2010年シーズンのMotoGPが、中東の地カタールで開幕した。首都ドーハ郊外のロサイル・インターナショナル・サーキットで4月11日深夜11時から行われたナイトレースでは、Repsol Honda Teamのアンドレア・ドヴィツィオーゾが3位表彰台を獲得。一方のチームメイト、ダニ・ペドロサは7位でフィニッシュ。深夜のナイトレース、という過酷な条件下で繰り広げられた激しい攻防の内幕とシーズン今後の展望を、HRC総監督・山野一彦が語る。
「シーズン最初の戦いで、アンドレアが表彰台の一角を占めてくれました。次のもてぎに向けてモチベーション高く乗り込んでいける3位表彰台でしたが、これはひとえに彼の頑張りによるものです。レースをご覧いただければおわかりのとおり、我々のマシンはまだ完璧とは言えない状態です。ライバル陣営に追いつけ追い越せという状況下で、今年のアンドレアは、チームとともに冷静に様々な事象に対処をしています。マシンに対してはもちろん、自分の走りの改善やチーム力アップにも落ち着いて取り組んでいる姿勢が、今回の結果につながったものと考えています。その意味では、アンドレアのチームは、ライダー、チーム、マシンという全体がしっかりと噛み合った一枚岩の状態で、もてぎに乗り込んでいけます」
−一方のペドロサ選手は、今回は苦労して7位に入ったという印象があります。
「7位という結果には、本人も納得していないしチームも納得していません。今回苦戦を強いられた理由は、ダニのマシンの挙動にあります。なぜそのような挙動を起こしてしまうのかということについては、今回のレースを通じてかなりの絞り込みができました。次戦に向けた課題は抽出できたので、早速モディファイを施してもてぎに備えたいと思います。今回のレースは、一歩間違うと転倒のリスクが高くなるような状況でしたが、そのリスクを避けるためにダニは最大限のペースコントロールをして、なすべき仕事をしっかりと果たしてくれました。レース後のミーティングでも、問題解決に向けた項目のプライオリティをしっかり提示してくれて、我々もそれを受け止めて問題解決への整合は取れています。年間18戦の第一戦で優勝できず、また、表彰台も獲れなかったのは非常に残念ですが、7位でゴールできたことにより得たものも多く、私自身としては今回の結果をポジティブに捉えて、次に向けて動きだせると思っています」
−ドヴィツィオーゾ選手、ペドロサ選手ともに、フリープラクティスからの好不調の流れがそのまま、レースのリザルトに反映されたように見えます。
「その意味では、ウィンターテストからの結果が反映された、といえるかもしれませんね。アンドレアの場合は、彼のライディングスタイルにマッチしている、という意味でマシンとの合わせこみがうまくいっているのですが、ダニのライディングスタイルには、まだ合わせこめていません。これは青山君に関してもそうだし、グレッシーニの2台についても同様です。今回のレースでは明暗がくっきりと分かれる格好になりましたが、タイムを出せないライダーは、ハンドリングという同一の課題を抱えています。Honda陣営全体でリザルトの上位を占めるためにも、この問題点については早急に手を打って解決していかなければいけないと考えています」
−グリップを出そうとするとハンドリングが重くなってしまうという、バランスの問題でしょうか?
「グリップを出そうとすると、当然、ハンドリングはヘヴィになってしまいます。ハンドリングがヘヴィになると旋回力を失って速く走ることができない。しかし、旋回力を重視するセットアップに持っていくと、今度はグリップが低下するので、そこをどうバランスさせるか。アンドレアやランディが高パフォーマンスを発揮したのは、彼らのライディングスタイルとマシンバランスの合わせ込みがうまく行ったことが大きな要因で、レベル的にはHondaのマシンはまだ決して高いものではありません。
カタールのコースは、深いバンク角を多用しながらマシンを走らせていくようなレイアウトなので、この特性に合ったライディングスタイルを持つアンドレアやランディのようなタイプの選手は比較的セットアップしやすかったのだと思います。一方、コーナーエントリーから旋回速度を上げていき、クリッピングポイントからコーナー脱出でスピードを稼ごうとするタイプのライダーには、このサーキットのレイアウトもそうだし、マシンのセットアップも後手後手に回りがちだった、というのは私自身の中でも感触として持っているんです。ただ、いずれにしてもライダーには自分の乗り方をしてもらって、そこに対してマシンを準備する、というのが我々の仕事です。それが今はまだできていないからこそ、Honda勢が上位に食い込んでいけない。大きな原因のひとつは、そこにあると思います。問題解決に向けて、当然もう着手はしていますが、もてぎ、ヘレスの前半3戦が終わった頃には解決をしておかないとチャンピオンシップでも非常に厳しくなるので、今は早急に問題解決に取り組んでいるところです」