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宮城光の2010シーズンプレビュー

Honda、MotoGPプレシーズンテストをブランニューマシンで好発進

ダニ・ペドロサ2009年最終戦バレンシア、シーズンの締めくくりを快心の走りで見事トップチェッカーを受けたダニ・ペドロサ。その走りには、2010年への熱い気持ちも込められていただろう。また250ccクラスでも、青山博一が8年ぶりに日本人の世界チャンピオンを獲得するなど、09年のロードレース世界選手権(WGP)も、例年に増して我々に多くの感動を与えてくれた。

そんなグランプリライダーが唯一休めるのが、12月から1月までのテスト禁止期間中だ。とはいっても、イベントやプロモーションなどへの参加や、楽しいクリスマスやニューイヤーパーティばかりでは身体もなまってしまう。そのために、決められたハードなトレーニングメニューもこなさなければならないのがグランプリライダーなのだ。オフシーズンとは名ばかりで、ライダーには本当の休息などないのかもしれない。

そのわずかな時間を経て、いよいよ10年シーズンに向けての合同テストが赤道直下のマレーシア・セパンサーキットで開催され、今季MotoGPクラスに参戦する総勢17名のライダーたちが勢ぞろいした。もちろん、6名のHondaライダーも久しぶりに顔を合せることになった。

Repsol Honda Teamからはおなじみのダニ・ペドロサ、そしてアンドレア・ドヴィツィオーゾはファクトリーライダー2年目のチャレンジとなる。ペドロサは、このオフの間に昨年のウィンターテストで痛めた左手首に埋め込んでいたボルトを取り除き、さらにはフィジカル面での強化を図ってきたとのこと。期待ができる!

LCR Honda MotoGPからはランディ・デ・ピュニエが契約更新して今年も参戦する。注目は3年振りにHondaに復帰したマルコ・メランドリ。彼は恩師ファウスト・グレッシーニ監督率いるTeam San Carlo Honda Gresiniへ戻ってきたのだ! Hondaライダーとして活躍した05年から06年の間、数多くの表彰台と優勝経験があることからも、より一層期待が高まるところだ。

青山博一そしてもう一人話題に上がるのは、なんといっても08年250ccチャンピオンのマルコ・シモンチェリ。メランドリのチームメートとしてグレッシーニに加入した。また09年250ccクラスチャンピオンの青山博一がInterwetten Honda MotoGPから参戦し、昨年の250ccクラスでし烈極まるチャンピオン争いをしてきた2人が、Hondaのルーキーライダーとして今シーズンはMotoGPクラスにフル参戦する。ペドロサやドヴィツィオーゾもかつては250ccクラスで激しい戦いを繰り広げてきた。2人の250ccクラスチャンピオンの参戦で、今シーズンも期待が高まる。

ここで、MotoGPクラスのレギュレーションが小変更されたことについて触れてみよう。

まず、プレシーズンテストの日程が変更された。昨年は3日間のテストが2回、2日間のテストが1回の合計8日間だったが、今季のプレシーズンテストは2日間のテストが3回と、合計6日間に削減されたのだ。2月3〜5日、同月24〜26日とセパンで、3月18〜19日に開幕戦が行われるカタールでテストが開催されるが、セパンテストではいずれも初日はテストライダーによる走行のみ。その後、シーズンを通して参戦するレギュラーライダーが2日間かけてテスト走行をする。いくら百戦錬磨のグランプリライダーとはいえ、テスト日数が減ることは厳しい。

しかし、厳しい話ばかりではない。今季からはすべてのMotoGPルーキーライダーに特別枠として3日間の走行時間が許されたのだ。シモンチェリと青山は特別走行として昨年12月下旬にセパンで十分に走り込みをしており、他のレギュラーライダーに対して少しでもいい条件で走行ができるようになっている。

また、車両面では、昨年から導入されたエンジン使用制限がさらに厳しくなり、年間18戦を最大6基のエンジンで戦わなければならない。各メーカーは耐久性をアップデートしたニューエンジンの導入が必須となった。つまり、1基のエンジンで平均3レースを走行しなければならず、1大会2回のプラクティスと予選、レース当日のフリー走行と約120kmにも及ぶ決勝レースでの走行と、1大会の合計約500km×3レース=1500kmの実走行を可能にする必要があるのだ。この新しいエンジン使用制限レギュレーションが、今季のレースにおいて各チームにどの様に影響しレースを左右するか、我々ファンとしては大いに気になるところである。

セパンテスト・1日目レポート(2月4日)

アンドレア・ドヴィツィオーゾセパンテスト初日、午前9時の時点ですでに気温は30℃をゆうに超えている。日本では冷え込むこの季節でも、赤道直下のセパンでは容赦なく太陽が照りつける。しかも、おなじみのスコールも日課だけに、コースには砂やホコリも多く出ているので、ライダーとしては特に初日の走行は十分に注意したいところだ。

Honda勢の各ピットには2010年型の真新しいRC212Vが勢ぞろいした。Repsol Honda Teamのマシンはすでにカラーリングが施され、新車であるがゆえの美しい仕上がりに、今季の活躍を予感せずにはいられない。一方でサテライトの各チームは、ドライカーボンの地肌そのままのボディーワークで迫力満点。もちろん、スポンサー各社のステッカーやチームのロゴはカッティングシート貼付されており、いかにも「テスト」といった出で立ちだ。Repsol Honda Teamの2台こそ、事前にテストライダーの秋吉耕祐によってシェイクダウンが行われているものの、サテライトのマシンを含め、今季のHondaライダー6名全員が2010年型を初めて走らせることになるのだ。

それぞれのピットを見てみよう。LCR Honda MotoGPはライダーのデ・ピュニエをはじめ、スタッフも慣れた様子で着実に準備を進めている。Team San Carlo Honda Gresiniでは、08年250ccクラスチャンピオンのシモンチェリがそのトレードマークの髪型をヘアーバンドでまとめてマシンにまだがり、ポジションチェックに余念がない。チームメートのメランドリは、スタッフが使用するヘッドホンタイプのピット無線を自ら装着してスタッフの会話を楽しんでいる姿も見せ、グレッシーニ監督をはじめスタッフも旧知の仲だけにメランドリ自身リラックスしている様子。スタッフへの信頼は絶大なのだろう。長年、Honda勢の一員として戦ってきたこのチームは、スタッフや設備も充実している。

青山博一一方で青山のピットは何もかもフレッシュな装いだ。Repsol Honda Teamをはじめ、プロトンKR、ハヤテ・レーシングなどMotoGPに参戦してきたチームの出身メカニックを招集し、新チームを立ち上げたのがInterwetten Honda MotoGPだ。青山は年末に行われたルーキーテストで、09年モデルのRC212Vを駆り、ライバルでもあるシモンチェリを上回る2分02秒30をマークしているだけにニューマシンへの期待も高まっている。

その青山がセパンテスト初日の9時17分、Hondaライダー6名の先陣を切ってコースインした。マシン確認のため、5ラップを走行し、6ラップ目にピットイン。メカニックがすべてのマシンチェックを行うために、18分のピットストップ後、再びコースイン。青山はルーキーであるがゆえに、誰よりも早くマシンに慣れ親しみたいという気持ちが伝わってくる。

Honda勢で2番目にコースインしたドヴィツィオーゾは、9時27分、マシンにまたがりピットアウト。2日間のスケジュールで、マシンのシェイクダウンからセットアップまで持ち込むために、1分たりと無駄にはしたくないのだろう。計測1〜2ラップこそ慎重にマシンを確かめ、3ラップ目からはペースを一気に上げてくる。何か手ごたえがあるのか、そう感じさせるペースアップ。そして、5ラップを回りピットイン。

一方、ペドロサは9時44分にコースインし、3ラップの確認走行後にピットに戻ってきた。テストといえ、MotoGPのエキゾーストノートで声がかき消されるピットで、身振り手振りを交えながらエンジニアにマシンの印象を伝えるペドロサ。その表情からは、明らかに昨年型のマシンとは大きくフィーリングが変わった印象を伝えているように見える。一通りのコメントをし、マシンには何の手を加えること無く、再びコースインした。

デ・ピュニエとメランドリがコースインし、Honda勢最後のシモンチェリが10時14分にコースイン。予定の確認走行を終え、少しずつだがペースを上げていく。Honda勢のピット周辺が賑やかになってきた。

ダニ・ペドロサ新しいRC212Vは、昨年からフルモデルチェンジといっていい程の進化を遂げている。まずは、先に述べたようにエンジンの耐久性を向上。しかも耐久性を持たせながらも昨年型よりさらに高回転領域での出力値向上と低速領域でのドライバビリティーを向上させているようだ。

また、加速時のトラクション制御もさることながら、ブレーキング時におけるエンジンブレーキ制御が大幅に進化している様子も見ることができる。減速時に聞こえてくるエキゾーストノートは、昨年型と比較して明らかに違い、新しい挑戦と進化が図られていることを教えてくれる。800ccになってからのMotoGPは、まさにブレーキング競争といっても過言ではない。

シャシーでは、メインフレームの縦・横方向とねじれに対しての剛性の見直しを行い、サスペンションを昨年までのショーワ製から、Honda全車がオーリンズ社の前・後サスペンションに変更している。それにともない、ステアリングダンパーも同社のパーツに変更されているのだ。これにより、サスペンションはライバルメーカーを含め、MotoGPクラス全車がオーリンズ社製を採用することになった。

興味深いところでは、トップブリッジとステアリングステムが今までのHondaレーサーでは見たことがないくらいに「肉抜き」つまり、軽量化と剛性バランスを狙ってのトライが行われている。

アンドレア・ドヴィツィオーゾそしてもう一つの変化点としては、今年はHondaチームの各マシンの基本スペックが統一されたことがある。昨年は、ワークスチームとサテライトチームでは基本スペックが異なっていた。それが、今シーズンは基本スペックが同じマシンを走らせることになり、テスト走行時間が限定された状況でもHonda勢の中でより多くの情報を共有できる環境となっている。

コースサイドでHonda勢の実走行を確認すると、明らかに違いが見てとれるのが高速スピードからのコーナーエントリーだ。昨年のマシンとは違い、しっかりとクリップ方向に向けての旋回力が出ている様子がうかがえる。これは、2010年型RC212Vの新型シャシーが正しい方向性に働いていることがわかる。

さらに、Repsol Honda Teamの2台のマシンは、エンジンブレーキ時のデバイスもいい方向に作用しているようで、安定した減速区間を実現しているようだ。また、ストレートエンドでのエキゾーストノートは、高回転で弾けるような音色を奏でており、エンジン台数を制限するレギュレーション導入による耐久性も視野に入れた仕様にも関わらず、レスポンスのよさと高回転でのパワー感は今年も健在である。

青山博一今季の注目ライダーの一人でもある青山は、まずはそのニューマシン本来の性能を確認するために走り込みに重点を置いている。車体、エンジン、そしてサスペンションのブランドが変更になり、昨年末のルーキーテストで使用した09年型マシンとの違いにとまどいを見せる場面もあったものの、乗り込むにつれて本来の走りに戻っていくようだ。

ルーキーテストでは、周回を重ねるごとに確実にタイムアップし、マシンとの一体感を出した青山。それだけにまずは初日、基本ベースのポテンシャルを理解するためにも、距離を走りたいところで、Honda勢としては最多の66周を走り込んだ。初日のラップタイムは2分03秒651をマークした。

もう一人のルーキー、シモンチェリは身長の高さを使い、まるで250ccクラスのマシンを乗っているかのように、軽やかにマシンを操っている。途中コース上で青山と遭遇する場面も見られたが、ラップタイムでは青山が若干リードしており、ルーキーバトルとまではいかない様子。アグレッシブさはMotoGPマシンに乗っても健在だが、このライディングがRC212Vの理解を短時間で深める彼独自のスタイルと見えた。クリップ付近ではその長身を目一杯に小さくしながら、バランスを取る姿は迫力があり彼に大きな未来を感じる。

今回のテスト初日では、大きくマシンセットを変更することはなく、むしろポジション合せに余念がない。何度も、ピットで合せ込む姿を見ていると、現代の英知の結晶であるMotoGPマシンをいかに「使いこなすか」の基本を見ているようだった。この日は54周を走行し、午前中に出した2分03秒563がベストラップとなった。

メランドリは、久しぶりのHondaマシンの感触を楽しんでいるようだ。ライバルチームのヤマハ、ドゥカティ、昨年はハヤテ・レーシング(カワサキ)のMotoGPマシンを乗り継いだ経験も今シーズンのHondaとっては大きな助けとなる。そんなメランドリは、昼過ぎには17周を走行し、その周回で2分03秒609までタイムを上げると、そのあとはギアミッションのセットアップに集中した。

メランドリは、昨年もシーズン中盤に快走を見せた実績もあるだけに、本人としても早くマシンを自分仕様に仕上げたいところだろう。Honda勢としては、周回数は少ないが28周を走行した。

ランディ・デ・ピュニエデ・ピュニエは今季でHonda3年目。Hondaは今季からの全マシンにオーリンズ社のサスペンションを採用することとなったが、デ・ピュニエはカワサキ時代の経験も考えるとHondaライダーの中では1番長くオーリンズ社のサスペンション搭載マシンに乗っている。その経験があってか、Hondaマシンとしてはオーリンズ社のサスペンション搭載は1年目となるが、セットアップが決まったときは抜群のコーナーリングスピードを見せていた。

ピット作業を見る限り、他のHondaチームに先駆けてサスペンションセッティングに余念はなく、何度もフロントフォーク・スプリングの変更をしている様子だった。同じくリアサスペンションについても積極的にオーリンズ社のエンジニアとコミュニケーションを取っていたので、早い段階での仕上がりに期待ができる。

デ・ピュニエは、初日62周を回って、2分03秒456でHonda勢としては3番手に入った。

今回のテストでは、HRC総監督に就任した山野一彦よりRepsol Honda Teamの各ライダーにこういったことが伝えられていた。

「タイムは気にするな」

1000分の1秒まで計測されるこの世界で、タイムを気にしなくていいはずがない。その言葉の裏に、山野総監督の一つの思いがあった。それは、山野さんがRepsol Honda Teamの監督に就任した08年、09年と2年連続でこのセパンテストでペドロサがクラッシュし、シーズン半ばまで影響が出てしまったこと。その同じ過ちを今季こそは回避し、確実なシーズンインを迎えたい気持ちの表れだった。

山野一彦 HRC総監督山野総監督はその己の言葉を実行すべく、ピットからラップモニターを取り外し、ピットロードのサインマンからは「BOX」「PIT IN」のサイン以外は出さないという徹底ぶりであった。

もちろん、レーシングマシンのメーターには走行中のタイムやセクターごとのベストタイム更新などの表示がされるので、それらをテスト期間中に無表示にしていたかどうかは残念ながら私には確認ができなかった。だが、山野総監督のいう「タイムは気にするな」の意味は、ライダーに気負わせることなく、よりニュートラルな気持ちで新しいマシンに乗って欲しいという気持ちの表れなのではないだろうか。それに応えるべく、ペドロサもドヴィツィオーゾも確実にマシンを自身のコントロール下に置くための作業に徹しているようだ。

初日のテスト終了まで約1時間を残すところで、セパン恒例のスコールに見舞われた。ペドロサはその直前まで、52周を走行し、50周目には2分02秒866のタイムをマークし、Hondaとしては2番手となった。ドヴィツィオーゾは、51周を走行。トップタイムは、路面温度の上りきらない午前中に18周目で2分02秒630で、Honda勢としてトップタイムを記録した。

マルコ・メランドリセパンテスト・2日目レポート(2月5日)

前日のスコールはそれほど長くは降らなかった。しかし、セパンでは珍しく朝から小雨が降り始めている。走行が始まる午前9時ごろには、その雨脚も少し強くなってきたようだ。通常、こういったコンディションの場合は、ルーキー以外のライダーは路面状況が回復するまでコースインしないことが多い。事実、この日はバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)やケーシー・ストーナー(ドゥカティ)らは午後を回った13時以降にコースインした。

しかし、今年のHonda勢としてはメランドリが誰よりも早く9時30分にはコースイン。そのメランドリは、レイン走行でも攻めの走りでのタイムを徐々に削り、そのライディングを見たライバルチームもレインでの走行をスタートした。この様子は、メランドリのここ数年厳しい状況の中でMotoGPを戦って来た精神的な強さを見たような気がした。

ダニ・ペドロサペドロサも遅れること12分、9時42分にはレインタイヤを装着した新型RC212Vで初のレイン走行をスタートした。続いて、ドヴィツィオーゾ、シモンチェリ、青山とレインタイヤでコースインし、シーズン開幕まで6日間しか与えられない貴重な走行時間に臨んだ。だた一人、デ・ピュニエだけが午後からの走行スケジュールとなったが、彼は雨が降っている中でもスピードのある走りを展開するだけにこのあたりは余裕を持っているようにも見受けられた。

結局この2日目、午前の雨が上がったのは10時半を回ったころところだったが、コースは予想以上に水はけが悪く、セパンの日差しが戻ってもウエットパッチの残る難しいコースコンディションが13時以降まで続くことになった。

とはいえ、Hondaの各ライダーたちは、新しいマシンを理解するためにもこういった難しいコンディションでも敢えて走行を重ねた。MotoGPにはインタミディー(ドライとウエットの中間)タイヤの設定がないだけに、ウエットパッチの残る状況では安全性を考えると、レインタイヤのチョイスになる。しかしながら、車重150kg以上、最高出力155kW以上のマシンでこの状況では、ドライ時の走行と比べてタイヤのパフォーマンスは異なり、ライダーのスキルが走りを大きく左右することとなる。

青山博一この状況の中、最も走り込んだのは青山だった。コースインした10時5分から11時8分までの約1時間強、路面のコンディションが変化する中、1度のピットインを含む連続20ラップ走り込んだのである。そして、コンディションに合わせながらもタイムを確実に上げ、見事にテストメニューをこなした。

13時以降は、コースもドライになり各ライダー初日より大幅にペースを上げてのテストとなったが、夕方17時前から恒例のスコールがまたしてもコースを濡すこととなった。

Repsol Honda Teamの2台もコンスタントにタイムを刻み、ペドロサは50周を走行しHonda勢としてはトップの2分01秒822を46周目に記録。ドヴィツィオーゾは56周の距離を走り、ベストは2分02秒272でHonda勢2番手。メランドリは朝1番からのコースインで気合い十分。5ラップごとのピットインで確実にマシンを仕上げている。そして16時20分過ぎから雨が降り出すまでの30分ほど、10周を回りベストタイムを更新。2日目は合計で55周を走行し、ベストタイムをマークしたのは49周目の2分02秒810と好感触。デ・ピュニエは、午後から走行を開始しながらもトータル48周を走行し、ベストラップタイムは16時19分からスタートした連続ラップの中で更新した2分03秒043。決勝を見据えて20周の連続周回でのベスト更新は確かな手ごたえと見えた。

一方、青山は午前の走り込みとは違い、4周ごとにピットインを繰り返しマシン調整に余念がない。今回初めて投入されたニューマシンとあって、マイナートラブルも発生していた様子だったが、対策を講じながらも着実に前進したテストだったと見える。ロングディスタンス・テストやアタックラップができなかったのは残念。青山の快走は今後のテストに期待したいところだ。青山が記録したベストタイムは、1番気温の高い時間でもあった14時15分、39周目に2分03秒195。この日は、合計56周を走行した。

マルコ・シモンチェリシモンチェリもドヴィツィオーゾ、青山と並んで56周を走行。朝のレインコンディションから、ドライそして夕方のスコールと、雨に始まり雨に終わったテストだが、18時のラストチェッカーまでしっかりと予定通りの走行メニューをこなしたようだ。ベストタイムは、夕方のスコール直前に記録した2分03秒245。他の誰よりも一日のテスト時間を有効に使ったシモンチェリ、08年WGP250ccクラスのチャンピオンとしての逸材が確実に力を蓄えていく姿を、雨に光るセパンのコースで見ることができた。

当初の予定では17時に終了だったテスト2日目。参加チームによる協議の結果、午前中の雨がテストに影響したという判断で、1時間延長し18時が終了時刻となった。多くのライダーが夕方の少し気温の下がった時間帯でのタイムアタックを予定していたはずだが、残りの1時間は残念ながらスコールとなってしまった。

結果、日中の最も暑い時間帯でタイムを出したロッシがトップタイムを記録、2番手にはストーナー、そして3番手にホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)とライバルメーカーの仕上がりも順調の様子。Hondaは、4番手にペドロサがつけているものの、昨年までの4強といわれたこのメンバーに誰が絡んでくるのか予想がつかない緊迫したテストと感じた。

すでに、このサーキットを本格的に走るのは初めてというベン・スピーズ(ヤマハ)やミカ・カリオ、エクトル・バルベラらドゥカティサテライトもテストを見る限り好調ぶりを発揮している。

今年もトップ争いを繰り広げるであろう4人の選手に加え、誰が新たに優勝争いに絡んでくるか、期待がかかる。一方では、4強以降が接戦となることも考えられ、油断できない状況でもある。今回もテストでありながら、トップと最後尾とのギャップがわずか2秒4しかない。今後のテストで、このタイム差がどう変化するのか、また、今回見送られたようにも感じるベストラップがどこまで更新されるのか。

2010年MotoGP、世界一を目指して男の戦いは既に始まっている!

宮城光

元Hondaワークスライダー。全日本選手権および全米選手権でチャンピオンの獲得経験を持ち、4輪レースでもその才能を発揮。現在は、テレビの MotoGP中継でレース解説者を務めるほか、Honda Collection Hallに関する所蔵車両の動態確認テストを行うなど多方面で活躍しています。