第8戦ドイツGPと第9戦アメリカGPは、ふたたび2週連戦のレース。2連勝の意気込みで臨んだRepsol Honda Teamのダニ・ペドロサは、公約どおりまずはドイツで完勝。勢いよく北米大陸に乗り込んだが、トップを独走中の12周目に運悪く転倒。今季初のノーポイントレースとなった。チームメイトのアンドレア・ドヴィツィオーゾは、ドイツで5位、アメリカでは4位を獲得し、ランキング3位をキープしている。前半9戦を終え、シーズンの折り返しとなったこの2戦を、HRC総監督山野一彦が振り返る。
「ザクセンリンク(ドイツGP)を振り返ると、ダニは今までにない力強い勝ち方で今季2勝目を獲得してくれました。ライバルたちをよく観察し、自分の判断でタイミングを見計らって引き離していく勝ち方ができたのは、本人はもちろんチームにも大きな自信になり、その勢いを駆ってラグナセカ(アメリカGP)に乗り込みました。
ラグナセカでは昨年も優勝しており、相性も良い得意コースなので、いい手応えを掴んでいました。フロントまわりの接地安定感に関しては、最初は若干の不安を抱えていましたが、セッションを重ねていくにつれ、かなりいいところまで仕上がりました。決勝前には、ダニ自身も、『今回は、勝つか転ぶかどっちかだね』と話していて、私もこういう性格なものですから、『大事をとって守りに入るような走りは必要ない。勝つか転ぶかという勝負なら、とことん攻撃的に走ろうじゃないか』とレースに送り出しました。
スタートではいつものように飛びだして、ラップタイムも1分21秒台後半で周回を重ねていきました。ところが、12周目の5コーナーでバンプ(路面の凹凸)に乗り、運悪く転倒リタイアになってしまいました。あそこにバンプがあることは本人も理解しており、特にあの周回だけラインを変えたということもなかったのですが、いつもとちがうような弾かれかたをして、足下をすくわれる格好での転倒になりました。回避できる状況ではなかったので残念な結果ですが、さいわいケガもなく、転倒までは攻めの走りでタイムも安定していたのは好材料だったと思います。転倒直後はさすがに本人もチームも落胆しましたが、30分もすると気持ちを切り替えて、次のレースへ気持ちを前向きに切り替えていましたね」
−転倒する直前の数周は、後続選手と約0.2秒ずつ縮まってきた状況でした。焦りのようなものはなかったのでしょうか?
「ロレンソ選手やストーナー選手という強力なライバル勢が追い上げてくることは、レース前にも想定できていたし、ダニ自身もレースの流れの中で把握をしていました。後ろから追いついてきた場合、あるいは追い抜かれた場合でも、どうやって抜き返すかというシミュレーションも充分にできていました。自分の走りをすればいいという自信は揺るがなかったので、焦りのようなものは特にありませんでしたね。実際に、転倒したセクター1の区間ラップタイムは前の周と変わっていませんし、走行データ上でも走りが乱れてきた様子は一切見受けられませんでした」
−ドヴィツィオーゾ選手は、ドイツで5位、アメリカで4位という結果でした。
「ラグナセカは彼も好きなコースなのですが、昨年は転倒リタイアしています。ただ、その原因は究明済みなので、集中してセットアップを進め、今季初のフロントローを獲得することができました。
スタートは悪くなかったのですが、1コーナーから2コーナーにかけてラインが他の選手とクロスしてしまい、そこで若干ペースが乱れ、その後、トップ集団が逃げていく展開となりました。決勝レースで周回を重ねていくにつれ、フロント回りの信頼感に少し問題を抱え、特に後半セクションで若干タイムロスする厳しい状況でした。ダニが転倒したあとも3番手をキープしていたものの、最後はかわされて4位に終わってしまった理由の中には、ハード的にリスクを負っていることがあったのは事実です。それはもちろん回避していかなければいけないこととして、ただ、ライダーももうひとふんばり頑張らないと、やはり表彰台は獲得できない。反省すべき点のあるレースでしたが、なぜ4位になってしまったかということは、チームの中で充分に反省し、次にすべきことをミーティングで見いだせているので、その意味では収穫も得られたレースでした」
−コース後半セクションで厳しかった、というのは、ブレーキングの問題でしょうか?
「そうです。ブレーキングでの接地安定感です。ただ、マシンの改良とともにブレーキング性能は向上していて、最終コーナーも昨年と比べると格段に良くなっています。それでも、周回を重ねてタイヤを消耗してきた頃のブレーキング安定性は、まだまだ改良の余地があると再認識しました。かなり良くなってきたものの、ライバル陣営に対してはまだまだ劣っている、というのが我々の現状だと捉えています」
−ドヴィツィオーゾ選手は、ここ数戦、表彰台を逃しています。
「アンドレアはセットアップに対する迷いがなく、セッションを通して常に上位の位置を占めています。ただ、レースでの走りをもう少し改善しなければ安定して表彰台に上れないし、ましてや優勝もできません。現在、我々が目標として取り組んでいるのは、レースアベレージです。レースアベレージを上げるためには、フリープラクティス1回目からマシンを仕上げ、レース仕様で長く周回する必要があります。そうやって周回を重ねていくなかで、レース時に発生しうる事象を早く掴む、ということをターゲットにして取り組んでいるのですが、それがまだ結果につながっていないのは、我々の取り組みが完璧ではないということなので、今後は今までにも増して全力を集中して取り組んでいきます。これが形になれば。アンドレアの場合には安定して表彰台に立てるでしょうし、ダニで言えば安定して勝てるでしょう。そこまでチームの総合力を高めていかなければならない、と考えています」