vol.77 | 厳しい戦いの中でHonda勢は2、3、4位フィニッシュ。 |
モータースポーツ > ロードレース世界選手権 > HRCチーム代表 中本修平 現場レポート > vol.77
vol.77 | 厳しい戦いの中でHonda勢は2、3、4位フィニッシュ。 |
シルバーストーンで開催された第6戦イギリスGPは、ケーシー・ストーナーが2位、ダニ・ペドロサが3位と、Repsol Honda Teamの両選手がそろって表彰台に立ちました。今大会、フリー走行と予選が行われた金曜日と土曜日は、断続的に降る雨と強風に選手たちは苦しみました。そういう厳しいコンディションの中で、フリー走行では、ストーナーがトップタイムをマークします。予選では、アルバロ・バウティスタ(Team San Carlo Honda Gresini)がPPを獲得しました。一方、セッション終盤の降雨のため、アタックのタイミングを逃したストーナーは3番手、ペドロサは5番手でしたが、今季3勝目に向けてHonda勢は、まずまずのグリッドを獲得しました。しかし、ストーナーはリアのグリップに苦しんで首位の座をキープできず2位。オープニングラップ7番手と出遅れたペドロサも追い上げますが、フロントタイヤに問題が出て3位という結果でした。その後方では、バウティスタが初PPから自己ベストの4位フィニッシュするという明るい話題もありますが、Honda勢にとっては、悔しい大会となりました。中本修平HRCチーム代表に、厳しい戦いとなったイギリスGP を、ふり返ってもらいます。
「ケーシーのコメントにもあるように、スタートして3周目くらいからリアのグリップが急激に低下、そのためペースをキープできなかったことが、優勝を逃した最大の要因ですね。今回は、ほとんどの選手がリアにソフトを選択しています。タイヤの選択は間違っていなかったと思いますが、とにかく、マシンを寝かしたときもスロットルを開けたときも全然グリップしないという状況でした。特に左側が厳しくて、序盤は2分2秒台で楽々走れていたのに、3秒台、4秒台までラップタイムが落ちてしまった。今回の敗因は、これに尽きますね」
「それはないですね。チャタリングの問題に関しては、前回カタルニアGP後のテストで対策の手法をつかみ、ほぼ解消したと言ってもいい状態になりました。このときに使った対策部品は、レースで使うには耐久性に問題がありましたが、今回はその対応を施した部品で走っています。その結果、チャタリングの症状が40%くらい残る状態になったのですが、これについては、対策の手法がわかっているので、ファインチューニングで対処していきます。いずれにしても、このチャタリング対策が原因でタイムが出なかったということはないですね。急激にグリップが低下したこととも関係ありません」
「新構造のフロントタイヤについては、いろいろ注文があるし、今回、ケーシーのリアタイヤのグリップの低下の原因のひとつが、この新構造のフロントタイヤにあります。ケーシーは、フリー走行から、フロントにチャタリングが出ていて、チャタリングだチャタリングだ、と言い続けていました。しかし、我々の分析では、チャタリングとは明らかに周波数が違っているし、タイヤ自体の剛性不足によるスキッピングが原因だと思います。結果的にチャタリングのような症状になるのですが、それを解消するために、正常なセットアップで戦えなかったことが、リアのグリップの低下に影響したと考えています。これも前回まで使っていた構造のフロントタイヤなら全然問題はなかったし、以前のタイヤなら勝てたレースだと思います。とにかく、新しいタイヤはいろいろ問題が多く、それに合わせて、フロントのセットアップをしていかなくてはいけないというのが現状です。その対策をいろいろやっているし、次のオランダからは、この問題の解消でも、大きく前進しなければなりません」
「そうですね。ケーシーとは乗り方の違いもあって、新構造のフロントタイヤの影響をもっとも受けているのが、間違いなくダニですね。とにかく、ぐにゃぐにゃして気持ちよく乗れないというので、決勝までに、やれることはすべてやったという感じですね。最終的になんとか乗れる状態までセットアップしたけれど、根本的な解決にはなっていなかったし、レース終盤、タイヤがたれてきたときには、それまでのネガな部分がやっぱり出てきてしまい、ペースを上げられませんでした。この問題は、ダニにとっても我々にとっても本当に深刻な問題です。次戦のオランダからは、ドイツ、イタリアと続く3連戦で時間がありませんが、この新構造のフロントタイヤ対策に全力を挙げて対応していきます」
「天気は、これはみんなに平等なので、こればっかりは文句を言っても仕方がない。ただ、我々としては、ただ手をこまねいているばかりではなくて、やれることはきちんとやってきたという気持ちはあります。チャタリングの問題も、解決に向かっているし、開幕前の+4kgの最低重量引き上げの対応も進んでいる。確かに、レースウイークの天候がもう少しよければ、いろんなことが、もっと早く対応できたという思いはあります。前回のカタルニアは、我々のタイヤの選択ミスが勝てなかった原因のひとつだったし、今回は、先にも述べた理由で、勝利を逃してしまった。3戦連続で勝てなかったことは本当に悔しいけれど、マシンは確実にレベルアップしていると自信はあります。次戦からは、新しいフロントタイヤに合わせた対策に取り組んでいくので、レースウイークはとにかくいい天気になって、やるべきことをやりきってレースに臨みたい、というのが切実な気持ちですね」
「今年は厳しい戦いを予想していたし、そういう点では、ここまでは予想通りですね。そして、まだ6戦が終わったばかりですからね。チャンピオン争いはこれからが本番だし、ばん回に向けて全力を尽くしていきます。今回はバウティスタが、難しいコンディションの予選でPPを獲得した。決勝でも自己ベストの4位でフィニッシュした。Hondaとしてはうれしい出来事だけど、ただ、ワークスチームとしては、バウティスタに追いかけられているようなレースをしていてはいけないというのが本音ですね。ごめん、バウティスタ……と彼を置いてきぼりにするような、強くて速いRepsol Honda Teamの走りを、一日も早く見てもらいたいですね。次のオランダからの3連戦が終わったときには、ケーシーにもダニにも、そしてバウティスタにもブラドルにも、Hondaは最高だ、と言ってもらえるようなマシンを提供できるようにがんばりたい。これからも応援よろしくお願いします」