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vol.58

難しいコンディションを制した選手の力

前戦から3週間ぶりの開催となった第5戦カタルニアGPは、当地では珍しい降雨にも時折り見舞われる難しいウィークでしたが、Repsol Honda Teamのケーシー・ストーナーは金曜午前から全セッションで一貫して高水準の走りを披露。トリッキーなコンディションになった決勝レースでも圧倒的な走りで2戦連勝の今季3勝目を挙げました。また、アンドレア・ドヴィツィオーゾも最後まで安定した走りを継続して4位フィニッシュ。ポイントランキングでも3番手に浮上しました。チーム一丸となって困難な闘いを乗り切った第5戦を、HRCチーム代表の中本修平が振り返ります。

「ケーシーは、レース前の段階からプラクティスのアベレージタイムが速かったので、何ごともなければ勝ってくれるだろうな、と予想をしていました。決勝レースでは、13周目にコースの最終セクションで雨が降り始めましたが、これは先頭を走っている選手にとっては、非常に難しい状況になります。2番手以降を走行している選手は、前の選手の様子を見ながら状況判断ができるけれど、先頭の選手は手探りに近い状態の中で瞬時の決断を迫られます。そんな中でケーシーは自らのペースや状況判断をうまくコントロールしてくれました。本当にグレートジョブだと思います」

−これでポールポジションスタートなら、完ぺきなレースウィークでしたね。

「予選では、最後のアタックでトップタイムを記録しそこねてしまいましたが、あれは仕方がないですね。ちょうどタイヤの状態がいちばんいいときに運悪くトラフィックの中に入って、思うようなペースで走れなくなってしまいましたから。ただ、今回勝ったことにより、チャンピオンシップでもトップのロレンソ選手にようやく7ポイント差まで迫りました。早く追いついて、一刻も早く追い越したいですね」

−今回のレースでは、タイヤ選択で前後に硬めコンパウンドを選択していたのは、Repsol Honda Teamの2台を含む3選手のみでした。ストーナー選手はタイヤの選択・戦略という意味でもバッチリ決まった、と言えそうですか?

「そこは評価の難しいところですね。スタート直前のコンディションは、路面温度が32〜33℃だったので、耐久性を考えてハードを選択したのですが、レース中にどんどん温度が下がっていき、最後は25℃程度になりました。その事実を考慮すると、柔らかめの選択肢になるミディアムコンパウンドのほうがよかったのかもしれません。その意味では、厳しいレースでしたね」

−一方のドヴィツィオーゾ選手は、ハードコンパウンドのタイヤで少し苦労することになってしまったようです。

「柔らかい方のミディアムコンパウンドの耐久性を確認していなかったために、安全面を考えてハードで行こう、と決断したのです。結果論になってしまうのですが、路面コンディションを考えれば、ミディアムコンパウンドのほうが合っていたのだろうとは思います」

−いずれにせよ、難しい判断を迫られた決勝レースだったということですね。

「そうですね。しかし、ケーシーはハードコンパウンドであれだけの走りができているのだから、アンドレアにもあと一人か二人抜いてピットに帰ってきてほしかったと思います。レース終了後に、軽く冗談交じりでそういう意味のことを話しかけると、本人も悔しがっていました。スタートをもう少しうまく決めることができていれば、レースももう少し違う展開になっていたのかもしれません」

−スタートと言えば、ポールポジションスタートのマルコ・シモンチェリ選手はスタートで失敗しましたが……。

「あれは大失敗でしたね。1コーナーで8番手でしたから(苦笑)。その後もうまく順位をばん回できず、タイヤのエッジグリップ不足で苦労したと彼もレース後に言っていましたが、そのような状態の時にどれだけうまくタイムをまとめて走りきれるかどうかが、本当の意味で選手に必要な技術ではないかと思います。マルコは速さはだいぶ身についてきましたが、今後はもっと強さを習得してほしいと思っています」

−レースディスタンスを通じたタイヤマネージや走り方、ペースコントロール、ということですか?

「そうです。たとえば想定よりもグリップが低いときなどは、早めにマシンを起こして加速でタイムを稼いでいく、等の工夫も必要です。実際にケーシーは、そのような走りを実践しているわけですから。そのような強い走りを習得できれば、マルコにも連勝やチャンピオンが見えてくると思います」

−ところで、フランスGPでの負傷により、今回の参戦を残念ながら見送ったペドロサ選手ですが、今はどんな状況なのでしょうか?

「実は昨日(土曜)、ダニは我々スタッフと夕食を共にしたのですが、ステーキを切るナイフもちゃんと持てないような状況で、肉を他の人に切ってもらっている状態です。早期の回復を期待していたのですが、まだダニや我々が望むところまで達していません。とはいっても、決して手術が失敗したわけではなくて、信頼の置ける医師の執刀で手術そのものはうまくいきました。ただ、一ヶ月少々前にも左鎖骨のプレートを取る手術をしたばかりで、ダニ自体がまだ完ぺきな体調ではないところに、今度は右鎖骨を骨折をしてしまったので、どうしても回復に時間がかかってしまう、ということのようです」

−次のイギリスGPは?

「相当厳しいですね。医師の話では五分五分、ということです。ぎりぎりまで待って、決断したいと考えています」

−一部では、次戦でペドロサ選手が走らない場合、そのマシンに青山博一選手が乗るという情報も流れていたようです。

「確かにその方向も検討し、ダニがシルバーストーンでも走れない場合の事前準備をしておこうということで、青山君とも話をしたのは事実です。ただ、レースを運営するDORNAの代表カルメロ・エスペレータ氏が『特にリプレースする必要はない』といってくれたので、無理に慌ただしくするのはやめておこうという結論に落ち着きました。したがって、青山君はシルバーストーンでも本来のTeam San Carlo Honda Gresiniから参戦し、ダニが走れない場合のRepsol Honda Teamは、今回同様の2台体制で戦うことにしたいと考えています。ダニのケガが早く治り、一刻も早くレースに復帰してほしいと心から願っているのですが、こればかりは我々の力でどうにもならないことですからね」

−欠場が続くと、ポイント面でもさらに差が広がっていくことになります。

「そうですね。だから、アンドレアやマルコがさらに上位でフィニッシュしてロレンソ選手のポイントを抑えてくれれば、ダニが復帰したときでも、まだチャンピオン争いの希望を十分に残すポイント差でしのいでいくことができます。なんといっても、まだ5戦を終えたばかりで、シーズンはまだ13戦あります。ここまでの5レースでついた差は、今後の5レースで十分にばん回できるということなのです」

−2週連続の第6戦、イギリスGPの舞台はシルバーストーンサーキット。昨年は、ロレンソ選手がHonda勢に6秒以上の差をつけて勝ったコースです。ところが、今シーズンのこの勢いなら、次戦もHondaにかなりの期待がかかります。

「昨年は予選前とウォームアップで転倒を喫し、タイヤチョイスでも守りの姿勢で硬めのコンパウンドを選択してしまいました。そのような条件下であのタイム差でしたので、昨年もライバル陣営とがっぷり四つに組めていれば、十分に闘えていたでしょう。昨年の悔しさをバネに、今年こそ勝利を手にしたいと思っています。だからこそ、早くダニに復帰してほしいと我々全員が待ち望んでいます。Honda勢による一刻も早い表彰台独占を目指し、次戦も全力で戦います。皆様も応援をどうかよろしくお願いいたします」