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『最後の王者を目指して』青山博一の挑戦〜後編〜

終盤戦は最後の山場へ

シーズンは残り3戦。第15戦オーストラリアGPの舞台フィリップアイランドは、シーズン全会場の中で最も平均速度が速いハイスピードコースだ。第16戦マレーシアGPが行われるセパンインターナショナルサーキットは2本のロングストレートに加え、高温多湿な気象条件がライダーとマシンに消耗を強いて過酷なレースとなる。また、最終戦バレンシアGPのリカルド・トルモ・サーキットはツイスティなレイアウトで抜きどころが少なく、グリッド位置、つまり予選でのパフォーマンスがレース内容を大きく左右する。

この終盤3戦を、青山博一はポイントランキングトップで迎えた。26点差で追うランキング2番手は、アルバロ・バウティスタ(アプリリア)。第14戦ポルトガルGPでは転倒リタイアを喫したものの、第7戦オランダGP以降ずっとランキング2位の位置を守っている。ランキング3番手には、2008年チャンピオンのマルコ・シモンセリ(ジレラ)。シーズン序盤こそ低位に沈むレースも多かったシモンセリだが、サマーブレイク以降は3勝を挙げる快進撃で本来の速さとリズムを取り戻した。第14戦でバウティスタがノーポイントに終わったこともあって、現在バウティスタと2点差、青山には28点差まで迫っている。

終盤3レースは、4週間で3戦というタイトなスケジュールで行われる。一瞬の気の緩みやわずかなフィーリングの食い違いが全体の流れを大きく乱してしまう可能性もあるだけに、ただでさえ高度な集中を必要とするレースに向けて、彼ら3人とその周囲にはいずれも緊迫感が張り詰めていた。

「フィリップアイランドは得意なコースで、Hondaのバイクとも相性がいいと思う。セパンは、暑さがバイクにとって厳しいかもしれないけれども、大好きなサーキットです。また、最終戦のバレンシアも好きなコース。残りの3戦で好きなコースが続くのは自分にとっていいことなので、思いきり走りたい。3戦すべて、勝ちにいきたいですね」

青山博一

第15戦オーストラリアGPを前に、青山はそんなふうに意気込みを語った。もちろん、バウティスタとシモンセリも、シーズン終盤へ向けて集中力を高め、チャンピオン獲得への決意を新たにしている。

「(ポルトガルGPでの転倒で)自分にとってチャンピオン争いは事実上終わってしまったかもしれないと考えれば、失うものはもう何もない。フィリップアイランドは125cc時代にチャンピオンを決めた相性のいいサーキットなので、全力で思いきり走りたい」と、バウティスタ。

シモンセリも、「フィリップアイランドは大好きなコースの1つ。昨年も勝っているから、今年もきっといいレースができるはず。以後も好きなサーキットが続くので、残りは一戦一戦すべて大事に戦いながら、勝ちを狙っていく」と話し、終盤戦の逆転と王座獲得を目指す。

彼ら3名のチャンピオン争いを報じる欧州各国メディアの記事は、ポイント差の計算とそれに基づくチャンピオン獲得の可能性を日に日に大きく取り挙げるようになっている。

青山博一
第15戦オーストラリアGP

静かな興奮と緊張感が高まっていく中で、青山自身のコメントはというと、そんな情報を自らの頭から振り払おうとするような内容で、それはいつもの冷静さをことさら自分自身に強く言い聞かせているようにも見えた。

「計算上では次のフィリップアイランドで(自分のチャンピオンが)決まる可能性もあるのかもしれないけれども、あの2人はそんな簡単なレースをさせてくれないだろうし、実際にオーストラリアでは恐らくチャンピオンは決まらないと思います。とにかく、僕が持っているベストのパフォーマンスと、バイクが持っているベストのパフォーマンスを出せるように、全力で戦います」

オーストラリアGP、不運の7位

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