vol.72 | 惜しくも勝利を逃した開幕戦。課題に取り組み次戦に臨む |
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vol.72 | 惜しくも勝利を逃した開幕戦。課題に取り組み次戦に臨む |
開幕戦カタールGPは、レプソル・ホンダ・チームのケーシー・ストーナーとダニ・ペドロサ、そしてホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)のし烈な優勝争いとなり、終盤、ストーナーを交わしトップに立ったロレンソ選手が優勝しました。ウインターテストからロレンソ選手の仕上がりは抜群によく、今年も最大のライバルです。カタールGPでは、ウインターテストの走りを見事に再現、予選でPPを獲得、決勝でも優勝と、2連覇を目指すレプソル・ホンダ・チームの前に大きく立ちはだかることになりました。開幕戦カタールGPの戦いを終えて、中本修平HRCチーム代表は、この結果をどう受け止めているのか。開幕戦を振り返ってもらいました。
「今年は、昨年我々を苦しめたロレンソ選手の仕上がりが一段とよくて、相当厳しいシーズンになると思っています。マレーシアもスペインもすばらしいアベレージで周回していたし、このままだと全然歯が立たないんじゃないか、こてんぱんにやられてしまうのではないかと思いました。実際、開幕してみたら、その通りの展開になってしまった。速くて安定していて隙がない。一方の我々は、昨年のベストタイムに届かず、たくさんの問題を抱えている状態。ケーシーはチャタリングに苦しみ、ダニはマシンのバランス。こんな状態では勝てないな、チャンピオンなんて無理だなとあらためて感じています。予選では、このサーキットで圧倒的な自信を持つケーシーが2番手でしたからね。ダニはトラブルもあって7番手に沈んだ。決勝も、予想通り、ロレンソ選手にやられてしまった」
「予選が終わった時点で、昨年のタイムと比較したのですが、ダニは1.6秒、ケーシーは0.7秒遅れていました。Hondaが昨年の速さに届いていないのに、ヤマハさんは昨年より少し前進している。昨年は我々が大きなアドバンテージを持っていたが、今年はそれがなくなってしまった。ウインターテストでも同じような傾向だったけれど、カタールGPでは、それが一層顕著に出ることになった。そういう状況の中で、ロレンソ選手はマシンの挙動もタイムも安定していた。こんなんじゃとても勝てないなあと思ったし、その気持ちはレースを終えたいまも変わらないですね。しかし、ひとつだけ明るい材料は、思っていたより内容は悪くなかったんじゃないかということですね。いまのままでは、とても勝てないということに変わりはないけれど、がんばれば、もっともっとがんばれば、勝てるようになるんじゃないかと思いましたね」
「今大会のケーシーは、チャタリングとの戦いでした。チャタリングを解消するためのセットアップを進めていくと、今度は旋回性が悪くなるという問題を抱えてしまった。その折衷案を見いだそうとがんばったのですが、なかなかいい解決策が見つからなかったのですね。そういう状態なので、ソフトコンパウンドのタイヤを入れてもそれほどタイムを上げられなかった。このままじゃ勝てないとケーシーも言っていたし、厳しい状態でしたね。そこで決勝前のウオームアップでサスペンションのバネレートをいじった。それですごくよくなって、決勝ではペースも上がってトップを走ることができました。しかし、右腕の腕上がりでペースを上げられず3位に後退した。腕上がりするにはそれなりの理由があって、今回のケースでは、ブレーキを握るとチャタリングが収まるんですね。そういう走りをケーシーは4日間続けていて、その疲労が決勝に出てしまったんだと思います。だから、根本的に問題は解消していないし、ケーシーががんばってくれたという感じですね。
ダニは決勝に向けて大きくセッティングを変えました。ホイールベースを変えたら見違えるようによくなった。スタートも決まったし優勝争いに加わることもできた。今日は、二人とも優勝するチャンスもあったと思うけれど、予選までの状態を考えれば、上々の結果だったと思います。ケーシーとダニが勝てなかったことは悔しいけれど、開幕前の全然ダメじゃないかという気持ちから、がんばれば戦えるようになるんじゃないかと思えたことは、うれしいですね」
「エンジンの排気量が変わっただけではなくて、今年はバイクの最低重量が7kg増えています。ブリヂストンのリアタイヤも新しくなっているし、単純に比較はできないですね。昨年までやってきたことが今年はまるであてはまらない。こうなったときはこうする……というノウハウが今年は役に立っていません。カタールGPも、そういう状況に変わりはないけれど、こうして実際にレースを戦ってみると、いろんなことがわかってくる。ケーシーもダニも、開幕戦で勝てなかったことは悔しいだろうけれど、次はこうしようというのが見えてきたんじゃないかなと思いますね。それは我々も同じだし、ケーシーとダニに、ロレンソ選手としっかり戦えるバイクを一日も早く作ってあげなくてはと思っています」
「ブラドルはいい走りをしていました。ルーキーで6番手争いというのは立派だと思いますよ。ただ、残念だったのは、ブレーキのアジャストの方向を間違えてしまって、どんどん緩めてしまった(笑)。それであわてて締め直しているのだけど、それがなければ6位でゴールできていたと思います。これからが実に楽しみですね。バウティスタは、カタールに来てから、フロントの接地感にずっと悩んでいた。ブレーキングの後、倒し込めないと悩んでいた。決勝ではそれもいい方向にいって、ペースを上げることができたようです。二人ともポテンシャルの高いライダーなので、これからが楽しみですね」
「今回は、ケーシーとダニががんばってくれたと思います。でも、いまのままでは、到底チャンピオンにはなれないし、次のレースで勝ちますなんてことは、とても言える状況ではない。次のスペインGPでも、ケーシーとダニが抱えている問題を、一つひとつ解消できるようにがんばるだけ。そして、勝てるバイクを一日も早く作り上げたいと思っています。シーズンは始まったばかり。これからも全力でがんばりますので、応援よろしくお願いします」