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vol.60 | 確実にポイントを積み重ね、シーズンは中盤戦へ |
第7戦オランダGPの舞台は、アッセンサーキット。ロードレース世界選手権が始まった1949年から現在に至るまで毎年開催されてきた唯一のグランプリであり、もっとも歴史のある会場です。しかし同時に、このグランプリは<ダッチウエザー>と呼ばれるオランダ独特の変わりやすい天候に悩まされる大会でもあります。今年も、選手とチームは数十分ごとに表情を変える気象変化とも戦わなければならないレースウイークになりました。そんな難しいコンディションを冷静に見極めたRepsol Honda Teamのケーシー・ストーナーは、終始安定した走行で2位フィニッシュ。ランキング首位の座をさらにがっちりと固めました。チームメートのアンドレア・ドヴィツィオーゾも、刻々と変化する状況に対応するクレバーな展開で3位表彰台。チーム全員が一丸となって乗り切ったこのレースウイークの戦いについて、HRCチーム代表の中本修平が語ります。
「ケーシーは3番グリッドから決勝レースを迎えましたが、スタートに少し失敗してしまいました。その後、冷えた路面コンディションだったためにタイヤのウオームアップを慎重に進めていったのですが、2周目でトップを走るスピース選手とすでに3秒以上の差がついていました。その後、少し追いかけてみたけれども差が詰まらないので、確実にポイントを取る戦略に切り替えたのです。
1周目の5コーナーでマルコとホルヘが転倒しているのを見て、確実にフィニッシュする方向へ気持ちを入れ替えたので、2位という今日の結果にはケーシーも満足していますし、我々もよかったと思っております。スピース選手は前半で勢いがよく、終盤になっても安定した速さを見せていました。今日は、彼に負けたことを潔く認めたいと思います」
「あのように雨でセッションが中断されてしまう状況では、十分な検証と判断はかなり難しくなります。それでも、予選から少し変えて、ケーシーと我々が『これでいいはずだ』と信じたセッティングでレースに臨みました。本音を言えば、もっと大きく方向性を振ってみたかった気もするのですが、最優先すべきことはチャンピオンの獲得です。そう考えたときに、一戦一戦のレースで大きな賭けに出るのを控えたほうがいいのは、当然のことです」
「そのとおりです。今回のレースはベストの結果ではありませんでしたが、シーズン全体を通して考えるとこれでよかったと思っています」
「アンドレアは、レース前半はいいペースで走れてケーシーにピタリとついていましたが、途中からマシンに震動が出はじめてしまいました。後続選手との距離も開いていたので、安全運転に切り替えて確実に3位でフィニッシュした、というのが、今回の彼のレースです。
レース中には、クラッチロー選手も途中でピットインしてタイヤを交換していましたが、レースを終えたアンドレアのマシンを見てみると、フロントタイヤ右側が特に激しく摩耗をしている状態でした」
「それに関しては、大丈夫でした。レースに悪影響を及ぼすことはなかったですね。痛みという意味で言うならば、それが問題になったのはむしろ青山博一君でした。レースを終えてピットに戻ってきた第一声が、『痛いです……』という言葉でしたから」
「よくがんばったと思います。違うセットアップのマシン、違うチーム、というすべてが異なる環境の中、本当によくやってくれました。体調が万全な状態でレースに臨めていたならば……とも思いますが、それを言いだせばきりがないですから」
「戻ってきます。16日に再手術したあと、リハビリをすでに開始しています。ダニ自身も、『次のムジェロは大丈夫』と言ってくれているので、我々も彼と一刻も早く再会するのを楽しみにしています」
「しばらくのあいだ、レースを走っていないのは事実ですが、とはいえ、痛くて走れないという状態ではありません。必ずや表彰台を狙ってくれる、と期待しています」
「もちろん、我々は勝つつもりでレースに臨みます。とはいえ、こればかりは現地に行ってみないとわからないのも事実です。そう簡単にいつも勝たせてはくれないのが、レースの世界ですからね」
「そうですね。確実にポイントを積み重ねながら少しずつ差を広げてゆき、早くチャンピオンを獲得できるようにしたいと思います。ランキング3位のアンドレアも、2位との差を縮めました。今後も全員で協力しながら、チャンピオン獲得を目指してがんばります。次のムジェロも全力で戦います。みなさまも応援をよろしくお願いいたします」