第4戦イタリアGPは、Repsol Honda Teamのダニ・ペドロサがポール・トゥ・フィニッシュの完璧なレース運びで今季初優勝を達成した。チームメイトのアンドレア・ドヴィツィオーゾは、最後まで2位争いを繰り広げたものの惜しくも3位フィニッシュ。今季初のダブルポディウムを獲得したレースの一部始終を、HRC総監督の山野一彦が振り返る。
「今年のマシンは、プレシーズンのウィンターテストからライダーにとってなかなか満足の行く水準には達しませんでしたが、開発陣の全面バックアップのもと、毎戦着実に改善と進歩をしてきました。今回のレースでは、金曜のフリープラクティス1回目からダニ自身も『マシンからいいインフォメーションがある。マシンの挙動に先回りして体を動かしていける』と評価してくれる仕上がりになりました。その結果、各セッションで着実にレースをシミュレーションした取り組みを重ねて行けたことが、今回の勝利につながったのだと思います」
−今回の仕様で一段とマシンの戦闘力が向上した、ということでしょうか。
「車体についてはディメンションと剛性をさらに煮詰め、また、エンジンや電子制御を含めたトータルパフォーマンスが向上したと感じています。本来ならば、ウィンターテストの段階でこの水準まで戦闘力を引き出しておかなければならなかったのですが、ようやく今回のムジェロで、ファインセッティングまでできるようになってきました。我々はライバルに向かって挑戦していく立場である以上、ライダーにとって完璧な仕様などはもちろんありえないのですが、ある程度互角に戦えるところまで到達した手応えは感じています。
Hondaとしてムジェロで表彰台の頂点に立つのは2003年以来なので、その意味でも今回の勝利は大きな意義がありますね」
−金曜からのセッション全体の推移を見ても、ペドロサ選手は万全の展開に見えました。
「フリープラクティス1回目から仕様が決まり、2台のマシンをうまく活用できる状態だったので、サスペンションにしてもタイヤ選択にしても、ファインセッティングに取り組めたことが強みになりました。時間軸的にもプログラムの内容的にも、チーフメカニックやダニ自身、そして山路監督や私の描いている勝ちパターンどおりに進めてゆくことができました。とはいえ、正直なことを言えば、レース後半になるとラップタイムが落ちてしまうという課題はまだあります。それを次のシルバーストーン以降の三連戦でクリアして、シーズン中盤戦を戦って行きたいと思います」
−一方、ドヴィツィオーゾ選手は今回も3位。安定して表彰台を獲得していますね。
「これはひとえに、ライダーのがんばりです。チャンピオンシップを考えると安定して好成績を残すことが重要で、そのためには何をしなければならないのか、ということをしっかり考えてアンドレアは毎セッションに取り組んでくれています。強いて言えば、予選順位が現在の課題です。今年はまだ、一度も2列目以内のグリッドを獲得できていません。今回も3列目スタートで、スタートに成功したとはいってもそこには当然リスクが伴っているわけで、序盤に前へ出られなければ優勝争いから大幅に遠のいてしまいます。次戦以降は、最低でも2列目獲得が必須ですね。これはチーム全員の課題ですが、アンドレア本人が一番気にしている項目でもあるので、次のシルバーストーンではこれをクリアしながら、今回以上の結果、2位と1位を目指していきます。アンドレアはウィンターテストから全体的によくまとまっていて、シーズンに入っても大きな仕様変更がありません。サーキットの特性に合わせてセッティングをしながら走りに集中しているので、マシンの仕様をあまり変えていないこともプラスに作用していると思います」
−Repsol Honda Teamの両選手が表彰台を獲得したのは、今シーズン初めてです。
「今年に入ってから、ダニとアンドレアが会話をしている光景をよく見かけます。互いに相乗効果で、戦う前はいい関係を築けているようですね。コースに出てしまえばライバル同士になりますが、終われば各自の健闘を讃え合っているので、そういう意味でも今年のRepsol Honda Teamには去年以上のものがあるな、と実感しています。私自身も、今年の組織変更により今までとは違う視点でチームやライダーを見ることができています。ひとえに山路監督以下、プーチ監督の率いるダニチームとベルッティ監督率いるアンドレアチームという体制がうまく機能しているおかげだと思っています。今後も、いいリザルトを継続することでこの手応えをもっと実証していきたいですね」