vol.73 | Honda勢今シーズン初優勝はケーシー・ストーナー |
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vol.73 | Honda勢今シーズン初優勝はケーシー・ストーナー |
ヨーロッパ大陸に舞台を移した第2戦スペインGPは、3日間ともに雨の多い不安定な天候となり、難しく、厳しい大会となりました。金曜日と土曜日のフリー走行はウエット。土曜日の予選はハーフウエットからドライへと変化する微妙なコンディション。日曜日のウオームアップは、再び、ウエット。そして決勝はドライコンディションになるも、ウエットパッチが残る状態でスタートと、天候がどう変わるかわからないという予測の難しいレースとなりました。ライダーには、タイヤの選択をどうするかという決断力が求められ、チームには、路面コンディションにあった適正なマシンのセットアップが要求されるなど、まさに、総力戦となりました。その中で、予選5番手から序盤トップに立ったケーシー・ストーナーが今季初優勝を達成。予選2番手から地元の声援を受けたダニ・ペドロサが3位と、Repsol Honda Teamの両選手が2戦連続で表彰台に立つ活躍でした。「最後まで気を緩めることが出来なかった。やっと勝てました」という中本修平HRCチーム代表に、スペインGPの3日間をふり返ってもらいました。
「ほんと、最後までどうなるのか、予測のつかないレースでした。ケーシーとホルヘのマッチレースとなり、ホルヘがじりじりとケーシーとの差を縮めてきた。それが、ラスト2周でケーシーがペースを上げて、ホルヘを突き放した。今日は、ケーシーの強さ、速さに助けられたレースでした。勝ってくれて本当にありがとうという気持ちですね。でも、終わってみれば……ですけどね。こうして優勝出来たのだから、1-2フィニッシュしたかったなあという悔しさはありますね。まあ、これは欲張った思いであり、レース中はワンツーどころか、カタールGPと同じように、ホルヘにやられて、2位、3位という結果もあり得たわけで……。誰にとっても、本当に難しいレース。こういうレースで勝てて、本当に嬉しいですね」
「リザルトだけを見れば、確かに、あまり良い状態ではなかったですね。ただ、ウエットコンディションが続くことが予想されたので、本数に制限があるレインタイヤをセーブしていこうというのは基本的にありました。ケーシーはウエットに自信があるし、無理にタイムを狙っていかなかったということはありますね。決勝前のウオームアップを走行しなかったのも、決勝の天候がどうなるかわからないので、レインタイヤをセーブするための作戦でした。しかし、予選で5番手に終わったのは、完全に我々のミスでした。乾いていく路面にちゃんとセットアップしてあげられなかった。原因もわかったし、対処もできましたが、決勝が始まって、序盤に混戦にもまれているケーシーを見たときは、んんん……大丈夫かな、なにかトラブルが出てるんじゃないかと心配になりましたね。その後、トップに出て安心しましたが、そのうちホルヘにだんだんリードを縮められてきた。カタール同様、腕上がりの心配もあったけれど、それ以上にタイヤが消耗してきたんじゃないかと、ハラハラしながら見ていました。それが、ああいう形で勝ってくれたのだから嬉しかったですね。ホルヘとダニは、地元スペインGPということで、特別なモチベーションがあったと思う。そこで勝てたのだから、ケーシーの強さと速さに、ただただ脱帽です。勝ってくれて本当にありがとう、という気持ちですね」
「今大会に関しては、カタールGPとまったく同じですね。ドライコンディションになれば、カタールGPで得たデータから、あれもこれもやってみたいということはあったけれど、ウエットでは何もできなかったというのが本当のところですね。ただ、今回は、3月のヘレス合同テストのデータと成果がすごく発揮できた大会でした。ダニがウエットコンディションで素晴らしく速かったのも、ケーシーが本番でいい走りが出来たことも、すべて、3月のデータが生きていました。あらためて、テストの重要性、テストをしっかりやることが結果につながるんだということを実感しました。しかし、今回はフロントタイヤの選択が勝敗を分けたところがあります。ホルヘは微妙なコンディションに合わせて本来ハードを使うところをソフトに変えた。対照的に、我々はソフトで行こうと決めていたし、もし、ホルヘがハードを選んでいたら、カタールと同じ結果になったかも知れません。まだまだ、ホルヘに勝つには、やらなくてはいけないことがたくさんある。車体とタイヤのバランスなど、マシンを良くしていかなくてはいけない。何度も言うようですが、今回の優勝は、ライダーのがんばりのお陰でした」
「カタールGPの敗因を分析して、いろいろパーツを用意してきました。ただ、これはドライコンディションで走ってみないと比較ができないので、今回は出番はありませんでした。何度か言ってきましたが、昨年はライバルに対してアドバンテージを感じるレースもありました。今年はアドバンテージどころか遅れている。チャタリングの問題も依然として解決できていないし、ライダーには苦労をかけています。今回のレースでもケーシーは、腕上がりをおこしている。症状としてはカタールほどひどくなかったけれど、チャタリングを抑えるために腕に負担をかけさせているのは事実ですからね。それを早く解消してあげたいですね」
「今回は、ダニに勝てるチャンスがあったレースでした。3月のテストのデータを活かし、ウエットもドライも良い状態だった。決勝は路面が微妙だったころもあって、序盤、ペースを上げられなかった。勝てる要素は揃っていたのに、ちょっとしたことで勝機を逃したという印象です。次のエストリルはダニが得意とするコースのひとつ。またしてもホルヘが最大のライバルになることは間違いないけれど、我々としては、2連勝できるように全力を尽くしたい。願望、希望としては、ケーシー→ダニ、ダニ→ケーシー、順序はどっちでもいいから、1-2フィニッシュをしてみたいですね。また、バウティスタ、ブラドルも着実にレベルを上げて、今回のスペインGPでは、6位と7位でフィニッシュしました。二人とも、とりあえずの目標を達成したと思うし、次の目標に向けてがんばってもらいたいですね。われわれは今週の第3戦エストリルも、全力でがんばります。Honda勢への、応援、よろしくお願いします」