HRCチーム代表 中本修平 現場レポート
vol.76

コンディションの変化とセッティングに苦しんだカタルニアGP
ペドロサはホームコースで2位入賞

 第5戦カタルニアGPは、Repsol Honda Teamにとって、今季もっとも悔しいレースとなりました。青空が広がったフリー走行では、ダニ・ペドロサがトップタイム、ケーシー・ストーナーが2番手、予選ではストーナーが今季2回目のPPを獲得、ペドロサはアタックに失敗して5番手へとポジションを落としましたが、今季3勝目に向けて万全の状態に仕上げることに成功しました。しかし、決勝レースの行われた日曜日は、雲の多い天候となり、ウオームアップは雨が降ってウエットコンディション。決勝は天候が回復してドライコンディションで行われましたが、フリー走行、予選の快走を再現することができませんでした。前戦フランスGPも、天候の変化に翻弄されてライバルのホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)が優勝、優勝候補に挙げられたストーナーは3位、ペドロサが4位と惨敗に終わりました。今大会も、予選を終えた段階では、Repsol Honda Teamの二人が優勝候補でしたが、ペドロサ2位、ストーナー4位という悔しい結果に終わりました。2戦連続で優勝を逃したRepsol Honda Team。中本修平HRCチーム代表に今大会をふり返ってもらいました。

−土曜日の予選が終わった段階で、「ドライコンディション、高温状態でのセットアップはできたので、もし、決勝レースが、フリー走行や予選と同じようなコンディションなら優勝できるという自信はある。一方で、天気予報によると、決勝日は気温は低く、雨が降る可能性が高い。そうなるとちょっと予測がつかない」と語っていましたね。その不安が的中することになったわけですが、それにしても、予想以上に苦戦したという印象でした。前戦フランスGPも、ドライなら勝てたかも知れないというレースがウエットコンディションになり勝利を逃した。今大会はフランスGP以上にいい状態に仕上がっていただけに、悔しいレースになりましたね。

「正直、言葉がありません。今回もコンディションが変わり、そのコンディションに我々がセットアップしきれなかった。それが勝てなかった一番の要因ですね。タイヤは、ケーシーもダニも、フリー走行と予選のデータからハードを選んだのですが、特にケーシーはグリッドについてもまだ決められず、最後の最後まで迷っていた。最終的にハードをチョイスするのですが、金曜日、土曜日の走行データからいえば、決して間違っていなかったと思います。しかし、決勝レースの路面が予想以上にグリップしなかった、ということに尽きますね」

−ペドロサ選手は優勝争いに加わりますが、レース後半苦しくなって2位に終わる。ストーナー選手は最初から最後までグリップに苦しんで表彰台にも立てなかった。ハードをチョイスした理由と、それがどうしてグリップしなかったのか、ということについては、どう分析していますか。

「決勝レースは、気温が27℃。路面温度が40℃だった。それにもっとも近いコンディションだったのが、土曜日の午前中のフリー走行で、このときは、気温24℃、路面温度36℃だった。このセッションでは、二人ともにハードタイヤを装着して、ダニがトップタイム。ケーシーが2番手だった。その点では、ハードを選択したのは決して間違いではなかったと思います。しかし、想定外だったのは、朝のウオームアップで雨が降り、その雨の影響で路面のグリップが落ちてしまったことですね。レースを終えた後にケーシーが、『路面コンディションが金曜日の1回目のフリー走行の状態に戻ってしまった。このコンディションではソフトの方がよかった』と語っていた。一方のダニは、ハードを選択したことに迷いはなかったのですが、路面のグリップの低下に合わせてサスペンションのセッティングをする必要があった。グリップしないという点では、二人ともに同じでしたが、その理由は、微妙に違いましたね」

−その点について、もう少し、詳しく聞かせてください。

「先にも言いましたが、決勝レースのコンディションにもっとも近かったのは、土曜日の午前中のフリー走行でした。路面の状況さえしっかりしていれば、想定した走りができたと思います。しかし、雨の影響でライン上のグリップが落ちてしまった。ケーシーとダニは乗り方が違うので、対処の仕方も違うのですが、ケーシーは、サスペンションのセッティングはそのままで、タイヤをソフトにしてあげればよかった。ダニは、タイヤはハードでよかったのですが、サスペンションをもっとソフトにセッティングしてあげなくてはいけなかった、ということになります。結果的に、コンディションの変化に、我々がセッティングを合わせてあげられなかったということになります」

−とにかく、あんなに苦労している二人を見るのは、久しぶりだったような気がします。ペドロサ選手は優勝争いするけれど、最後は力尽きたという感じ。ストーナー選手は、まるでいいところがなかったという印象でした。

「ダニは、2年ぶりのホームGPですからね。そして、今年はまだ優勝がないので、何としても勝たせてあげたかった。勝てる条件もそろっていた。朝の雨さえなければと思うし、それに我々が対応できなかった。ケーシーは、ハードを選択した場合、序盤はちょっと我慢しなくてならないということを覚悟していた。だから、序盤のペースとポジションは想定内だったと思うのですが、いつになってもグリップが上がらない。グリップしないだけでなく、チャタリングに悩まされてしまうという状態。今回のケーシーは、スタートからゴールまで、自分の走りができないまま終わってしまったという、本当に悔しいレースだったと思います」

−今年は、天候や路面コンディションの変化に影響されるレースが多いと思うのですが、その辺については、どう考えていますか?

「確かに、フランス、カタルニアの2戦は、あまりにもピンポイントすぎるんじゃないかという反省はあります。今回の決勝に関していえば、ケーシーはチャタリングにも苦しんだ。我々がこの数年抱えているチャタリングの問題は、やればやるほど難しいということを実感しています。今回のレースは、そういう意味では、いろいろ考えさせられました。RC213Vのチャタリングの問題は、もしかすると、いままで我々が考えていた部分とは違うところに原因があるんじゃないかと……。いずれにしても、この2戦、我々はホルヘに完敗しました。彼はドライでもウエットでも速いし、マシンの仕上がりのよさを感じさせますね。我々はいい部分もあるけれど、負けている部分も多い。今年は厳しいレースになるとことは、ウインターテストの時点からわかっているけれど、この2戦はそれを痛感させられています」

−今回のレースのあと、テストがあります。大事なテストになりますね。

「次戦イギリスGPからは、ブリヂストンのフロントタイヤが完全にニュースペックに切り替わります。これまでのレースでは、旧スペックと新スペックの両方のタイヤを併用できたのですが、我々は、ニュースペックのタイヤのテストをする余裕が、ほとんどなかった。そのため今回のテストは、ニュースペックのタイヤテストもしなければならないし、ニューパーツのテストもあるので、とても重要なテストになります。何度も言いますが、予想通り、今年は厳しい戦いになっているし、フランス、カタルニアの2戦は、その厳しさに拍車をかけることになりました。ホルヘに追いつくためにも、これまで以上にがんばらないといけないと思っています。今回のレースでケーシーの連続表彰台記録が『19』でストップしてしまったことも、とても残念な出来事でした。ケーシーには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。ホームGPでダニを勝たせてあげられなかったことも残念で仕方ない。とにかく、これから先のレースで、ケーシーとダニに1-2を続けてもらえるように全力でバックアップしていきたい。そのために、月曜日の事後テストから全力を尽くします。これからも応援よろしくお願いします」