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MotoGP学科

ゼッケンの話

10限目

ゼッケンに関する規定

さまざまなスポーツ競技と同様に、二輪ロードレースの世界でも選手を識別するための番号が、一人ひとりに割り振られている。日本語では一般に“ゼッケン”と呼ばれるこの番号だが、ルールブックでは以下のとおり、規定としてはごくわずかの決まりごとが設けられているにすぎない。

スポーティングレギュレーション

1.12 出走番号
1.12.1選手権参戦を許可された 各選手は、全選手権期間にわたり有効な独自の出走番号を割り当てられる。 通常は、この出走番号は前年度選手権、もしくは類似イベントの結果に基づくものとする。

1.12 Starting Numbers
1.12.1 Each rider accepted for the Championship will be allocated a specific starting number which will be valid for the whole Championship. In general, the starting numbers will be based on the results of the team riders in the previous year's Championship or in other similar events.

テクニカルレギュレーション

2.10 番号と背景の地
2.10.1 出走番号は、モーターサイクルの前面及び両側面に貼付されていなければならない。 MotoGPクラスに関しては、前面の番号のみを必須とする。
2.10.2 番号は少なくとも縦140mmを要するものとする。
2.10.3 番号は容易に判読可能で、背景色と明確に区別が可能な対照色でなければならない。
2.10.4 背景は、番号の周囲25mm以上の領域を覆う単一色のものでなければならない。
2.10.5 番号の判読可能性について議論の余地がある場合は、テクニカルダイレクターの決定をもって最終とする。

2.10 Numbers and Backgrounds
2.10.1 Racing numbers must be affixed to the front and the two sides of the motorcycle. For the MotoGP class, only the front number is compulsory.
2.10.2 Numbers should be a minimum height of 140 mm.
2.10.3 Numbers must be easily legible, distinctive and contrast strongly with the background colour.
2.10.4 Backgrounds must be of one single colour over an area large enough to provide a minimum clear area of 25mm around the numbers.
2.10.5 In case of a dispute concerning the legibility of numbers, the decision of the Technical Director will be final.

このルール規定から読み取れるのは、番号の選択やデザインに関する制約は非常に少なく、かなり高い自由度でライダーとチームの裁量に委ねられている、ということだ。

ダニ・ペドロサ

少し余談になるが、ここで記している“ゼッケン”という言葉は、実は日本のみで通用する言葉である。世界中どこを探しても、ゼッケンという外国語は見あたらない。

上記のルールブックからの引用を見ても、“starting number” “racing number”という用語で表記されている。一般的な口語表現でゼッケンに相当する言葉は、バイクナンバー(bike number)、という表現が用いられているようだ。

ところで、この“ゼッケン”という言葉の語源についてはドイツ語起源説やイタリア語説など諸説があるものの、未だにはっきりとした解明はなされていないようである。日本体育学会で1983年に発表された論文によると、明治44年(1911年)の新聞記事ではゼッケンという表記は見られないものの、明治45年(1912年)になると新聞記事内に使用されている、と記されている。このことから、どうやら明治末期から大正初期かけて“ゼッケン”という言葉が少しずつ定着していった、といえそうだ。

※日本体育学会大会号 (34), 100, 1983-08-18 「ゼッケンの語源について:レルヒ来日前後を中心として」(野沢巌、大橋正春)

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