HRC総監督 山野一彦の現場レポート

−Honda勢が一歩進んだことに対して、ライバル勢がさらに二歩三歩先に進んだ、という印象でしょうか?

「まだまだ足りないですよ。『こんな程度じゃまだ勝てない、甘いぞ』ということを思い知らされました。これを受け止めて、次のカタールでばん回したいと思います。テストだから勝負は関係ない、ということにはなりません。テストでも、その内容にはこだわりたいと思います。また、実は今回のテストでは、ピット内にウェブカメラを設置して、現場での状況を日本にライブ通信していたんです。日本側にも同じような環境を作り、その様子を現場の私たちが見られるようにしていました。日本にいる設計・開発陣と現場のスタッフは、それぞれいる場所が違っても同じ空間を共有できるようにし、一体感を持って作業を進めるという実験的な取り組みです。これについてもいろんな反響が返ってきたので、今後に向けていい材料になったと思っています。
 選手からのフィードバック、ということに関しては、ダニとアンドレアもそうですが、サテライト勢のランディや青山君、メランドリとシモンチェリも、2010年仕様のRC212Vをセットアップしていく過程で多くのヒントを与えてくれています。彼らのコメントに真剣に耳を傾け、対応できることは可能な限り迅速に対応していきたい。Honda全体の総合力で勝利を目指すためにも、今回のテストで得られたデータを検討し、次回のテストに備えます」

−サテライト勢では、シモンチェリ選手が2日目に大きな転倒を喫したようですが。

「転倒したという第一報を聞いたときは頭を打って首も痛いということだったので、病院でCTスキャンを撮ることにしました。さいわい骨折などの大きなケガはなく、全身打撲と首筋の疼痛ということで、少しホッとしました。その後サーキットへ戻ってきて、午後に私がコースサイドで選手たちの走行を見ているときにシモンチェリがチーム監督のファウスト・グレッシーニと一緒にやってきたので、そこであらためて話をしました。開口一番『転倒してごめんなさい』というので、どうしてごめんなさいと思うのかとたずね、話をしながら彼の考えをよく聞いていくと、転倒に至る過程をしっかりと分析して反省してくれていました。また、『走れないのは悔しいけれど、他のライダーの走行を見て、少しでも自分のプラスになるように吸収して帰りたい』と言っていたので、この選手はさらにもう一つ上の段階へ進んでいくな、と実感しました。その意味ではうれしかったですね。とにかく大きなケガがなかったのは、本当によかったと思います」

−次回のカタールテストへ向けた課題を教えてください。

「今回のテストで6人の選手から得たコメントをもとに、我々が対応していくための課題抽出をさらに深く行い、的を絞った形でしっかりと準備を進めていきます。カタールは開幕戦の事前テストという意味合いも重要なので、ワンアイテムならワンアイテムと決めて、シンプルかつ明快な形で取り組むように進めていくつもりです。開幕戦を目前に控えて、ライダーの挑戦が本格的になってくるので、地に足をつけたテストにしたいですね。手応えと実りのある内容にするために、今は気を引き締めて全力でテスト準備をしているところです。皆様のご期待に添える成果を引き出せるよう、万全の体制で最後のカタールテストに向かいます。皆様の応援をよろしくお願いいたします」

| page1 | page2 |