HRCチーム代表 中本修平 現場レポート
vol.79

ペドロサが今季初優勝し、Hondaは2戦連続優勝!

 オランダGPからの連戦となった第8戦ドイツGPは、Repsol Honda Teamのチームメート同士の戦いとなり、ダニ・ペドロサが今季初優勝を達成しました。これでドイツGP3連覇、通算4勝目を達成し、自身最多の優勝回数を誇るグランプリとなりました。総合ポイントでも2位に浮上。総合首位のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)選手との差を14点としました。一方、ペドロサと最終ラップまでバトルを繰り広げたケーシー・ストーナーは、最終ラップに転倒を喫し、惜しくもリタイア。Repsol Honda Teamとしては、2戦連続の1-2フィニッシュまで、あとコーナーが2つ、あのままフィニッシュしていれば、という思いが残るレースとなりました。地元ファンの大声援を受けたステファン・ブラドル(LCR Honda MotoGP)が今季ベストタイの5位。最後尾からスタートしたアルバロ・バウティスタ(Team San Carlo Honda Gresini)がすばらしい追い上げで7位でフィニッシュ。Honda勢の戦いが、ザクセンリンクの大観衆を魅了しました。

−2戦連続優勝おめでとうございます。今回もRepsol Honda Teamの2人がすばらしいレースを見せてくれました。前戦オランダGPはストーナー選手が勝ち、今回はペドロサ選手が優勝しました。ペドロサ選手は、ウイニングラン、表彰台で喜びを爆発させていましたね。

「今まで、勝てそうで勝てないレースが続いていましたし、やっと勝てたという喜びが、伝わってきましたね。我々もダニが勝って、すごくうれしかった。前回のオランダは、予選も決勝も、Repsol Honda Teamが、1-2という戦いができた。今回の予選は、ケーシーがポールポジション、ダニはクリアラップが取れず3番手でしたが、決勝では、この2人が戦いをリードしてくれました。チームメート同士、お互いに負けたくないという、意地と意地がぶつかりあうレースをたっぷりと見せてくれましたね」

−前戦オランダGPからダニは、仕様を変更した車体を使っています。今回も引き続きダニは、この車体で戦いました。初日のフリー走行を終えたときに、2日目に、もう一度従来の車体と比較テストをしてみたいと語っていました。最終的に新しい方の車体を選ぶ決め手はなんだったのでしょうか?

「初日のフリー走行でダニは、ドライでもウエットでもトップタイムをマークしました。どっちのコンディションでも、フィーリングはよかったのですが、ウエットの方が特に乗りやすかったと言っていました。2日目は、午前中が中途半端なコンディションで、午後の予選はフルウエット。今回も不安定な天候になって、ちゃんとした比較テストができなかったので、とりあえず、セットアップのできている新しい車体でレースに挑みましたね。一方のケーシーは、前回同様、従来の車体で走っています。以前にも話していますが、シーズン中には、ちゃんとしたテストができないので、なかなか大きな変更はできない。ダニが使っている車体は、今年の課題でもある、タイヤとのマッチング、バランスの問題を解消するために作ったもので、それほど大きな変更ではないのですが、ダニにはいい結果につながっています。そういう意味では、フレームもセッティングパーツの一つ、ということになります」

−車体の好みが分かれた2人が、最終ラップまでバトルを続けた。Hondaファンとしては、あのまま2人がフィニッシュしてくれたら……という思いが残ります。中本チーム代表としては、どんな思いでしたか?

「正直、残念でしようがない。ケーシーが転んだのを見たときに、ガクッときました。Repsol Honda Teamとしては、どっちが勝ってもうれしい。できることなら、2人が優勝争いをして、2人にチャンピオン争いをしてもらいたいというのが心からの願いですからね。そういうシーズンにするつもりで我々はがんばっているのですから……。今回のレースは、……たられば、だけれど、ケーシーが2位でフィニッシュしていれば、総合で首位に浮上、優勝したダニがホルヘとのポイントを詰めるという結果になっていた。そういうふうに考えれば、ケーシーはダニを抜く必要はなかった。ケーシーの、勝ちにこだわる強い気持ちは十分に感じましたが、なんとしてもフィニッシュして欲しかった。レースというのはいつもそうですが、うしろにいる方が速く感じるもの。ケーシーは、ダニを抜けたと語っていましたが、結果的に転んでしまったのだから……。オランダと同じように1-2フィニッシュして欲しかった、というのが、正直な気持ちですね」

−オランダGPは、ロレンソ選手が転倒したこともあり、Repsol Honda Teamの1-2でした。今回はロレンソ選手を寄せつけない走りで、Repsol Honda Teamの2人がレースをリードしました。だんだんマシンが仕上がってきたと考えてもいいですか……。

「オランダGPでも言いましたが、チャタリングなど、ウインターテストから課題になっている問題解消に向けて我々は着実に前進してきました。マシンのレベルは確実に上がっています。しかし、第6戦イギリスGPからフロントタイヤが新しくなり、それに合わせたセットアップが必要になり、それに全力を挙げているところですね。ザクセンリンクは、ハードブレーキングのポイントが少ないので、あまり大きな問題にならなかっただけのことで、問題が解決しているわけではありません。前も言いましたが、もし、カタルニアGPまでのフロントタイヤが使えれば、今年がんばってきた成果を、より発揮できると信じています」

−今回は、地元の声援を受けたブラドル選手、前戦オランダGPのペナルティで最後尾からスタートしたバウティスタ選手もすばらしい追い上げを見せました。

「ホームGPということで、ステファンはいいパフォーマンスを見せました。特に、雨の予選では、クリアラップが取れればフロントローに並べたと思いますね。一発のタイムが出せるようになってきましたし、その速さをレースで出せるようになって欲しい。これは経験を積んでいけばできるようになると思いますし、これからが楽しみです。アルバロは、最後尾からのスタートになったことで、序盤に追い上げるためにMotoGPマシン勢ではただ一人ソフトを選んでいます。実際にCRT勢を抜いたころにはかなりグリップが苦しくなっていたようですが、ステファンの集団まで追い上げたのは立派でした。次のイタリアGPも、RC213Vに乗る4選手の活躍に期待しています」

−次は3連戦の最後となるイタリアGP。目標と抱負をお聞かせ下さい。

「オランダでケーシー、そして、ドイツでダニが優勝することができました。しかし、総合ポイントでは依然としてホルヘがトップなので、追いかける立場だということに変わりはありません。昨年の大会はホルヘに負けているので、今年は勝てるようにがんばります。ダニは今回優勝したモチベーションを力に、ケーシーは今回の悔しさを力にして欲しい。Repsol Honda Teamとしては、再び、1-2を目標にがんばります。これからも応援よろしくお願いします」