−サテライト勢は、ラグナセカではメランドリ選手が最上位の8位でした。
「ザクセンリンクのウィークでは、アッセンで痛めた肩がまだ完治しておらず、ツイスティなコースレイアウトもあってレースに影響を及ぼしたのですが、ラグナセカではさらに日数が経過して肩の状態もさらに改善していました。いかんせんマシンセットアップが日曜朝までうまくまとまらない状況で、ぶっつけ本番で決勝に臨んだために、リスクを抱えたレースになってしまいましたが、その状況下でもマルコがなんとかコントロールして8位フィニッシュをしてくれた、というのが今回の結果です」
−チームメイトのシモンチェリ選手は、転倒リタイア。
「ダニと同じ場所での転倒でしたね。250cc時代はラグナセカでのレースがなかったので、彼にとっては今回が初めてのアメリカGPです。その状況で、フリープラクティスから精力的に走りこんでいる姿が印象的でした。結果的にはけっして良いとはいえないレースでしたが、セットアップやコース攻略で自分のオーバーキャパシティになったときにどうなるかということの、いい学習にはなったと思います。ただ、初体験のサーキットでも、からだをいち早く馴染ませて他のライダーの走りを吸収しながら自分のなかに採り入れていくスキルは高いですね。ラップタイムもみるみる早くなっていく。あとはそれをどうやって結果に反映していくか。これから後のレースもしっかり完走し、次のレース、そして来年に向けて経験をしっかりと積み上げていってほしいですね」
−一方、シーズン序盤から好調だったランディ・デ・ピュニエ選手が、ザクセンリンクで転倒して負傷。今回は代役としてロジャー・リー・ヘイデン選手が走ることになりました。
「ロジャーは、AMA等の経験が豊富で、ラグナセカのコースは充分すぎるくらいに知っていますが、HondaのMotoGPマシンで走るのは今回が初めてでした。その状況をチームがうまくコントロールして、毎セッションラップタイムを上げていきました。最終的に11位でフィニッシュできたのは、ロジャーのスキルとチームの運営力がうまく噛み合った証拠で、初めてのHondaでのMotoGPでも、果たすべき仕事はきっちりと果たしてくれました。ロジャーがいい仕事をしてくれたおかげで、チームとしても次につながるいい結果を得られたと思います」
−デ・ピュニエ選手の復帰はいつ頃になりそうな見込みでしょうか?
「それほど複雑な手術でもなく、術後の経過も良好なので、ランディ自身のターゲットとしては次戦のブルノ(チェコGP)を目標にしているようです。今回負傷した脛骨と腓骨は、昨年負傷した左踵の上部で、シフトチェンジの際に大きな負荷のかかる場所なので、チームオーナーのルーチョ・チェッキネロ氏とランディがうまく相談しながら、高いリスクを背負わずに復帰できるタイミングを見極めてほしいと思っています」
−負傷欠場中の青山博一選手の代役として、今回の2連戦に参戦したアレックス・デ・アンジェリス選手のパフォーマンスはいかがでしたか。
「彼は去年HondaでMotoGPクラスに参戦してくれていたので、コミュニケーションという面ではなにひとつ問題はありませんでした。インターヴェッテンHondaも、チームとしてのスキルが高く、代役選手に合わせてセットアップを進め、アレックスもそれに合わせて走ってくれたものの、現実としてはうまく噛み合わなかった部分もありました。青山君が詰めてきたセットアップと代替ライダーが求めるものが若干ちがうこともあるので、そのあたりのさじ加減が合わないときはセットアップが難しくなることもあるのですが、チーム力向上という意味ではいい経験になっていると思います。
アレックスからは、昨年のサテライト仕様のマシンと比較すると今年は格段によくなっている、というコメントをもらっています。去年のマシンに乗っていたライダーから与えられる評価や意見は、有意義で貴重ですね」
−青山選手の復帰目処については、どのような感じでしょうか。
「一刻も早い復帰を目指し、精力的にリハビリをしているところです。完全な状態にして完全なレースをしたい、というのが、青山君とチーム、そして我々の共通した見解です。復帰した段階から即座に全力で戦えるようにしたいので、現在はトレーナーやチームとベストのタイミングを見計らっているところです」
−さて、今回のレースで、シーズン全18戦のうち9戦を終えました。前半戦の総括をお願いします。
「勝ち星をどんどん増やしてチャンピオンシップをより優位に、というのは誰しも考えることだと思います。強力なライバル陣営とライバル選手たちに対して、我々Hondaは総合力で立ち向かう意気込みで前半戦を戦ってきました。ダニの転倒で終わってしまったのは残念ですが、総じて言えば、一気に巻き返していくべきシーズン後半にむけて、弾みがつく結果をたくさん得られたと考えています。後半9戦は、全部勝つつもりで臨みます。
開幕前にはなかなかマシンのセットアップが進まず、開幕後も序盤数戦はうまくまとまりきらなかったのが、中盤になると勝つこともでき、各ウィークを通してダニもアンドレアも安定して上位を占めるようになりました。歯を食いしばって戦ってきた前半戦を踏まえ、もちろん両手を挙げて喜べる結果ではありませんが、さらにステップアップしていくべき後半に向けて、手応えのある足がかりになった前半戦でした」
−現在ランキングトップのロレンソ選手とは72ポイント差。この現状をどう捉えていますか?
「この現実を謙虚に受け止めたうえで、我々にできる戦いはといえば、あとはもう勝ち星を増やすしかありません。相手がどうであれ、ダニもアンドレアも自分の走りで勝利を収め、Honda勢が上位を独占する。選手たちが総力を結集して、上を向いて戦っていくなかで、この72点という差をどこまで縮めていくことができるのか。我々にできることを確実に、一歩一歩進めていきます。けっして諦めることはありません。最終戦のチェッカーが振られる前に気持ちが折れたり無理だと諦める人間は、さいわい、Hondaのチームやライダーの中には、ひとりもいません。戦う前から負けているようなら、レースをやる意味は何もない。ネバーギブアップ、と口で言うのは簡単です。私たちはそれを自分たちの行動で示し、後半戦の始まりとなるブルノで実証します」
−では、サマーブレイク開けの第10戦チェコGPに向けた抱負をお願いします。
「レースそのものも大切ですが、ブルノではレース後に事後テストを実施します。今年2回目、シーズン中としては最後のテストになるので、非常に貴重で重要なテストです。この事後テストで試したパーツをミザノで実戦投入し、その勢いで後半戦を戦っていくという流れにしたい、と考えています。そして、このブルノ事後テストを精度の高いものにするためには、前日までのレースウィークの取り組みが重要になります。このレースウィークにも、新しい仕様の投入が可能であれば、どんどん入れていくつもりです。第10戦から新たなチャレンジが始まるという精神で取り組んでいきます。
シーズン中盤まできて、セットアップの方向性も迷いなく決まっているので、あとはその精度を上げていくのみです。日本の開発陣とレース現場の一体感は確実に上昇しており、総合力が上がっている手応えを実感しています。皆様の応援が、チームとライダーにとって何よりの励みです。第10戦、そして後半戦も熱く大きな声援をよろしくお願いいたします」