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勝利のために、自分たちでできることは何でもする「Hondaイズム」

これは予想ではあるが、Honda陣営としては、フレームを大幅にモディファイする必要さえあると考えているかも知れない。もしそうだとしたら、もう一度開幕戦を迎えるようなものだ。ライバルたちが前に進んでいるときに、「もう一度開幕戦に戻ってしまう」ということの難しさは、どなたにでもお分かりいただけるだろう。
さらに悪いことに、本来であれば、ポルトガルGP終了後のエストリルサーキットで実施される合同テストで、アップデートパーツを導入し、最新データを手に入れることができるはずだったものが、悪天候によって第5戦カタルニアGP後まで延期になってしまった。使用するパーツの絞り込みができないまま、第6戦イギリスGPの直前まで開発を進めなくてはいけないという状況は、相当に「やりにくい」のではないかと予測できる。シーズン途中でタイヤのスペックが変更されるという、イレギュラーな出来事さえ起こらなければ……と思わなくもないが、ルールはルールであるし、より安全で高性能なタイヤとなるのならば、それは歓迎すべきことなのかもしれない。「現状に不平不満を言うことなく、勝利のために自分たちでできることは全てやる」のはHondaのやり方、Hondaイズムだ。
正直、元Hondaライダーとしては、内心気が気でない部分もあるのだが……ディフェンディングチャンピオンであるHondaが明らかな逆境に立ち向かっていくシチュエーションもなかなか燃えるものがあるではないか。
果たして、そんな状況下で中本修平さん率いるHonda陣営がいかに「逆境」に立ち向かい「第二の開幕」をどのように迎えるのか、ぜひ注目してみてほしい。

ライバル勢の動向

Hondaの逆境はライバルたちにとって、「チャンス」でもある……。最後に、恒例の「ライバルたちの動向」についても触れてみよう。

新スペックのフロントタイヤとのマッチングが順調なヤマハ勢

ヤマハ勢では、言うまでもなくロレンソが最大の脅威であるが、カル・クラッチロー、アンドレア・ドヴィツィオーゾらも、特に予選での躍進がめざましい。これはブリヂストンから全てのライダーに対して供給される、フロントタイヤ9本+新スペックのフロントタイヤ2本をうまく使いこなしていることによると思われる。
いかにバイクが安定しているのかは、クラッチローがそこかしこのコーナーで足を出していることからも伺える。コーナー進入時に片足を出すのは、曲がるためのきっかけを作るためだとされているが、マシンの安定性が優れていなくては、それもできないためだ。
イギリスGP後、新スペックのフロントタイヤが本格投入されるとなると、Hondaへの包囲網はさらに狭まりそうだ。

復調への足がかりをつかんだドゥカティ勢

プレシーズンテストで好調だったドゥカティだが、シーズンインからは、また苦しみ始めてしまったようだ。上位に顔を出すのはまだもう少し先かとも思われたが、ポルトガルGPではニッキー・ヘイデンが予選フロントローを獲得。決勝でもスタート後数周にわたって上位陣をかき回した。
ヘイデンがペドロサをアウトから鮮やかにオーバーテイクしていった様子なども印象的だったが(これに溜飲を下げたドゥカティファンも多かったに違いない)、ロッシもレース毎に順調に調子を上げてきていることから、中盤以降はヤマハ同様、かなりの脅威となることも予想される。実際、予選でのポールポジションとのタイム差も開幕戦では2.5秒以上あったが、ポルトガルでは1秒以内になっている。
昨シーズンから、中本修平さんをはじめとするチーム関係者も、ジャーナリストも、そしてライダーも、誰もが異口同音に「ロッシに油断をしてはいけない」と言い続けているが、それは今季も変わらない。全てのライダーにとって、有形無形のプレッシャーとなるロッシとドゥカティの動向には、今後も注意を払っていかなくてはならないだろう。テレビ観戦の際にも、ヒタヒタと順位を上げるロッシのポジション表示に注目してみると、ライダーたちの心境を体験できるかもしれない。

今シーズンの序盤戦は、まさに「誰が勝つかわからない」という接戦になったのが印象的だった。これは、Hondaがオフシーズンの間に大きく力を付けたのと同時に、ライバル陣営も必死に追いつこうと努力をした結果によるものだと考えられる。そんな猛追を退けて2勝を挙げたということには、やはり「これぞHondaの強さだ!」と感じたが、ここからの戦いはさらに激しいものとなっていくことだろう。逆境に立ち向かうHonda勢、そのスキを突こうとするライバル勢……ヨーロッパラウンドは、一戦も見逃すことのできない、エキサイティングなレースになる。
「1000cc時代」を迎えて、より「世界最高峰の二輪ロードレース」としての魅力を深めたMotoGP。今後もタイミングを見て、観戦がより楽しくなるようなレポートをお届けしていこうと考えている。ご期待いただきたい。

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