2010年第2戦スペインGPは、当地がホームグランプリとなるRepsol Honda Teamのダニ・ペドロサが予選でトップタイムを記録してポールポジションを獲得。決勝レースでも最後ラップの最終コーナーまで激しい優勝争いを繰り広げたが、惜しくも2位フィニッシュ。チームメイトのアンドレア・ドヴィツィオーゾは9番手スタートながらレース序盤に順位をあげ、6位でチェッカーを受けた。Honda陣営の着実な前進と次回へ向けた展望を、HRC総監督・山野一彦が語る。
「今回のレースでは、ダニは現状のパッケージでフルに力を発揮してくれたと思います。総じて言えばマシンがまだ完璧ではなく、ナーバスな挙動を示すところがあるのですが、それを自分のライディングで補いながら全力でレースをしてくれました。総レース距離はどのコースも大差はないのですが、ここは一周が短いために周回数が多くなり、マシンの挙動をカバーしながら走ることで生じる体力的な消耗をどうしても避けることができませんでした。最後のロレンソ選手とのバトルでも、あっさりとかわされてしまうのではなく、何度も彼のアタックを応戦して防ぎ、ブレーキングでがんばる姿が印象的でした。最終的に2位という結果は、ダニも私も非常に悔しく感じているのですが、現状でベストのレースをしてくれたと思っています。レース後には、『ありがとう、よく頑張ったね。』と声をかけました。
また、新しいパーツを投入していくなかで、メカニックたちも連日のハードワークを精力的に進めてくれました。その姿を見ているライダーが走りで応えようとしてくれているので、チームの結束力は一層高まっていると感じています。早くトップに追いつかなくてはいけない現在の状況を、この勢いで一丸となって邁進して行けますね」
−今回のレースでペドロサ選手に投入した新しい車体は、「改善されているけれども、まだ完璧ではない」ということでした。目標としているところまで、現状ではどれくらい近づけているのでしょうか。
「予選ではポールポジションを獲得しましたが、その際にも、『ハンドルが振られる』『スタビリティに欠ける』などと率直なコメントをしていました。見ていただいてもおわかりのとおり、現状の我々のマシンは、ライバル陣営に対して上回っているとはとてもいえない状況です。それは包み隠すことなくオープンになって当然のことです。この現実を踏まえたうえで、勝利を目指して頑張る我々の姿をリアルにお伝えし、それを皆様に応援をしていただければ幸いだと思っています。今、この場ではっきりと言えるのは、我々のマシンはライダーが臨んでいる完璧な水準にはまだなく、ライディングに対してナーバスな挙動を示す状態にある、ということです。この状況を改善するために、月曜日にここヘレスサーキットで行われた事後テストでもさらに新しいパーツを投入して、車体やエンジンの改善にトライしました」
−一方のドヴィツィオーゾ選手は、レースウィークを通じて少し苦労していたようにも見えました。
「アンドレアもコメントしていましたが、125ccや250cc時代から、彼はこのコースに対して少し苦手意識がありました。しかし、それはいつか克服をしなければいけないことなので、今回も精力的に様々なトライをしてくれました。セッションごとにタイムをあげながら、苦手意識を徐々に克服して本番に挑む状況になっていったのですが、決勝ではスタートで少しミスをして出遅れてしまいました。9番グリッドで本人も少しナーバスになっていたのかもしれませんが、クラッチなどのスタート仕様がうまく噛み合わなかったことが原因です。ただ、その後は周回を重ねるごとに前のライダーに追いつけ追い抜けで頑張ってくれたものの、最終的には若干疲れが出てしまったようです。ダニと同様に、アンドレアもマシンに対してナーバスに感じてしるところがありライダーへ負担をかけ、後半にタイムが伸び悩んでしまいました。アンドレアのレース後のコメントでは『フルバンク時に充分なグリップを引き出せないセットアップだったことが、今回の6位という結果になってしまった』ということでした。その意味では課題が明確になったので、翌日の事後テストでもこの問題に取り組み、セットアップをさらに進めた状態で次のルマンGPに向かうことができます」
−ドヴィツィオーゾ選手には、新しい車体を投入していたのでしょうか?
「テストでは使用しました。レースウィーク中は、もともと苦手意識のあるコースだったので、仕様をどんどん変えていくとかえって混乱を招くことにもなりかねないため、レプソル・ホンダ・チーム監督の山路(やまじ)とアンドレア自身が相談した上であえて投入をしませんでした。その分も、月曜のテストでは精力的にメニューに取り組んでくれました」