モータースポーツ > ロードレース世界選手権 > HRCチーム代表 中本修平 現場レポート > vol.55
vol.55 | 成果と課題が明確になった第2戦 |
第2戦スペインGPが行われるヘレス・サーキットは、毎年熱狂的な盛り上がりを見せることでも有名だ。今年の決勝レースは雨だったが、それでも12万3750人のレースファンが詰めかけた。悪天候をものともしない大勢の観客に見守られるなか、Repsol Honda Teamのダニ・ペドロサは肩の負傷を抱えながらも2位表彰台を獲得し、地元ファンを喜ばせた。また、MotoGPクラスに参戦する唯一の日本人選手・青山博一は自己ベストの4位フィニッシュと大健闘。厳しい展開から得られた第2戦の成果と今後の目標を、HRCチーム代表の中本修平が語る。
「今回のレースは、ダニについてはカタールで出た腕の症状との戦い。ケーシーはサーキットへの苦手意識の克服。アンドレアも同様に不得意なヘレスを攻略すること。と、Repsol Honda Teamのライダーたちは、三人三様の問題をいかに乗り越えていくか、という課題を抱えた週末でした。そんな中、ダニは2位を獲得して表彰台に上がってくれました。『果たして今回は完走できるだろうか……』という不安を抱えていたので、とてもうれしく思います。ケーシーは、予選でポールポジションを獲得し、決勝レースでもいいスタートを切ったのですが、残念ながら転倒リタイア。レーシングアクシデントなので、これはしかたのないことだと思います。その後、トップを快走していたマルコが転倒してしまったのも残念でしたが、表彰台まであと一歩に迫った青山博一君が4位フィニッシュを果たしてくれたのはうれしい成果ですね」
「そうですね。リザルトはともかくとしても、走行タイムはそれなりの高い安定した水準で出せるようになったので、苦手意識は克服できたといっていいのではないでしょうか」
「決勝はウエットコンディションだったので、身体に対する負担は小さかったといえます。なので、負傷の影響が出るには出たのですが、最後までなんとか持ちこたえることができました。開幕戦カタールのときのように完全に感覚がなくなるところまではいかなかったのですが、それでもやはりそれなりに感覚がなくなってきて、レース終盤には何度かクラッチ操作のミスもありました。残り10周あたりになると、本人もかなり辛かったようです」
「あれは、タイヤを温存するためにあえてペースを落としていたんです。走行データを見ても、序盤は全然全開にしていません。最初からあのペースでプッシュし続けると最後まで走りきれない、という判断でした。最初からいいペースで飛ばしてタイヤを摩耗してしまうと、中盤から終盤は滑るマシンをコントロールするのに体力を使わなければなりません。したがって、最初のうちはあえて温存する方法をとった、ということなんです」
「そうですね。転倒したあと、金曜の午後は違うセットアップのマシンにも乗ってもらったのですが、本人もいいフィーリングをつかみきれない様子でした」
「タイヤを使い切ってしまったんです。オーバーヒートしたために途中からまったくグリップしなくなってしまいました。今回は残念な結果ですが、次のレースへ向けた教訓として生かしてほしいと思います」
「博一君は今回がMotoGP初のウエットレースでした。昨年も、ごくわずかにウエットコンディションのセッションを経験していますが、長丁場のレースという意味では今回が初めて。そう考えると、とてもよくがんばってくれたと思います。ウエットレースは初体験なだけに、序盤は彼自身もペースをつかみきれない様子がうかがえたところがやや残念ですね。ただ、そのペースをつかめなかったことが結果的に幸いしてタイヤの温存につながり、後半の猛追に結びついていった、ともいえるかもしれません。今回のレースはとてもよくがんばってくれたし、それだけにあと一周あれば3位表彰台を狙えたかもしれないので、その意味では惜しいレースだった、とも思います」
「ライバル陣営を相手に十分戦っていけそうだという感触はつかみましたね。とはいっても、まだまだやらなければいけないことがあるし、今回のレースを経て新たな課題も出てきているので、第3戦までの時間にそれらの課題を徹底的につぶしこんでいく予定です」