vol.69

王座奪還! 気を引き締めラスト2戦へ臨む

第16戦オーストラリアGPの開催地フィリップアイランド・サーキットは、美しい自然とペンギンやコアラなどで有名な観光地に位置していますが、ここは同時に変わりやすい天候と強風に悩まされるコースでもあります。今年のレースウイークは例年になく暖かで穏やかな天候で金曜のセッションが始まりましたが、日を追うごとにコンディションはどんどんトリッキーになっていきました。そんな中、今回がホームグランプリとなるオーストラリア出身のケーシー・ストーナー(Repsol Honda Team)が、フィリップアイランド4年連続のポール・トゥ・フィニッシュでシーズン9勝目を達成。残り2戦を残して、2011年のライダーズ・チャンピオンシップを獲得しました。また、ストーナー以下、マルコ・シモンチェリ(Team San Carlo Honda Gresini)、アンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)、ダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)と、4位までをHonda勢が独占しました。難しいコンディションを戦いぬいた第16戦の内幕と、ライダーズ・チャンピオンシップを獲得しシーズン最終2戦に向けた意気込みを、HRCチーム代表の中本修平が語ります。

「今日のレースは、途中から雨が降ってくる難しいコンディションで最後まで気が休まらず、ハラハラドキドキしました。そんな中でも、Honda陣営の選手たちは最後まで己の力を出しきってゴールしてくれたので、ホッとしました。ただ、青山博一君が運悪く、雨で転倒をしてしまったのは残念です。
 ホームグランプリで優勝を達成して今年のライダーズ・チャンピオンシップを獲得したケーシーには『本当によかった。おめでとう』と心からの祝福を贈ると同時に、『Hondaにとって2006年以来となるコンストラクターズ・チャンピオンシップの獲得に大いに貢献してくれてありがとう』とお礼を述べたいと思います」

−今日のストーナー選手のレース運びは、安心して見ていられましたか?

「途中から雨が降り始めなければ、きっとドキドキするようなこともなかったでしょうね。雨なら雨、あるいはドライならドライ、という一定の条件でずっと推移していれば、今回はまず負けることはないだろう、と思っていました。今年のフィリップアイランドは路面状態が芳しくなく、さらに温度条件なども日を追うごとに悪くなっていったのですが、我々のハード運営に関しては通常通り、特に何かに慌てることもなく、着々と落ちついて進めていくことができました」

−そういう意味では、ストーナー選手は腹の据わった一面もあるのでしょうか?

「私はそうは思っていません。むしろ、ケーシーのような選手こそ、神経質、と表現できるのだと思いますよ。神経質とは、小心という意味ではなく、非常に細かいことにまで気がつく繊細な能力なのだと私は考えています。実際に、ケーシーは細部にまで神経のいきわたる選手で、彼の指摘する部分には一つひとつ対応していかなければならないから、スタッフたちは非常に大変な作業を迫られることになります。ただし、彼が気になる部分をしっかり対応していけば、みるみるタイムアップをしてくれるので、それだけやりがいのある選手でもあるのです」

−シモンチェリ選手は、最終ラップまでドヴィツィオーゾ選手と激しいバトルを繰り広げました。

「独走態勢を築いたケーシーの背後で、マルコもまた後続を引き離しかけていたのですが、雨の影響で途中からアンドレアが追いつきましたからね。終盤は激しいバトルになったものの、最後はマルコが持ち前のガッツを発揮して自己ベストリザルトの2位表彰台を獲得してくれました。少しラフなところがあったスタイルを自分なりに反省した結果、抑えるところは抑えながら、その一方で攻めるべきところはきっちり攻める、という走り方へと成熟してきました。その意味で、マルコはいい方向に成長してくれていると思います。今後も、さらに勇敢でクレバーな走りを身につけて欲しいですね」

−一方で、4位のペドロサ選手はウイークを通して苦労しているようにも見えました。

「ダニは体格が小さいので、ここのように風が強いコースの場合、どうしても厳しくなってしまうことが避けられないのです。たとえば高速コーナーで風にあおられて身体を持っていかれてしまうと、どうしてもそこで大きくタイムをロスしてしまいます。125cc時代も250cc時代も、ダニはこのコースだといつもセクター1で0.3秒ほど離されてしまいます。そのような状況の中で、今回はよくがんばってくれたと思います」

−今日のレースでHonda は2011年のコンストラクターズ・チャンピオンシップを獲得しましたが、今の気持ちはいかがでしょうか?

「Hondaがチャンピオンを奪還するのに2006年以来、5年という長い時間がかかってしまいました。みなさまには、『お待たせしました』という気持ちと『こんなに遅くなってごめんなさい』という気持ちが相半ばするところですね。今まで見捨てずに応援してくださったファンの方々、また、ここまでずっと我々を信じてサポートをしていただいたスポンサーのみなさまには本当に感謝をしています。あと、私の個人的なことを言えば、少しホッとした、これでようやくゆっくり眠れるかな、というところですね」

ーシーズンはいよいよ残り2戦。どのような意気込みで戦っていきますか?

「残り2つもきっちりと勝ち、その勢いを来年につなげていきたいですね。来年からはレギュレーションが変更になって排気量が上限1000ccになるのでマシンも変わり、ふたたび新たな戦いがはじまります。Honda勢が雰囲気のいい流れでクリスマスと新年を迎えるためにも、シーズン最後の2戦もぜひ勝ちたいところですね。さらに、チーム・チャンピオンシップはまだ確定していないので、それもできるだけ早く獲得したいと思っています。今シーズンはあと2戦を残すのみとなりましたが、我々はこれまで同様の必勝態勢で戦っていきます。チャンピオン獲得まで応援をしていただいたお礼を申し上げるとともに、2週連続開催となる次戦マレーシアGPでも、変わらぬご声援をよろしくお願い申し上げます」