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MotoGP学科

エンジン使用制限ルールの話

5限目

新ルール・エンジン使用数制限

サマーブレイクが明けた第11戦チェコGPから、MotoGPクラスに新たなレギュレーションが適用される。第11戦から最終戦のバレンシアGPまでの残り7戦で、選手1名につき使用エンジンを最大5基までとする、というエンジン使用数の制限ルールだ。

従来は、ルールに使用エンジン数を制限するような条項や文言は存在しなかった。シーズン中、各メーカーはそれぞれの裁量と判断で自由に新規エンジンを投入し、使用済みエンジンも独自のスケジュールに従って随時メンテナンスやリビルド(オーバーホール)を行いながら、シーズンをより有利に戦う戦略を組み立ててきた。

しかし、このルールが発効する第11戦チェコGP以降は、そのような活動に大幅な制約が加えられることになる。MotoGPクラスでは選手1名につき2台のマシンを使用しているが、シーズン残りの7戦、すなわち、のべ14台のマシンに対して使用できるエンジンが合計5基、というこの新しいレギュレーションの下では、各陣営は今まで以上に精密なエンジン管理スケジュールを組み立て、実際の走行距離とつき合わせながら、限られた数量のエンジンをうまく使い回していくことが要求される。

ちなみに、全7戦で5基、という数字はあくまでも今シーズン後半戦のみに適用される時限的な措置であり、来シーズンは全18戦で6基のエンジンという、さらに厳しい制約条件が課される。その意味では、今シーズン後半戦は、来年から本格的な運用が始まるエンジン使用制限ルールの経過措置としての役割を果たしている、ともいえるだろう。

時代の要請により始動した新ルール

このエンジン使用制限ルールに関して、FIMが最初に正式な告知を行ったのは、2009年2月18日だ。

近年、MotoGPに参戦するメーカーや関連企業は、参戦経費をなるべく抑えることも1つの課題として考えてきており、世界同時不況の影響もあり、これまで以上にその重要性は高まってきているのも事実だ。09年2月上旬には、マレーシア・セパンサーキットで全チーム合同のプレシーズンテストが行われ、その際にMSMA(Motorcycle Sport Manufacturers Association)が会議を持った。その場では、金曜午前のフリープラクティス廃止やセッション時間の短縮化、使用エンジン数の制限などが、経費削減案として俎上に載せられた。その後、さらなる協議を経て、上記日付でFIMが正式文書を発行。ただし、その内容は、シーズン終盤8戦(注:この時点ではハンガリーGPの中止は発表されていなかった)で使用できるエンジンは最大5基、日常的メンテナンス以外のパーツ交換を禁止する、という主旨のみを文章化したものだった。

4月8日には、ルールブックのスポーティングレギュレーションに対する修正項目として具体的内容を盛り込んだ正式文書が発表され、7月25日には、さらにその文言に厳密な再定義や修正を加えたものが配布された。

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