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モータースポーツ > ロードレース世界選手権 > MotoGP学科 > 5限目「エンジン使用制限ルールの話」

MotoGP学科

エンジン使用制限ルールの話

5限目

エンジン使用制限に関するルールブックの表現

すでに説明したとおり、エンジン使用制限に関する取り決めは今回が初めての試みだ。実際の運用にあたっては、競技当事者であるチームやマニュファクチャラーの誤解や混乱を防ぐために、ルールブックではエンジンパーツの列記などを行い、細部に至るまで具体的に明文化されている。

原文は各種専門用語が頻出するために難解に見える部分もあるが、ルールの意義や運用方法を理解するためにも重要な文章なので、以下では省略をせずに該当部分を引用、紹介しておこう。

2.3.6エンジン耐久性

1) MotoGPクラスでは、各ライダーに使用可能なエンジン数は制限されている。 2009年シーズンに関しては、シーズン終盤に予定されている7戦、すなわちチェコGP以降よりシーズン最終戦に至るまでは、各ライダー用に最大5基までのエンジンを使用してもよい。 何らかの理由でライダーがリプレースされた場合、リプレースライダーは、エンジン割り当てが行われた際の当初のライダーと見なされる。

2) 各ライダー専用として使用するエンジンには、最初の使用に先立ち、テクニカルダイレクター※1により刻印と封印がなされなければならない。 新エンジンは、その使用に先立ち、チームがテクニカルダイレクターに対して届け出を行わなければならない。 登録と最初の使用が行われた後は、エンジンは同一チーム内であってもライダー間での交換は許されない。 新エンジンは、エンジンを搭載したモーターサイクルがピットレーン出口のトランスポンダータイミング※2・ポイントを通過した時点で、使用したものとみなされる。

3) エンジンはワイヤリング(金属線での固定)と未開封確認ラベルによって封印される。したがって:
a.タイミングシステムにはアクセスできない(例:ヘッドカバーはシリンダーヘッドにワイヤリングしなければならない)。
b.タイミングドライブシステムにはアクセスできない(例:ギアトレイン/チェーンカバーはワイヤリングを施されているために取り外しは不可能)。
c.シリンダーヘッドやシリンダーブロックが別体の場合は、エンジンから取り外すことができない(例:シリンダーヘッドはシリンダーブロックにワイヤリングし、シリンダーブロックはエンジンクランクケースにワイヤリングする)。
d.クランクケースは開放できない(例:クランクケースにはワイヤリングを施す)。
ワイヤリングの封印を取り外さなくてもアクセスできるパーツは、すべて交換できる。 テクニカルダイレクターが監察しない状態でのワイヤリング封印の破損もしくは取り外しは、“エンジンのリビルド”と見なされ、防護上の封印が破損もしくは逸失したエンジンは割り当て上の新エンジンとして扱われる。

4) 競技者は、いかなる理由(メカニカルトラブル、クラッシュ、重大なダメージなど)であれ、上記の割り当てを越えてさらなるエンジンの使用を必要とする場合、新エンジンを使用する前にテクニカルダイレクターに対して通知をしなければならない。レースディレクションは、適宜ペナルティを適用する。
損傷を被ったエンジンは割り当てから取り除かれる。これが再度使用される場合には新エンジンとして扱われ、適宜罰則が適用される。

5) 防護上の封印が破損、除去されていない限り、封印された割り当て済みエンジンのモーターサイクルへの搭載・使用可能回数に制限はない。 ライダーの割り当て内で、封印済みの他エンジンへの交換(新規もしくは使用済み)は罰則無く許可される。

6) 使用済み割り当てエンジンのMotoGPイベント外での利用を防ぐために、すべての割り当てエンジンはサーキットを離れる前に、吸排気ポートのいずれか(V型エンジンの場合はシリンダーバンクの少なくとも1つ)に防護上の封印が施される。 これら封印済み割り当てエンジンの再使用を希望するチームは、テクニカルダイレクターに防護上の封印を取り除くことを依頼しなければならない。 テクニカルダイレクターもしくは担当者が、防護上の封印に完全性が認められないと判断した場合、そのエンジンは割り当て上での新エンジンと見なされ、適宜罰則が適用される。

2.3.6Engine Durability

1) In the MotoGP class the number of engines available for use by each rider is limited. For the 2009 season a maximum of 5 engines may be used by each rider for the final 7 scheduled races of the season, that is from and including the Czech Grand Prix until the end of the season. Should a rider be replaced for any reason, the replacement rider will be deemed to be the original rider for purposes of engine allocation.

2) The engines available for the exclusive use of each rider must be marked and sealed by the Technical Director prior to first use. It is the Team’s obligation to register any new engine with the Technical Director prior to use. Once registered and used for the first time, engines may not be swapped between riders, even within the same team. A new engine is deemed to be used when the motorcycle with that engine crosses the transponder timing point at the pitlane exit.

3) The engines will be sealed by means of wiring and identification tabs, so that:
a. the timing system is not accessible (e.g. the head cover must be wired to the cylinder head)
b. the timing driving system is not accessible (e.g. the geartrain/chain cover is wired so that it cannot be removed),
c. the cylinder head and the cylinders block (if any) cannot be removed from the engine (e.g. the cylinder head is wired to the cylinders block and the cylinders block is wired to the engine crankcase),
d. the crankcase cannot be opened (e.g. the crankcase halves are wired together).
All the parts that are accessible without removing the sealing wiring can be replaced. Breaking or removing the sealing wiring without supervision by the Technical Director will be deemed to be “engine rebuilding” and engines with broken or missing security seals will be treated as a new engine in the allocation.

4) Should a competitor, for any reason (e.g. mechanical failure, crash, major damage, etc) require the use of another engine above their allocation, the Technical Director must be informed before the new engine is used, and Race Direction will apply the appropriate penalty.
The damaged engine will be removed from the allocation and if it is used again, it will be treated as a new engine with the appropriate penalty.

5) There is no limit to the number of times a sealed, allocated engine can be fitted to and used in a motorcycle, provided the security seal is not broken or removed. Replacing an engine with another sealed engine (new or used) from the rider’s allocation is allowed with no penalty.

6) To prevent the running of a used, allocated engine outside of MotoGP events, all allocated engines will have security seals placed over either exhaust or inlet ports (on at least one cylinder bank, in the case of V-type engines) before leaving the circuit. Teams wishing to re-use such an allocated and sealed engine must request the Technical Director to remove the security seals. If the Technical Director or his staff find that the security seals are not intact, the engine will be deemed to be a new engine in the allocation, with the appropriate penalty.

第11戦以降のレースでは、全チームがこのレギュレーションを遵守しながら残りの7戦を戦っていかなければならない。ただし、エンジンのメンテナンスサイクルや新エンジン投入といった事柄は、外部からの観察ではほとんど知る術がないのも事実だ。それだけに、この新レギュレーションがスタートしても、金曜日のフリープラクティスから日曜の決勝まで、おそらく従来と同じように進行していくだろう。ただ、チーム内部では、より厳密なエンジン管理が必要になるのは、ここまでに見てきた通りだ。したがって、マシンパフォーマンスなど、外見上でもはっきりとわかるような大きな変化が現れるチームは、何らかの形でエンジン管理に試行錯誤している可能性がある、と推測できる。

その意味では、エンジン使用制限というこのレギュレーションは、チームの総合力が今まで以上に大きく問われる規則であると同時に、観戦する側にとっては、さらにレースを深く理解し楽しむための素材であるといってもいいだろう。

用語解説

※1テクニカルダイレクター(ディレクター)

レース運営において、技術規則が守られるように監督し、車検や技術的問題の裁定などに責任を持つ役職のこと。チームにおいては、技術部門のトップ役職を指す

※2トランスポンダータイミング

マシンに取り付けられた無線応答装置(トランスポンダー)を使ってタイム計測を行うこと

 

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