドロサが首位を走り、最終ラップにロレンソ選手が逆転。しかし、最終コーナーでペドロサが再度逆転するというスリリングな戦いでした。この優勝で、ペドロサの総合2位は変わらずも、総合首位のロレンソ選手とのポイント差を18から13へと縮めることに成功し、チャンピオン獲得に向けて、大きな一歩となりました。今大会直前には、インディアナポリスGPで右足首を負傷したケーシー・ストーナー(Repsol Honda team)が、手術のために欠場を決めました。Repsol Honda Teamとしては、ディフェンディングチャンピオンを欠く大会となりましたが、ペドロサの2連勝が、チームの士気を高めることになりました。

−最終ラップまで息が詰まる戦い。ハラハラ、ドキドキのレースとなりました。前半はロレンソ選手、後半はペドロサ選手が首位を走り、予想通り、最終ラップの対決になりました。その最終ラップの戦いは、ロレンソ選手に抜かれますが、抜き返して優勝という、力強い走りでした。まずは、今大会のペドロサ選手について、感想を聞かせてください。

「抜かれたときは、正直、だめかなと思いましたね。しかし、最終コーナーで並び、そして抜き返しました。ダニのあのようなレースは初めて見ましたし、すごくうれしかったですね。よくやったという気持ちでした。今回は、ケーシーが手術のために欠場することになりました。その時点で、この2人の一騎打ちになると思っていましたし、その通りの戦いになりました。ブルノは、昨年はケーシーが優勝しましたが、これまでは、ヤマハが好リザルトを残しているサーキットですからね。後半戦の中では一番厳しいレースになると思っていましたし、そこで勝てたことがなによりもうれしいですね。前半はホルヘがペースを上げていきます。でも離せません。それを見ていたダニは、ホルヘのペースがそれ以上は上がらないのを見て、前に出てペースを上げていきます。しかし、引き離せません。結局、最終ラップの戦いになっていくのですが、ダニのコメントにもあるように、中盤セクションはホルヘが速く、そのほかではダニにアドバンテージがありました。結果的に、それが優勝につながりましたね。とにかく、今までのダニにはない勝ち方です。強さを見せてくれました」

−予選では、転倒を喫して3番手でした。転んだあと、すぐにペースを上げられないというのが、ペドロサ選手のウイークポイント。今回も、フリー走行では圧倒的に速かったのですが、予選で転倒してからなかなかペースを上げられませんでした。決勝に向けて、これで勝てるのだろうかと不安になりましたが……。

「ダニは、セッティングがきっちり決まると、誰もかなわない速さを見せてくれます。対照的に、ちょっとでも不安があると、なかなかペースを上げていけません。予選の転倒はスローコーナーでしたし、それほど影響はないと思いましたが、フリー走行のベストタイムを更新できませんでした。どうしてだろう?と思っていたところ、乗り換えたマシンはチャタリングが出てタイムを出せなかったんだと言います。本来、2台ともに同じセッティングにしていますし、できているはずなんですけどね。ちょっとしたことなのですが、今回は、それができていませんでした。ダニのマシンはラグナセカの第10戦アメリカGPからニューマシンになっています。ラグナセカでは天候が不安定だったことと、セットアップの方向性をちょっとミスしたことから、3位でした。このときの反省を生かし、インディアナポリスGPではセットアップを修正して優勝することができました。今回は3戦目ということで、かなりまとまってきたと思っていたのですが、まだまだでした。もう少し、細かいところを詰めていかなくてはいけないということを感じましたね」

−今年はチャタリングに苦労するレースが多いのですが、ニューシャシーになって、かなり改善されているように感じます。今回、ペドロサ選手が予選で乗り換えたマシンに発生したチャタリングについては、どう分析していますか?

「予選で乗り換えたマシンも、セッション終盤には修正できて、ほぼ問題は解消しました。まったくないという状態ではないですが、ブルノは、シーズンを通じて最もチャタリングに悩まされるサーキットですからね。そこで、ここまで走れましたし、ホルヘに勝てたということは、これからの戦いに向けて、大きな自信になりましたね。ニューマシンになってまだ3戦を終えたばかりです。これからもいろいろ問題はあると思いますが、ほぼベースのセッティングが出ているので、細かい修正で対処していけると思います」

−12戦を終えて、Repsol Honda Teamは、コンストラクターズとチームポイントはライバルをリードしています。個人タイトルでは、ロレンソ選手が245点。ペドロサ選手が232点。欠場したストーナー選手が186点。チャンピオンシップは、ストーナー選手の欠場で、ロレンソ選手とペドロサ選手の一騎打ちとなりました。HondaとしてはアメリカGPからの3連勝、ペドロサ選手としてはインディアナポリスGPから2連勝で上昇ムードだと思うのですが……。

「ホルヘは強いライダーですからね。彼に勝つのは容易ではありません。ダニは、125cc、250ccではチャンピオンを獲得していますが、MotoGPでは、ここまでのチャンピオン争いは初めての経験ですからね。今は追う側の立場ですからね。まだプレッシャーはないと思います。チャンピオンになるためには、追いつき、追い越さなければなりませんからね。本当の戦いは、まだまだ、これからですね。ここからはダニの得意とするサーキットがいくつもありますが、ホルヘも勝ちにくると思います。今回のようなレースを続けてほしいですし、競り勝ってほしいですね」

−ストーナー選手が手術のためにオーストラリアに帰国しました。ファンにとっては非常に残念なニュースでした。

「チェコGPの開幕前日の木曜日の午前中に、ケーシーから、オーストラリアに帰って手術を受けたいと言われました。インディアナポリスGPを終えた時点で、MRIの検査結果などをオーストラリアにいるケーシーの主治医に送っているのですが、主治医の見解では、ひどい状態で、大至急手術しなければ足が動かなくなるというので、すぐに帰って手術を受けなさいと言ってあげました。とにかく、手術が終わり、回復状況を見ないと復帰の時期はわかりませんが、早く戻ってきてほしいですね。一応、ケーシーが復帰できないときのために、スーパーバイク世界選手権に出場しているジョナサン・レイをテストに参加させて代役の準備は進めますが、ケーシーには早く帰ってきて、と言ってあります」

−ラグナセカ、インディアナポリス、ブルノ……この個性の異なる3つのサーキットで3連勝したというのは、開発陣にとっても大きな自信になったのではないでしょうか。

「そうですね。ケーシーのケガは残念ですが、ここまでは、いい結果につながっています。残り6戦。ホルヘに勝つのは、本当に容易ではありませんが、Repsol Honda Teamとしては、全勝するつもりでがんばります」