いよいよ10月1日から、栃木県・ツインリンクもてぎで第14戦日本GPが開幕する。シーズン後半戦を迎えたHonda陣営は、Repsol Honda Teamのダニ・ペドロサがインディアナポリスGP−サンマリノGPの連勝を含む4戦連続表彰台、チームメートのアンドレア・ドヴィツィオーゾも、激しいプッシュの結果、ときに転倒することもありながらも、表彰台に迫る走りで、毎レース意気軒昂な姿を披露している。目前に迫る日本GPへかける意気込みと後半戦に向けた決意を、HRC総監督の山野一彦が語る。
「ダニはこの数戦、非常に順調に推移しているといっていいでしょう。マシン面ではシーズン中盤までにモディファイしたものを後半戦につないでいくという流れで、フレームやスイングアーム、電子制御などの仕様はほぼ固まっています。このベースで多く周回を重ね、レースのシミュレーションに取り組むという<勝ちパターン>のセッションを実施し、実際の成績も総じて伴ってきています。ライダーもチームも非常にいい状態で、自分たちが思い描いているとおりに進めていけば勝てるのだ、という自信にもつながって、全員の思いがようやくここに来て実りつつある、という状況です」
−インディアナポリス、ミサノと連勝を飾ったダニは、アラゴンでも3連勝を達成しそうな勢いにも見えました。実際には2位に終わったわけですが、勝利を逃した原因はどこにあったのでしょうか?
「土曜から日曜にかけて大きく路面コンディションが変化したことも要因の一部ではありますが、それ以上に、路面状態とタイヤの合わせ込みが最終的にうまくいかなかったことが最大の理由だと考えています。
ブルノ以降のダニは、自分のライディングをマシンに合わせるということに取り組んでいて、アラゴンでもライディングをモディファイすることによって路面とタイヤの適合性を向上させてきました。が、日曜は一気に気温と路面温度が上昇し、最終的にタイヤとのマッチングが悪くなってしまいました。そのような状況下で、スタート時の1コーナーでリアタイヤをスライドさせ、その間にストーナー選手やロレンソ選手を逃がしてしまうという失策を犯してしまいました。5番手くらいに順位を下げた状態から追い上げて行く際に、タイヤを使ってしまったのです。2番手まで回復してからプッシュを開始し、ストーナー選手を追いかけたのですが、タイヤのいいところをすでに使ってしまっていたので、温存する走りにならざるをえませんでした。本人は当然3連勝を狙っていたので2位は残念ですが、今回の2位は優勝に匹敵する2位だったとも思います」
−乗り方を変えてきている、というのは具体的にどういうことですか。
「一番大きいのは、スロットルワークですね。ライダーのフィーリングでは、コーナー立ち上がりで早くマシンを起こしてスロットルを早く開ければ、駆動力を100%伝えて早く加速していくように思いがちなのですが、実際にはゆっくりとスロットルを開けることによって、コーナリングの立ち上がりのスピードは体感上遅くなっても、マシンが暴れるのを極限まで抑えて挙動が安定する分、トータルタイムも速くなるんです。そういったことがらをダニ自身が学びとって、標準的なスタンダードセッティングでもこのスロットルワークを実行するようになっています。ここ数戦のトップスピードを見ると、ダニは非常に速いのですが、あれはエンジンや電子制御で特別なことをしているわけではなく、コーナー立ち上がりのスロットルワークでダニ自身がいいものを学びとって掴んだことにより、速さにつながっているのだと思います。シーズン当初から『いい手応えがある』と言ってきたことをようやく実証できるようになった、という印象ですね」
−一方、チームメートのドヴィツィオーゾ選手は、この数戦、少しリザルトが安定していないようにも見えます。
「皆さんご存じのように、来年の動向を含めて、アンドレア自身が少し悩んでいるのは事実です。そういったこともあって、少し走りに乱れが出ているのかもしれません。どうしてもハードに奥の方まで行ってしまうブレーキングや深いバンク角といった彼のウィークポイントが、シーズン中盤頃は改善されてうまくまとまってきたのですが、少し集中力を欠いてしまうのか、最近はその部分の乱れがやや多く見受けられるようになっていました。
アラゴンのレース後にも彼と話をしたのですが、もてぎではチームも本人もそれらの問題を一蹴し、表彰台を目指してがんばる、と言っていました。私自身も、メンタルケアを含めたコントロールが不足していたことは反省材料なので、もう一度そこをしっかり見直してアンドレアの成績回復にうまくつなげていきたいと考えています。本人のライディングやセットアップの各方面で早く勝ちパターンに持って行けるように、チーフメカニックやスタッフ、ライダーと話をしているので、もてぎ以降の5戦でそれを早く実証していきたいと思います」
−予選までの組み立てが、決勝レースにも大きく影響しているということでしょうか。
「そのとおりです。低いグリッドポジションが、結果的にレースにも影響しています。今シーズンのグリッドは最低でも2列目までという目標で取り組んできましたが、ここ数戦はどうしても3列目に落ちてしまっています。予選までの取り組みと、予選から決勝にかけての取り組み、という二段階で考えたときに、ファーストステップである予選までの取り組みを、最低セカンドローに入るためにはどうすればいいか、ということをチームの中で再度話し合って、しかも、明確にしなきゃいけないね、と。話し合うだけじゃなくて具現化しなきゃいけないね、というところまでは話をしているので、もてぎは楽しみに見ていてください」