Vol.43

レプソル・ホンダ・チームの新たな再生を目指して

 2009年シーズンは全17戦を終了し、最終戦スペイン・バレンシアGPで優勝を飾ったレプソル・ホンダ・チームのダニ・ペドロサは年間ランキングを3位とした。チームメートのアンドレア・ドヴィツィオーゾは、ワークス初年度ながらランキング6位と健闘。そして、最終戦の翌日には、2010年に向けたテストがスタートした。レプソル・ホンダ・チームで陣頭指揮をとってきた山野一彦監督が、惜しくもチャンピオンを逃したこの一年を振り返り、捲土重来を期す来シーズンに向けた展望と抱負を語る。

「この一年を振り返ると、ダニは、シーズン前に負傷をしたことがやはり一番の大きな痛手になってしまいました。開幕戦では、ケガをした状態にもかかわらず驚異的な走りで完走し11位に入ってくれて、その後もコンスタントに表彰台に上がる活躍を見せてくれたのですが、いかんせんケガの影響は払拭しきれませんでした。シーズン中盤の第7戦あたりにはすでにポイントランキングでトップと大きな差が開いており、事実上チャンピオン争いからは戦線離脱していた、というのが正直なところだったと思います。ただ、その後は体調が回復すると、第8戦のラグナセカでは優勝を飾り、後半戦もコンスタントに表彰台を獲得し続けて、最終戦では優勝して一年を締めくくることができました。つまり、ここからわかるのは、ケガのようなハンディがなければダニは毎戦上位陣に絡めるし、当然ながらチャンピオンシップを狙える実力も十分にある、ということです。こういう手応えを掴むことができたのは、2010年に対してポジティブな材料でもあるのですが、いかにケガをしない体づくりをするかという意味では、今後の大きな課題でもあります。シーズンが終了した現在、肉体的なトレーニングから食生活といった細かいところに至るまで検討し、見直しているところです」

−ただ、転倒してもケガをするかどうかは、運によるところも大きいと思うのですが。

「フィジカルとメンタルの両方を兼ね備えることが重要だと思うんです。というのは、体力が充実している人は精神面でも強いですよね。逆に、フィジカルが弱い人はメンタルも弱くなっていく。だから、今でもダニは十分に体力があるんですが、それ以上にもっと身体作りをしていこう、ということなんです。そうやって肉体面の余裕を作ることにより、精神的な余裕ができるような環境や素地を作っていこう、ということですね。最終戦では幸いに勝つことができましたが、ライダー、チーム、環境などのあらゆる要素が噛み合って完ぺきなパッケージにならないとあのようなレースはできない。そういうパッケージを毎戦作り上げるためには何をしなければいけないのか。私がやらなければいけないこと、ダニがやらなければいけないこと、チームがやらなければいけないこと。いろいろありますが、厳しく捉えると、それができなかったから今年は勝てなかった。では、何をしなければならないのか。それを今、ひとりひとりが考えて、まさに取り組んでいるところなんです」

−ドヴィツィオーゾ選手に関しては、どんな一年でしたか?

「ダニがシーズンオフにケガをしてテストをできなかった分、アンドレアがいろいろなことを率先して引き受けてくれたのですが、それがかえって開幕前も開幕後も、彼にプレッシャーをかけることになってしまいました。彼の実力をのびのびと発揮できる環境を整えてやれなかったことは、私の大きな反省です。08年の彼は、MotoGPデビュー戦のカタールでロッシ選手を抜いて4位に入る走りを披露し、シーズン終盤のマレーシアでもワークスライダーだったニッキーを抜いて表彰台を獲得するなど、非常に力強い走りを見せていました。それだけの実力を備えた選手なのに、今年はイギリスGPで優勝を飾ることができた反面、トップグループに離されてしまうレースもありました。彼本来の走りができない原因はどこにあったのかをアンドレアとともに自己分析しながら、様々なアプローチでの取り組みを始めています」

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