HRCチーム代表 中本修平 現場レポート
vol.78

今シーズン初の1-2フィニッシュ達成!

 アッセンで開催された第7戦オランダGPは、ポールポジションから決勝に挑んだケーシー・ストーナー(Repsol Honda Team)が優勝、予選2番手のダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)が2位でフィニッシュ、Repsol Honda Teamとしては今季初の1-2フィニッシュを達成しました。予選では、ストーナーが今季3回目のPPを獲得、2番手にペドロサと、Repsol Honda Teamとしては今季3回目の1-2グリッドを獲得しましたが、今大会は、予選、決勝ともに、完ぺきなリザルトを残すことに成功しました。今季3勝目を達成したストーナーは、総合2位は変わらずも、総合首位のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)選手と同ポイントで並び、今大会2位のペドロサも、ロレンソ選手との39点差を19点差へと大きく縮めました。シーズン前半戦の最大の山場となる、オランダ、ドイツ、イタリアの3連戦。Repsol Honda Teamは、上々のスタートを切りました。前戦イギリスGPで初のPPを獲得、ベストリザルトとなる4位でフィニッシュしたアルバロ・バウティスタ(Team San Carlo Honda Gresini)は、スタート直後の1コーナーでロレンソ選手を巻き込んで転倒、危険な走りだったとして、次戦ドイツGPは最後尾グリッドから決勝に挑むペナルティの裁定が下されました。今大会ベストグリッドとなる4番手から決勝に挑んだステファン・ブラドル(LCR Honda MotoGP)は、好スタートを切るも、2周目に転倒リタイアという残念な結果でした。大荒れの展開も、予選、決勝と、持てる力をきっちり出して最高の結果を残したRepsol Honda Team。中本修平HRCチーム代表に、戦いをふり返ってもらいます。

−この数戦、悔しいレースが続いていましたが、今大会はすばらしいリザルトを残すことに成功しました。大会2日目のフリー走行では、アッセンならではの“通り雨”の影響で、ストーナー選手が転倒する波乱がありました。そういう厳しい状況の中で、ストーナー選手がPP、ペドロサ選手が2番手。決勝でも、ストーナー選手が優勝、ペドロサ選手が2位と、Repsol Honda Teamとしては今季初の1-2フィニッシュを達成しました。今大会、最高の形でレースを終えられた最大の要因は、なんでしょうか。

「ひとことで言えば、今回はタイヤチョイスがよかったということに尽きます。カタルニア、シルバーストーンは、タイヤチョイスがうまくいかず、フリー、予選の走りを決勝に反映できなかった。今回も2日目が不安定な天候になって、そのためにケーシーが転ぶというハプニングもあったけれど、そういう状況の中で予選では速さを見せることができたし、天気が回復したことでタイヤの選択が難しくなった決勝も、今回はケーシーもダニもいい走りを見せてくれた。リアにソフトを選択したことも結果的に間違いではなかったし、それがうまくいった要因ですね」

−今回は仕様違いのシャシーを投入しました。ペドロサ選手は、決勝も新しい車体で走っていますが、ニューシャシーの手応えはどうだったのでしょうか?

「これまでの車体と、仕様違いの車体を乗り比べて、ダニは新しい車体の方が気に入ったので、2日目も決勝も、これで走りました。前戦イギリスGPからフロントタイヤが新しいスペックに変更になりました。新しいタイヤは、これまでのタイヤに比べるとやや剛性が低く、いままでの我々の車体とは合わないタイヤなんですね。そのため、ブレーキングのときにグニャグニャする。ダニは、そのフィーリングが嫌いで、シルバーストーンでは苦労していました。仕様違いの車体は、その新しいタイヤに対応させるための変更でもあるのですが、そういう点では、フロントのフィーリングが改善されて、まずまず成功だったかなと思います。しかし、アッセンはハードブレーキングのポイントが少ないので、そういうグニャグニャするフィーリングが顕著に出なかったということもあって、ちゃんとした評価はできていません。実際、予選でアタックしたときには、グニャグニャ感は出ていたし、決勝でもタイヤが消耗してきた後半は、このグニャグニャ感のためにバイクの切り返しなどで苦労していました。そのためにダニは、体力を消耗して、ケーシーから遅れてしまいましたね」

−ストーナー選手は従来の車体で決勝に挑みました。ペドロサ選手とは評価が分かれたのでしょうか?

「ケーシーはこれまでの車体をチョイスしましたね。2日目のフリー走行で、突然降ってきた雨の影響で転倒したこともあり、十分にテストができなかったことがひとつ。そして、今回投入の車体は、シーズン中なので、それほど大きな変更はしていないし、小変更にとどまっているので、あまり大きな変化を感じなかったということもありますね。そこで、実績のある従来の車体をセットアップする方向で決勝に挑むことにしました。前回のシルバーストーンで、新しいフロントタイヤに対応したセッティングの変更が走りに影響したので、今回は、その辺のデータをきっちりと分析、シルバーストーンとは違う手法でセットアップを施し、決勝に挑んでいます。ケーシーの場合は、リアのチャタリングの問題が解消した時点で、もうなにも問題がないと言ってもいい状態でしたからね。それがフロントタイヤが変更になったことで、またバランスが変わり、その対応に追われているというのが現状。もし、従来のフロントタイヤを使わせてもらえたら、なにも問題はないし、昨年のように勝てると思っています。新しいフロントタイヤに対応するために、これからも全力を尽くさないといけないですね」

−今大会は、スタート直後にバウティスタ選手が転倒、ロレンソ選手を巻き添えにする波乱がありました。最大のライバルであるロレンソ選手との直接対決がなかったことは、勝敗にどう影響したと思いますか?

「今回のレースは、数字的には、我々が想定したとおりのものでした。今回は、ケーシーもダニもソフトタイヤを選択していて、ダニは序盤からペースを上げて逃げようとした。ケーシーもそれは同じだったと思うけれど、ダニのペースがいいので、後ろについて、チャンスを待つ作戦に切り替えた。ケーシーは、フリー走行の転倒の影響で体調が十分でなかったし、ダニは、先にも言ったとおり、タイヤが消耗してきた終盤、マシンのコントロールで体力を使い果たしてしまった。2人の戦いは、ケーシーに軍配が上がるけれど、ケーシーがペースを上げていったというよりも、ダニのペースが落ちていった。もし、この二人の戦いにホルヘが加わっていたら……ですが、こればっかりはやってみないと分からないですね。でも、今回はホルヘがいたとしても我々は勝てたと思います。今回、我々と同じソフトを選択した選手は、ヤマハ勢ではスピーズだけですが、我々の選択はよかったと思います」

−3連戦最初のレースで、Repsol Honda Teamとしては、最高の形でフィニッシュすることができました。続く、ドイツ、イタリアに向けての抱負、目標をお聞かせ下さい。

「今回のレースは、波乱はあったけれど、結果は結果なので、1-2フィニッシュできたことは、正直、うれしいですね。ポイントでも追いついたし、これで、また振り出しに戻ったという感じですね。しかし、これで一気に波に乗っていける……とは全く考えていないですね。これまでどおり、ホルヘとの厳しい戦いが待ち受けているし、一戦一戦のしのぎ合いになると思っています。とにかく、ホルヘに離されないように、しっかりついていきたい。もう何回も言ってきているけれど、なんとか戦えているうちに、ケーシーとダニに喜んでもらえるようなバイクにしたい。この連戦の中で、今回のようにニューパーツを投入するのは非常に難しい。今回のデータをしっかり分析して、ドイツ、イタリアでは、現状のマシンで勝てるようにベストを尽くしていきたい。そして、一日も早く、ブリヂストンの新しいフロントタイヤに合ったマシンを作り上げて、ケーシーとダニに喜んでもらえるように全力を尽くします。これからも応援、よろしくお願いします」